もはやギャラ泥棒同然だ
早々と冬の移籍を希望した男がいる。
「彼はただただプレーする機会が欲しいだけなんだよ」
エージェントのフィリップ・ランボレイが発言した。
「ここに留まっていてもプラスにはならない」
メラニー夫人もSNSでアシストしている。
マンチェスター・ユナイテッドのアントニー・マルシャルだ。
「本当に出ていきたいのなら、私かコーチに話すべきだ。エージェントがメディアになにをいおうと、私はまったく興味がない」
ラルフ・ラングニック監督は、エージェントやワイフの陰に隠れているだけのマルシャルに、不信感を隠さなかった。
出ていきたいのであれば、だれも止めはしない。しかし、みずからのプレースタイルを改善しない限り、どのクラブに移籍しても定位置獲得は不可能だ。
競らないし、走らない。自陣に戻る際はジョガーに変身する。どうやら、モチベーションを失ったようだ。怠慢なプレーを繰り返し、もはやギャラ泥棒同然。ユナイテッドは、なぜこのような男に週給25万ポンド(約3750万円)も支払っているのだろうか。
一刻も早くお引き取り願うべきであり、移籍希望はむしろ歓迎しなくてはならない。
闘わずにして逃げている
ラングニック監督の着任により、ユナイテッドのゲームプランは激変した。攻守の切り替えを疎かにするタイプはおまんまの食い上げだ。だからこそクリスティアーノ・ロナウドでさえ、36歳になってキャリアの晩年を迎えたスーパースターでさえ、生き残るために必死に闘っている。
目の前に素晴らしい教本があるにもかかわらず、マルシャルは練習でもアピールするつもりがさらさらないという。「オレの優先順位が低いのはラングニックに見る目がないからだ」といわんばかりの無気力、とも伝えられている。
現地2日のアーセナル戦後、多くの選手がサポーターの声援に応えていたというのに、マルシャルは足早に控室へと去っていった。態度の悪さもいかがなものか。
いま、前線の優先順位はC・ロナウド、マーカス・ラッシュフォード、メイソン・グリーンウッドが高く、ラングニックの基本戦略である攻守の切り替えを踏まえると、エディンソン・カバーニが一番手になる可能性は十分にある。
しかし、定位置を奪いたいのなら、その自信があるのなら、練習からアピールして監督の評価を覆すべきだが、マルシャルは闘わずにして逃げている。とんでもない “甘ちゃん” だった。
どうやらマルシャルは、緩い環境で闘いたいようだ。ポジションが保証されているクラブへの移籍を希望している。大幅な減給を覚悟し、どうぞご自由に、である。推定市場価格は4000万ポンド(約60億円)。契約が24年6月まで残っているとはいえ、半額程度でもユナイテッドは応じるべきだ。
ラングニックが“先制パンチ”を
「まだ電話で一度しか話していないが、仮に残留を望んでいないのなら、時間をかけて説得しても意味がない」
ラングニックは、ポール・ポグバに関してもドライだった。彼の言葉を借りるまでもなく、退団したいのなら止めはしない。エージェントを使った駆け引きには一切応じないことも、今回の発言で明らかになった。
この結果、ポグバ関連で何度も何度もメディアを利用し、契約更新だ、いやいや退団すると揺さぶってきたミーノ・ライオラ(代理人)の動きも、ある程度は封じられる。
また、ポグバは商品価値も下落した。今シーズンは開幕2試合で7アシストを記録したが、フランス代表の練習中に右大腿部を負傷して11月中旬から欠場中。戦線復帰は早くて来年2月と伝えられている。毎シーズンのようにフル稼働できないのだから、さしものライオラも強くは出られない。
そしてなにより、ラングニックの構想にポグバは含まれているのか。前半はスーパースター、後半は傍観者。よくあるケースだ。継続性に欠けるタイプは使いづらい。
サッカー選手として、アスリートとしても申し分ないにもかかわらず、ポグバはメンタルがあまりにも幼い。子どもを扱う男が強欲なライオラだ。ラングニックの答はすでに出ているのかもしれない。
新体制発足以降、ポグバもライオラもノーコメントだ。「時間をかけて説得しても意味はない」というラングニックのコメントは、効果的すぎる先制パンチだった。
態度を改めて定位置確保に汗を流すか、マルシャル同様に闘わずして逃げるのか。
ポグバは才能に満ち溢れている。ライオラがなにを吹き込もうと、ラングニックと勝負するのが最善策だ。繰り返すが、C・ロナウドでさえ危機感を抱き、懸命に闘っている。臆病な子どものままでいたいのなら、温いリーグに、チヤホヤしてくれるクラブに新天地を求めればいい。
現行の契約が来年6月に満了を迎えるため、年が明けると他クラブとの交渉が解禁になるが、無理をしてまで引き留めはしない──が、ラングニックのスタンスである。
ハンス・クリスチャン・アンデルセン作の童話『裸の王様』は、だれの目にも滑稽に映った。
文・ 粕谷秀樹
1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。
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