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【連載】ローマのパウロ・フォンセカは「戦術でガチガチに縛らずに柔軟性とバランスを生み出す」| 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 | 欧州・海外サッカー

【連載】ローマのパウロ・フォンセカは「戦術でガチガチに縛らずに柔軟性とバランスを生み出す」| 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 | 欧州・海外サッカー(C)Getty Images
【インタビュー】元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニ氏が2020-21シーズンのセリエAを探究する当連載。第5回はローマを分析する。ポルトガル人監督パウロ・フォンセカの「戦術でガチガチに縛らずに柔軟性とバランスを生み出す」サッカーとは?

とてもオーガナイズされた好きなチーム

ボローニャローマ。このカードは日本での注目度も高いでしょう。ボローニャには冨安(健洋)がいますからね。

ボローニャと冨安は別の機会にじっくり考察するとして、今回は対戦相手のローマを分析したいと思います。

今シーズンのローマは第10節を終え、5勝3分け2敗で6位。いまひとつ波に乗れていない印象ですが、個人的には好きなチームです。

試合を観れば、とてもオーガナイズされたチームだと分かります。ポルトガル人指揮官パウロ・フォンセカの手腕によるところでしょうね。

今シーズンがセリエA2季目のフォンセカですが、イタリアにやって来る前から聞こえてくる評判は良いものでした。

ローマの前はウクライナのシャフタール・ドネツクを指揮していました。ウクライナと言えば、誰もがアンドリー・シェフチェンコのことを思い起こすでしょう。私と彼にはミラン時代に監督と選手だった縁があります。

現在ウクライナ代表を率いているそのシェフチェンコが以前、フォンセカのことを絶賛していました。だから手腕は間違いないだろうと予想していましたが、評判通りとても優秀な監督です。

戦術面がより重要視されるセリエAは、外国人監督にとって決して簡単なリーグではありません。フォンセカはその戦術面でも、イタリア人監督に劣らない実力を発揮しています。

ローマの強みは、質の高い選手が揃ったフォワードとミッドフィルダーの陣容。

その陣容を生かすため、フォンセカが採用しているシステムが3-4-3で、その選択に彼の手腕、工夫が見てとれました。

3トップを形成するのはヘンリク・ムヒタリアン、エディン・ジェコ、ペドロ。実力のある素晴らしい3トップですが、いずれも30オーバーのベテランです。

決して若くない彼ら3人の年齢こそが、フォンセカが4バックではなく3バックを選択した最大の理由と踏んでいます。

錆びることのない技術に対し、年齢とともに徐々に衰えてくるのが運動量。ジェコやペドロも決して例外ではありません。

仮にフォンセカが3-4-3でなく4-3-3を採用していたなら、おそらく前線の3人は中盤での守備も求められていたでしょう。それでは90分は持ちませんね。

彼らの守備の負担を減らしつつ、攻撃面でいかに最大限に力を発揮させるか。その答えとして導きだしたのが、中盤に4枚を並べる3-4-3だったはずです。

中盤に繋ぐ意識が高い技巧派を揃える

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理に適ったチョイスですが、フォンセカが3-4-3を選択したもうひとつの理由に、ジェコのプレースタイルもあるかと思います。

ゴール前で圧倒的な決定力を誇るジェコですが、ポストプレーはあまり上手くないです。

ボールをしっかりキープすることができるセンターフォワードがいれば、チーム全体のラインを押し上げられます。ただ、ジェコはそういったプレーヤーではありませんね。

ゆえに、中盤の枚数を増やしてボールを繋ぎ、ペドロ、ムヒタリアンにサイドで勝負を仕掛けさせ、ジェコにはゴール前でフィニッシャーとしての仕事に専念させる。

こうした流れの攻撃がフォンセカの狙いでしょう。

そうなると中盤4枚の人選は必然的に、前線に走り込むタイプというより、ボールキープが上手い選手となります。

実際、フォンセカは中盤に繋ぐ意識がとても高い技巧派を揃えています。

2ボランチにはロレンツォ・ペッレグリーニ、ジョルダン・ヴェレトゥ、両ワイドにレオナルド・スピナッツォーラ、リック・カルスドルプを配置。

みな状況に応じて臨機応変に動けるオールラウンダータイプです。

フォンセカは中盤に器用な選手を配置し、戦術でガチガチに縛らないことでチームに柔軟性とバランスを生み出しているんです。

ただローマにも弱点はあります。まずはDF陣。ケガ人の多さが気になります。

現状、元気なのはロジェール・イバニェス、ブリアン・クリスタンテだけ。他の選手はみな、フィジカル面で何かしら問題を抱えています。

そもそも3バックの真ん中を務めているクリスタンテはMF登録の選手。苦しい台所事情が垣間見えますね。

それこそアタランタから加入したイバニェスがケガでもしたら、DF陣は一気に崩壊する危険性があります。

イバニェスは左右どちらでもプレーできるとても優秀なセンターバック。彼こそがローマDF陣の頼みの綱でしょう。

他には選手層の薄さも気になります。主力組を除くと、選択肢があまりにも少なすぎます。

途中出場した選手の中で、今のところレギュラー陣を脅かす活躍を見せた選手は皆無。長いシーズンを考えれば、これは決して小さくない問題です。

昨シーズンまでスペイン人のパウ・ロペスが正守護神だったゴールキーパーは、現在37歳のアントニオ・ミランテがファーストチョイスになっています。

ミランテは決して悪いキーパーではありません。ただ、ミランのジャンルイジ・ドンナルンマインテルのサミール・ハンダノヴィッチ、ユヴェントスヴォイチェフ・シュチェスニーのように、チームに勝ち点をいくつかもたらしてくれるような選手とは言いがたいです。

良いキーパーというのは好セーブで失点を防ぎ、長いシーズンの中でいくつかの勝ち点をもたらしてくれるもの。それこそゴールを決めてチームを勝利に導くアタッカーのように。

ローマが優勝を目指すのであれば、ミランテでは厳しいでしょう。

サッスオーロに自分たちのサッカーをさせず

ポジション毎にざっと見てきましたが、総合的に言えば、ローマはバランスの取れた良いチームです。

スコアレスドローだった前節のサッスオーロ戦を見ても、それは明らかでしょう。

サッスオーロは自分たちのサッカーをさせてもらえず、まるで残留争いをしているかのようなチームに見えたほどです。

ローマはゴールこそ奪えませんでしたが、順位で上を行くサッスオーロ相手にほとんどの時間でゲームを支配していました。実力がある証です。

最後になりますが、今回の対戦相手であるボローニャについても少し触れましょう。

ここまで4勝6敗の10位。1勝4敗とアウェーでの弱さが際立っています。

パフォーマンスに安定感がないです。好不調の波の激しさは、結果として如実に表れている印象ですね。

引き分けがないというのは、粘り強さにも欠けるのでしょう。

なによりこれといったアイデンティティがないのが問題です。攻撃の形もないので、ゴールをなかなか決められません。

あくまでも外から見た印象ですが、監督のシニシャ・ミハイロヴィッチは今季、チームをしっかりコントロールできていないのではないでしょうか。

4バックから3バックに急きょ変更して臨んだ前節のインテル戦(1-3)。試合後の会見では「チーム内にスタメン情報などを記者に漏らすスパイがいる」と声を荒げていましたね。

ミハイロヴィッチは自らが主役を演じることを好みます。〝一線〟を越えることも少なくありません。チームの現状などを考えると、今は黙っていた方が利口なのでは。私はそう考えています。

彼の会見での〝パフォーマンス〟がチームにどのような影響を及ぼすか。まずはローマ戦の結果を見てみましょう。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

ボローニャ対ローマ 配信予定

放送・配信:DAZN
配信開始:12月13日23時(日本時間)
実況:北川義隆

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