ディエゴ・マラドーナの逝去はひとつの時代の終焉だ。しかし、プレミアリーグには次代のフットボールシーンを担うスター候補生が乱舞している。
そこで今回はとりわけ優れた5人を、独断と偏見でランキング。神様から本物のゴッドハンドを伝授してもらいつつ、マラドーナにも楽しんでもらいたい。
【5位】メイソン・グリーンウッド(マンチェスター・U|19歳)
本来であれば、すでにブレイクしているはずだったが、コロナ禍のスキャンダルによって今シーズンは精彩を欠いている。
ただ、猛省しているようだ。日々の練習で人一倍汗をかき、真摯な姿勢でフットボールに向かっているという。
多くの関係者が「ロビン・ファン・ペルシを彷彿とさせる」と絶賛するペナルティボックス内の落ち着きは天に与えられし才能だ。鍛えて身につくものではない。
マラドーナも、ユナイテッドの大先輩であるエリック・カントナも特大のポテンシャルを誇り、数々の不祥事を乗り越えてみずからの地位を確立した。
苦い経験を糧にできるか、責任転嫁するか……。グリーンウッドの選択は、決して難しくない。
【4位】ビリー・ギルモア(チェルシー|19歳)
「あいつを観るだけでドキドキする」
ユナイテッドの闘将として一世を風靡し、現役を退いたあとは猛毒と愛情がコラボするコメントが人気を博すロイ・キーンも、すこぶる高く評価していた。
チェルシー・ユース出身のギルモアは、19歳という年齢が信じられないほどつねに落ち着き払っている。優れた状況判断に基づくポジショニングは秀逸であり、パスセンスも素晴らしい。
昨シーズンのFAカップ5回戦(対リヴァプール)ではチームをオーガナイズし、マン・オブ・ザ・マッチに輝いた。
「ギルモアにしてやられた。末恐ろしい若者だよ」
敵将ユルゲン・クロップをして認めざるをえなかった。
なお、ギルモアは膝の負傷から12月初旬に復帰。メイソン・マウントやカイ・ハヴェルツなどと、レベルの高い定位置争いに割って入った。
【3位】タリック・ランプティ(ブライトン|20歳)
ギルモア同様、チェルシーの下部組織出身だが、セサル・アスピリクエタやリース・ジェームズとの定位置争いは時間の浪費と判断し、2019年夏にブライトンへ移籍。才能が花開いた。
爆発的なスピードとトリッキーな足技には絶対の自信を持ち、昨シーズンもチェルシーのマルコス・アロンソ、リヴァプールのアンドリュー・ロバートソンといった一流DFを翻弄している。身長164cm、山椒は小粒でもぴりりと辛い。
また、古巣チェルシーと対戦した今シーズンの開幕節では、中央、サイドとも切られていたにもかかわらず、得意のドリブルで一気に突破してみせた。
バイエルン・ミュンヘンが興味津々との噂もうなずける。
【2位】デクラン・ライス(ウェストハム|21歳)
人が変わった。攻撃に関与するケースが増えている。
昨シーズンまではトマーシュ・ソーチェクとともに2CBの前に位置し、ピンチの芽を未然に摘み取る任務に重きを置いていたが、今シーズンは中長距離のパスを操り、チーム全体の前進を促すようになってきた。
また、上層部を批判したキャプテンのマーク・ノーブルが先発から外されているため、ゲームキャプテンを任せられる試合も増えた。同僚を叱咤激励する姿からは、リーダーシップも垣間見える。
ライスはひと回りもふた回りも成長した。すでにチェルシーと個人合意との説もある。
この男なら、トップ6(もはや死語だが)でも通用するに違いない。
【1位】ウェズレイ・フォファナ(レスター|20歳)
今シーズンの開幕当初はCBの3番手だったが、チャーラル・ソユンジュの負傷で定位置をつかみ、その後は最終ラインに欠かせない存在になった。
相棒のジョニー・エヴァンズがフランス語を操り、GKカスパー・シュマイケルのコーチングが的確とはいえ、リーグアンからプレミアリーグという環境の激変を意に介さないのだから、やはりモノが違う。
それにしても、フランス・フットボールはなぜ次から次へと超一流のセンターバックを、しかも “反則” ともいうべきモンスターを輩出するのだろうか。
ラファエル・ヴァラン、プレスネル・キンペンベ、ダヨ・ウパメカノ……。強く、速く、高く、フィード能力にも優れている。
近い将来、フォファナも彼らと並び称される、いや、世界一のCBといわれる日も遠くはないだろう。すでにメガクラブが虎視眈々と狙っている。
※年齢はすべて2020年1月1日時点。
文・粕谷秀樹
1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。
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