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サッカー

【コラム】「伏兵」サウサンプトン&アストンヴィラの驚きに満ちた躍進 | プレミアリーグ

粕谷秀樹
【コラム】「伏兵」サウサンプトン&アストンヴィラの驚きに満ちた躍進 | プレミアリーグ(C)Getty Images
【コラム】プレミアリーグ第8節を終え、サウサンプトンが4位、アストンヴィラが6位と躍進している。前者はラルフ・ハーゼンヒュットル監督の戦術やMFジェイムズ・ウォード=プラウズ、後者はコンセプトの充実・浸透が好調の要因だ。

連動性豊かなアクションの連続

【4位】 サウサンプトン :5勝1分け2敗/勝点16

【6位】 アストンヴィラ :5勝0分け2敗/勝点15

まだまだ序盤とはいえ、両チームがトップ10に顔を連ね、なおかつ好パフォーマンスを見せつけるなど、誰が予想しただろうか。

クリスタルパレス に0-1、 トッテナム に2-5。サウサンプトンは連敗で今シーズンをスタートした。 ピエール=エミール・ホイビュア がトッテナムに移籍したため、中盤はプレー強度の低下が否めなかった。

しかし、ラルフ・ハーゼンヒュットル監督が身上とするハイプレスが、徐々に効果を発揮しはじめている。トッテナム戦こそ ハリー・ケイン ソン・フンミン に蹂躙されたが、その後は最終ラインの設定を少し下げ、余計なスペースを与えないように工夫もしている。

また、対戦相手のファーストタッチが雑だったリ、プレーそのものが消極的になったり、あるいは孤立している場合は瞬く間に2~3人で取り囲み、ボールを奪う。集中力が研ぎ澄まされている証だ。

第8節の ニューカッスル 戦でも象徴的なシーンがあった。右サイドのハーフウェイライン付近で3対1の数的優位を作る。ボール奪取。

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フリーで受けた ジェイムズ・ウォード=プラウズ (写真)がワンタッチでさばき、ムサ・ジェネポがヒールでつないだところを、テオ・ウォルコットがシュート。惜しくもゴールには至らなかったものの、連動性豊かなアクションの連続に序盤の充実が感じられた。

チーム全体の課題はビルドアップ

チームの中軸はウォード=プラウズである。

ウイングなのかシャドーストライカーなのか、昨シーズンまでは適性が曖昧にも映っていた。しかし、今シーズンは中盤センターに定着。守備意識も高くなり、両サイドバックが上がったスペースを埋めているのは、必ずといっていいほどウォード=プラウズだ。

ホイビュアほどのプレー強度には欠けるが、キックの精度、状況判断ではサウサンプトンの新キャプテンがまさっている。7節のヴィラ戦では直接フリーキック二発!! ストロングポイントにも磨きがかかっているようだ。

ただ、チーム全体の課題はビルドアップだ。試合展開をよりスムーズにするには、DF陣がより丁寧なプレーを心がけなければならない。なかでもヤニク・ヴェスターゴーアだ。いくらなんでも雑過ぎる。

さらに、膝の手術を余儀なくされた ダニー・イングス (復帰は早くても12月中旬か)に代わるFWの軸に誰を据えるのか、も喫緊のテーマである。相手DFとの駆け引きを得意とするシェーン・ロングか、頑健な肉体を誇るシェイ・アダムズか、それとも経験豊富なウォルコットか。

ハーゼンヒュットル監督の人選は、決して易しくない。

隠れたヒーローはMFジョン・マッギン

リヴァプール のDFラインが高すぎたとしても、7点も奪うとは!? 昨シーズンとは見違えるほど安定した アーセナル から3点も獲るとは!? ヴィラが目立っている。

対人能力に優れるDFタイロン・ミングス、ストライカーの背後で自由を謳歌する ロス・バークリー 、安定したシュートストップで貢献するGKエミリアーノ・マルティネスなど、快進撃の立役者は何人かいるが、コンセプトの充実、浸透が好調の最大要因だ。

ヴィラの基本コンセプトは “密集” だ。例えば右サイドでボールが展開されているとき、左サイドの選手たちも極端なほど逆サイドに寄せていく。

ありとあらゆるポジションで数的優位を作り、セカンドボールを回収しながらショート、ミドルのカウンターに結びつける。

このスタイルの隠れたヒーローはMFジョン・マッギンである。無類のタフネスでチーム全体を支えつつ、ボール回収後の展開力で多くのチャンスを創出。ドウグラス・ルイスとの中盤センターは、リーグ屈指の安定感といって差し支えない。

グリーリッシュが絡むとボールに命が

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今シーズンのヴィラを語るとき、 ジャック・グリーリッシュ (写真)を避けて通ると笑いものになる。シルキータッチのボールコントロール、正確無比のパス、的確な状況判断など、とにかくすべてが美しい。速攻でも遅攻でも、彼が絡むとボールに命が吹き込まれたかのようだ。

また、守備面ではパスコースを断ち切るポジショニングに長けており、彼の背後でマッギンが、D・ルイスが、左サイドを駆け上がったSBマット・ターゲットがボール奪取。ショートカウンターが発動するケースも少なくはない。

グリーリッシュは、いずれビッグクラブに引き抜かれる。この夏も マンチェスター・ユナイテッド 、トッテナムの接近が噂されていた。UEFAチャンピオンズリーグでプレーしてしかるべきレベルの選手である。

しかし、豊富なエネルギーを要するヴィラにとって、年末年始の過密日程は高すぎるハードルだ。

プレシーズンが短く、各クラブに負傷者が続出している事実を踏まえると、今シーズンは例年にも増して厳しい。12月12日は ウォルヴァーハンプトン 戦だ。28日に チェルシー と相対し、中四日でユナイテッド戦。心身ともに消耗していく。

ディーン・スミス監督にすれば、腕の見せどころではあるが……。

文・粕谷秀樹

1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。

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