マンチェスター・シティのリーグ優勝は九分九厘、いやいや300%決まりである。現在の彼らを止める手立ては、作られたスキャンダルでマイナス40ポイントのペナルティ……。要するに、ありえないってことだ。
しかし、トップ4争いは大混戦。2位マンチェスター・ユナイテッドから8位リヴァプールまでの7チームが、11ポイント差でひしめき合っている。抜きつ抜かれつの攻防が、最終盤まで繰り広げられるに違いない。
この白熱の争いのなかに、ウェストハムとエヴァートンが含まれている。両チームの戦力値を踏まえると、今シーズンはすでに合格であり、CL(チャンピオンズリーグ)出場権を義務付けられているようなチームに比べるとプレッシャーも少ない。どえらいドラマの主人公を演じるのだろうか。
ただ、ウェストハムはトップ4の座を争うユナイテッド、レスター、チェルシーとの直接対決を残し、十分なポテンシャルを備えたアーセナルとの一戦もある。一方、エヴァートンもチェルシー、トッテナム、アーセナルとの試合が待っている。両チームとも、勝ち点が大きく伸びるとは考えにくい。
レスター同様、リヴァプールも厳しい
EL(ヨーロッパリーグ)のラウンド32で敗れたレスターは、プレミアリーグにほぼ専念できる。FAカップでベスト8に駒を進めているとはいえ、優先順位としてそれほど高くないはずだ。ブレンダン・ロジャーズ監督は無理して二兎を追わず、トップ4に照準をセットすべきである。
しかし、ジェイムズ・マディソンとハーヴィー・バーンズ、ジェイムズ・ジャスティンが、負傷のために数週間の戦線離脱を余儀なくされた。昨シーズンも最終盤にレギュラーDFが次々と負傷し、ほぼ掌中に収めていたトップ4を逸した経緯がある。同じ轍は踏みたくない。
ちなみに今シーズンの最終3試合はユナイテッド、チェルシー、トッテナム。厳しすぎる。
レスター同様、リヴァプールも厳しい……いやいや、彼らを襲った多くのアクシデントは前代未聞だ。フィルジル・ファン・ダイク、ジョエル・マティップ、ジョー・ゴメスは今シーズン中の復帰が不可能で、ジョーダン・ヘンダーソンも4月中旬まで戦線を離脱する。また、ユルゲン・クロップ監督は母親を病で、アリソンは父親を事故で失った。
リヴァプールはシティと並ぶプレミアリーグの大看板だが、異様な事態の頻発でポテンシャルを発揮できずに苦しんでいる。さしものクロップ監督も、笑顔が少なくなってきた。もちろん、彼らの底力をもってすれば、4位チェルシーとの4ポイント差は逆転可能なのだが……。
トッテナムが少し上向いてきた。26節から3連勝。ジョゼ・モウリーニョ監督に対する解任論も、沈静化しつつある。
ただ、攻撃はハリー・ケインとソン・フンミンにかかる負担が重く、ギャレス・ベイルのコンディションがようやく整ってきた(直近6試合6ゴール)とはいえ、全幅の信頼を寄せられる段階ではない。守りもGKウーゴ・ロリスに負うところが大きい。守備的すぎるスタイルも含め、トッテナムのトップ4入りは難しいか。
ユナイテッドも安全圏ではない
さて、チェルシーはトーマス・トゥヘル監督着任以降、リーグ戦で6勝3分無敗。クリーンシート7回という記録が示すように、3バックが安定してきた。しかも昨夏の大型補強が奏功し、プレミアリーグ、FAカップ、CLという過密日程を、余裕でローテーションできる豊富な選手層を有している。実に大きな強みだ。
また、フランク・ランパード前監督のもとで不遇をかこったセサル・アスピリクエタ、マルコス・アロンソ、アントニオ・リュディガーが、先発のチャンスを与えられ生き生きしている。彼らの経験は、プレッシャーがかかる最終盤で大きなアドバンテージになるだろう。
そんなチェルシーとは対照的に、ユナイテッドは失速したはずだった。18節のバーンリー戦で首位に立った後、3勝6分1敗。ところが、28節のシティ戦で2-0の勝利を収めている。
マンチェスター・ダービーや26節のチェルシー戦で充実した試合展開を見せながら、25節のウェストブロム戦、27節のクリスタルプレス戦は緊張感を欠いて引分け。近ごろのユナイテッドは、試合ごとの好不調が非常に激しい。対戦相手に低く構えられ、中央をタイトに固められると右往左往する弱点は、依然として解消されていない。
ゴールレスドローに終わったクリスタルパレス戦も、頼みのブルーノ・フェルナンデスとマーカス・ラッシュフォードが、守備ブロックの外でプレーするしかなかった。オーレ・グンナー・スールシャール監督は、劣勢を挽回するプランをあまり持たない。
現状2位。5位エヴァートンとは8ポイント差。まだ安全圏ではない。シティ戦の快勝で勢いに乗れるのか。ユナイテッドは判断しづらい。
さぁ、今シーズンも残り三分の一。いよいよ総力戦だ。豊富な選手層を持つチェルシーが混戦を勝ち抜くのか、ウェストハム、エヴァートンが世間を驚かせるのか。
プレミアリーグのトップ4争いは、かなり熱い。
文・粕谷秀樹
1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。
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