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サッカー

【新連載】 ファビオ・カペッロのミラノダービー展望 | イタリアサッカー界の重鎮が登壇「カルチョS級講座」第1回

【新連載】 ファビオ・カペッロのミラノダービー展望 | イタリアサッカー界の重鎮が登壇「カルチョS級講座」第1回(C)Getty Images
【インタビュー】イタリアサッカー界の重鎮がカルチョの魅力や真髄に迫る新連載だ。記念すべき第1回はミランやレアル・マドリードで数々のタイトルを獲得した名将ファビオ・カペッロが、日本時間18日1時にキックオフ予定のミラノダービーを展望する。

ミランの好調は無観客試合の影響も

セリエAで通算173回目となるミラノダービーが近づいてきた。まずはミランのここまでの戦いぶりを振り返ってみたい。

成績的には好調だ。開幕から負け知らずの3連勝で、なおかつ失点はゼロ。ここ数年の混迷ぶりがまるで嘘だったかのような好スタートを切った。

とはいえ対戦相手を見れば、この結果もさほど驚きではない。ボローニャとのホーム開幕戦で2-0の勝利を収めると、続く第2節はアウェーでクロトーネに2-0、第3節はホームでスペツィアに3-0と快勝した。いずれも相手は格下であり、日程に恵まれた感は大いにある。

コロナの影響で無観客試合だったことも大きかったと見ている。なぜなら「パーソナリティを欠く」選手にとって無観客がプラスに働いているからだ。これはミランの3連勝を私なりに分析し、導き出した答えだ。

サンシーロの熱狂的なサポーターの存在は、間違いなく選手にとってプラス。モチベーションがグッと上がり、大きな力となる。

ただし、それは「パーソナリティのある」選手に限ったことで、逆にパーソナリティを欠いた選手にとっては重圧にほかならない。

今オフ、ミランからセビージャに完全移籍したスペイン人MFスソが良い例だ。昨シーズン、序盤から不調だったスソはミランサポーターから標的にされ、ブーイングを浴びせられ続けた。

結果、最後まで実力を発揮できずに途中でセビージャにレンタルで放出された。スソは良い選手だが、逆境をはね返すだけのパーソナリティが欠けていたんだ。

イブラに関しては年齢はまったく関係ない

今のミランには、スソのような選手が何人かレギュラーを担っている。ただ、今回のダービーは1000人程度のお客さんしか入れないようなので、そのあたりの心配はない。

問題は今後、入場者数の制限がさらに緩和された場合、彼らが今のように伸び伸びとプレーしつづけられるかどうか。開幕3試合だけで今シーズンのミランに大きな期待を寄せるのは時期尚早だ。

ダービーに向けたプラス材料もある。コロナ感染による離脱から復帰したズラタン・イブラヒモヴィッチが間に合うこと。39歳と高齢のFWに頼るチームへの批判が集まっているが、ユヴェントスで彼を指導した経験を持つ私だからはっきりと言える。

彼に関しては、年齢はまったく関係ない。衰え知らずの技術にも疑いの余地はない。

何よりサッカーに対する姿勢は真面目そのもので、良い意味で自尊心が強い。「自分はまだ最強のフォワードだ」と本気で思っているからね。ダービーはそれを証明する絶好の舞台だ。チームにとってこれほど頼もしい存在はいない。

私が考える優勝候補の本命はインテル

では、2勝1分けとまずまずのスタートを切ったインテルはどうか。

強みは昨シーズンの戦力をほぼ維持できたことだろう。オフに選手の入れ替えをそれほどしなかったからだ。就任2年目となる監督のアントニオ・コンテには、戦術面のさらなる上積みが期待できる。

DFアクラフ・ハキミの獲得などピンポイント補強で選手層が厚くなったので、5人の交代枠も有利に働くはずだ。

それこそ後半にフレッシュな選手を一気に投入すれば、戦況をガラリと変えられるほどの戦力が整った。これは長いシーズンを戦う上で決して小さくないアドバンテージだ。

実は、私が考える優勝候補の本命はインテル。10連覇を狙うユヴェントスはたしかに手ごわい。だが、新監督のアンドレア・ピルロが思い描くサッカーをチームに浸透させるには、ある程度の時間を要するのではないか。インテルが付け入る隙は十分にある。

その実力を証明する意味でも、ダービーは重要なゲームだ。

つい最近、実に6選手(GKアンドレイ・ラドゥ、DFミラン・シュクリニアル、アレッサンドロ・バストーニ、MFアシュリー・ヤング、ラジャ・ナインゴラン、ロベルト・ガリアルディーニ)のコロナ感染が判明したが、この中で痛手と言えるのはバストーニの欠場くらい。個人的にはそれほど影響はないと見ている。

攻略の鍵はずばり中盤のスピード

あえてインテルの課題を挙げるとすれば、開幕3試合で覗かせたDF面での不安定さ。その点も踏まえたダービーの見どころは、ミランがインテルの盤石でない守備陣をいかに崩せるかになる。

インテル攻略の鍵は、ずばり中盤のスピード。期待したいミランの選手は、MFハカン・チャルハノール、イスマエル・ベナセル、DFテオ・エルナンデスの3人。彼らはパーソナリティもしっかり備えたとても質の高い選手だ。

強度の高い試合を得意とするインテルだけに、彼ら3人を中心とした速いパス回しでインテルのハイプレスをかわせれば、必ず勝機は訪れるはずだ。

ブレッシャから加入したMFサンドロ・トナーリにも注目したい。彼もイブラヒモヴィッチと同様にコロナ感染から復帰したばかり。状態はベストでないだろうが、中盤におけるスピードでインテルを上回るには、彼のような高い技術を持った選手は欠かせない。

その他にも、両チームには質の高い選手が多くいる。例えばインテルのサミル・ハンダノヴィッチ、ミランのジャンルイジ・ドンナルンマはどちらも素晴らしいGKだ。インテルのロメル・ルカクとイブラヒモヴィッチのアタッカー対決も注目だ。こういった個人対決だけでも、今回のダービーは十分に見る価値がある。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

ミラノダービー配信予定

配信:DAZN
対戦カード:インテル対ミラン
日時:2020年10月18日(日)1:00~(日本時間)
実況・解説:北川義隆、細江克弥
会場:ジュゼッペ・メアッツァ(通称サンシーロ)

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