アメリカンフットボールの米プロリーグ、NFLの第88回ドラフトが4月27〜29日にミズーリ州カンザスシティで開催された。1巡から7巡まで全259選手が指名されたドラフトを振り返る。
全体1位でカロライナ・パンサーズが指名したのは、アラバマ大のQBブライス・ヤングだった。QBの平均身長が189cmというプロの世界で、身長178cmは致命的なハンデではないかとの議論もあったが、パンサーズは名門アラバマ大で2021年にハイズマン賞〔全米最優秀選手賞〕に輝いたその才能を信じてフランチャイズの将来を託した。
ヤングを獲得するために、パンサーズは1巡全体9位を含む複数の指名権とスターWRのDJ・ムーアを譲り渡してシカゴ・ベアーズから全体1位指名権を手に入れた。この大きな期待にヤングは応えられるか。QBを育てる手腕に定評があるフランク・ライク新HCとの二人三脚に注目が集まる。
続くヒューストン・テキサンズも全体2位でオハイオ州大のQB、CJ・ストラウドを指名。サイズと身体能力を兼ね備えた逸材で、テキサンズは3年連続負け越し中のチームを立て直すフランチャイズQBとして期待を寄せる。
QBが全体1位と2位で指名されたのは、2016年のジャレッド・ゴフ〔ロサンゼルス・ラムズが指名。ゴフは現デトロイト・ライオンズ〕とカーソン・ウェンツ〔フィラデルフィア・イーグルスが指名。ウェンツは現在無所属〕以来で、ドラフトが現行の形になった1967年以降で8例目だ。
全体4位のインディアナポリス・コルツもフロリダ大のQBアンソニー・リチャードソンを指名し、トップ4のうち3人をQBが占めた。QBの1巡指名がピッツバーグ・スティーラーズのケニー・ピケット〔1巡20位〕ただひとりだった昨年のドラフトとは対照的に、今年はQBが豊作で、上位だけではなく下位でも多くのQBがドラフトされ、5巡目までに12人が指名を受けたのは史上最多だ。
その一方で、ヤング、ストラウド、リチャードソンと並び称され、一部にはヤングに次ぐ好素材との声もあったケンタッキー大のウィル・レビスが1巡指名から漏れるという波乱も。テネシー・タイタンズがトレードアップして2巡2位〔全体33位〕で指名したが、パスの正確性の欠如など短所が厳しく評価されたようだ。
サプライズを提供したのがテキサンズだ。ストラウドを指名した直後の全体3位指名権もアリゾナ・カージナルスとのトレードで獲得し、攻守を問わず今ドラフトで最高のプロスペクトと評判だったアラバマ大のエッジ〔DE/OLB〕、ウィル・アンダーソンJr.を指名した。チームOBでもあるディミコ・ライアンズを新HCに迎え、大胆なドラフト戦略を実行に移したテキサンズの再建プロジェクトに注目だ。
「Mr.Irrevelant〔取るに足らない男〕」として毎年注目の全体最下位は、ラムズが7巡全体259位で指名したトレド大のDTデスフアン・ジョンソンに。昨年の「Mr.Irrevant」のQBブロック・パーディは、シーズン途中にサンフランシスコ・49ersの先発QBに定着してデビューから5連勝、プレーオフでも2勝と大旋風を巻き起こした。ジョンソンも同じようにサプライズを起こせるか。ただ、まずは開幕ロースターに残ることが目標だ。
強化ポイントに必要な選手を、適正な指名順で獲得したかという観点から最も評価が高かったのが、コルツ、カージナルス、スティーラーズ、ボルティモア・レイブンズ、バッファロー・ビルズ、タンパベイ・バッカニアーズなど。
パンサーズとテキサンズは、それぞれトレードアップのために差し出した見返りが大きかったのではないかという疑問が持たれている。
文・松野敏史(まつの・としふみ)
「ワールドサッカーダイジェスト」と「サッカーダイジェストWEB」で副編集長を務める。2020年4月にフリーランスのライター、編集者、翻訳者として独立。プレミアリーグを中心としたヨーロッパのサッカーに精通し、NFL、NBA、MLBなどアメリカのプロスポーツへの理解も深い。スポーツに限らず物事を多角的に捉え、本質を掘り下げることに興味と関心がある。
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