日米ツアー共催の「TOTO ジャパンクラシック」、単独首位で最終ラウンドを迎えた上田桃子は逆転を許し2007、11年に続く大会3勝目を逃した。5位で終えた36歳のベテランは、日本人史上3人目になる生涯獲得賞金額10億円を突破した。
快挙を達成しても、惜敗の悔しさが勝った。18番グリーンを静かに降りていく。鈴木愛と並ぶ「65」をマークした初日の好スタートから流れを切らさず、アンダーパーを並べた。若い日本の選手たちを鼓舞するかのように、54ホールを終えて単独トップに立った。世界ランク上位の米ツアーメンバーたちと互角に渡り合った。
2バーディを先行した最終ラウンドは、中盤以降に失速した。5番でボギーをたたくと折り返しの9番でもボギー、さらに11番では痛恨のダブルボギーをたたいた。追い上げたスコットランドのG.ドライバーグに交わされると、伸ばしあぐねた終盤に突き放された。
目の前の勝負に敗れて悔しさを募らせたが、389試合目で生涯獲得賞金額は10億90万8267円に到達した。日本人では不動裕理、横峯さくらに続く史上3人目の大台。全美貞、李知姫、アン・ソンジュ、申ジエと海外選手を含めても史上7人目。紛れもない快挙だろう。
永久シード保持者の不動や、ツアー史上最速になる207試合目で10億円を突破した元世界ランキング1位・申の記録は際立っている。ただ米ツアーを志す若手選手が増えている日本の女子ゴルフ界。米ツアーを撤退し、苦悩の時期を乗り越えた末に大台に達した上田の存在は、若手選手たちの励みにもなるだろう。
渋野日向子や畑岡奈紗、古江彩佳、笹生優花といった面々が世界へ羽ばたき、勝みなみや西村優菜は来季の出場権を目指して、米ツアーの予選会を受験する。コースの総距離、芝質、コースコンディションなど全てが日本とまるで違う欧米のゴルフ場。試合間で長距離移動も必要になる。慣れない異国の地での生活、そのストレスは計り知れない。
メンタル面がプレーに大きな影響を与え、再現性が最も必要とされる繊細なゴルフというスポーツにおいて、一度スランプに陥ると復活を遂げる道のりは、時に果てしない。再浮上することなく、フェードアウトしていく選手も多い。そういう意味では海外ツアー挑戦は、夢を叶える手段であると同時にリスクでもある。
もちろん米ツアーに挑戦した日本選手全員が思い通りの活躍をできれば良いが、世界トップの舞台。昨年は河本結が米ツアーを撤退した。シードを落とし、やむを得ず帰国するパターンもあるだろう。上田自身も2008年から主戦場にした米ツアーを、13年を最後に撤退した。
そこから日本で重ねた勝ち星は8つある。ただ帰国して、すんなり優勝を遂げられたわけではない。大きな目標を掲げて1勝もできずに終わった15年、地元・熊本の被災から1年、誰よりも勝ちたい試合で悔し過ぎる惜敗を味わった17年4月の「KKT杯バンテリンレディス」。屈辱を味わったのは1度や2度ではない。
それでも何度だって立ち上がり、同年5月の「中京テレビ・ブリヂストンレディスオープン」で復活優勝を果たすと、その後もコンスタントに優勝を挙げている。36歳になった今も第一線で活躍を続け、ついに突破した大台。その背中は、これからも若手たちの壁であり、道標でもある。
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