昨年12月、都内のホテルで開催された日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の表彰式。年間女王に輝いた山下美夢有を中心に華々しい成績を残したプロのみが壇上に上がった。その光景は煌びやかであり、同時に様変わりした顔ぶれを見ると勝負の厳しさを物語っていた。壇上には先輩プロに混じる3人のルーキーたちがいた。
昨季メジャーを含み2勝をマークした川崎春花、川崎に追いつけと初優勝を挙げた尾関彩美悠、そして櫻井心那。2021年11月のプロテストに合格した3人は、昨季がツアールーキーだ。レギュラーツアーで堂々の活躍を見せた川崎と尾関と違い、櫻井の主戦場は下部のステップアップツアーだった。
史上最多となる年間5勝をマークしてステップアップツアーの賞金ランキング1位に輝いた櫻井。その快進撃は”快挙”として見られたが、本人は自らの実力を推し図り、地道な努力を続けていた。
下部ツアーで初優勝を挙げた際に「いまレギュラーツアーに出場しても戦える自信はない。予選通過は可能かもしれないけど、優勝争いは無理だと思う。ステップ(アップツアー)で勉強したい。強い選手になるために」と話した。着実に力をつけ、開花のときをじっと待っていたのだ。
神奈川県横浜市の戸塚カントリークラブで開催された「資生堂レディス」。雲ひとつない晴天に乾いた打球音が響く。1打ビハインドの最終18番、豪快なティーショットからバーディーを奪った。
プレーオフに突入すると「バクバク」と心臓の音が聞こえた。「今季に入って初めての優勝争い。きのうの夜から緊張していた。でも去年5勝したステップアップツアーでの経験を生かせた。しっかりバーディーを取りに行くゴルフができた」。
PO2ホール目、ランも含めて284yd飛ばしたビッグドライブを披露。最後は3.5mの下りのスライスラインを強気に打ち切った。大物ぶりを予感させるバーディで、レギュラーツアー初優勝をマークした。
今季の目標は、地元の長崎県のパサージュ琴海アイランドゴルフクラブで開催される「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」で国内メジャー制覇を遂げること。そして近い将来に米ツアーへ挑戦すること。もっともっと強い選手になるために−。限りない可能性が広がる19歳にとってこの1勝は通過点に過ぎない。
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