山下美夢有が2季連続で年間女王に輝き幕を閉じた2023年シーズンの女子プロゴルフツアー。タイトル争いの行方とは別に、注目を集めた話題がイ・ボミ(韓国)の日本ツアー引退だった。
春の訪れは、女子ゴルフシーズンを含めてプロスポーツの開幕を告げる。オフに磨いた技術を実戦でトライする場。3月の「ダイキンオーキッドレディース」の注目度は高い。
そんな恒例のシーズン開幕戦を1週間後に控えた2月下旬、イ・ボミが2023年シーズン限りでの日本ツアー引退を発表した。2015、16年賞金女王という記録もさることながら、日本のファンに愛され、外国人選手の地位を格段に上げた第一人者だ。労いや寂しさの声をあげる人たちは、ツアー会場にとどまらなかった。
宮里藍さんが米ツアーに主戦場を移し、上田桃子や横峯さくらといった日本の主力選手も米国へ流れた。そんな時期に日本ツアーの看板選手となり、ツアーの人気を支えたのがイ・ボミだった。近年はシード権を喪失し、35歳となった今は全盛期の輝きを失っていたが、「引退」というフレーズに寂しさを感じる人は多いはずだ。
"若年化"が進む女子ゴルフ界で35歳は大ベテラン。キャリアが最も輝いていた時期に、生活すべてをゴルフに捧げたモチベーションを30代以降も維持することは難しいだろう。事実、宮里さんを含めて30歳を過ぎて現役を退く選手は増えている。
それでも、第一線で戦い続けるベテランたちがいる。今季最終戦まで山下と年間女王争いを繰り広げた申ジエは、イ・ボミと同学年だ。韓国ツアーから日本ツアーへ渡ったイ・ボミとは異なり、申は米ツアーで世界の頂点を極めた選手。世界的なレジェンドとしてふさわしい実績を誇るが、昨年に両肘の手術を行い、昨季は日本ツアー本格参戦以降でワーストの成績。キャリアは下降線に入ったと思われた。
しかしイ・ボミが引退表明をしてから1週間後の開幕戦「ダイキンオーキッドレディース」を制し、復活を印象付けたのが申だった。オフに激しいトレーニングを行い、「20代の頃に戻ったよう」というほど両腕の太さは増していた。
昨年にはキム・ハヌルが引退し、アン・ソンジュもツアー復帰をしていない。同世代の選手たちが次々と第一線から退く中で申は「いつかは終わりが来る。自分の選手生命もいつまで続くかはわからない。だから頑張りたい」と語ってきた。
世界中のツアーで60勝以上をマークする申の今年の活躍は、国内ツアーにとどまらなかった。今季は海外メジャーにも積極的に出場し、「全米女子オープン」では2位、「AIG(全英)女子オープン」で3位に入った。もちろん海外の試合に出ることで日本ツアーの試合を欠場することになるが、海外メジャーの成績もメルセデスポイントに加算されるため、年間女王争いに加わったのだ。
飛距離やパワーは若手選手に劣っても、磨き抜いた技術力は錆びない。そんなメッセージを伝えるかのような成績を海外メジャーの舞台で残した。世界ランキングは韓国勢3番手につけ、来年はパリ五輪の出場権を目標に掲げているという。日本の永久シードまで残り2勝。“若い選手のお手本”と言われるレジェンドには、現役選手として期待したい結果がまだまだある。
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