【コラム】輝きを増す“戦うレフティー”。セレッソ大阪の坂元達裕が目指す特別な相手からの勝利

セレッソ大阪で異彩を放つドリブラー

シンプルに、見ていて楽しい選手。

それが、今季、モンテディオ山形からセレッソ大阪に完全移籍で加入したMF坂元達裕だ。

最大の武器は、緩急を付けたドリブル。今季ここまでの明治安田生命J1リーグでドリブル数、被ファウル数ともに1位の数字を誇り、敵陣ペナルティーエリア内へのドリブル成功数も6位と、自身初挑戦となったJ1で輝きを放っている。

ボール保持の局面で、縦に急がず、何度もやり直して隙を突く“ロティーナ流”のサッカーにおいて、彼のドリブルは異彩を放ち、アクセントになっている。もちろん、仕掛けるスペースがない時はサイドを変え、立ち位置を取り直す。ただし、スペースがある状態で前向きにボールを持てば、仕掛ける意識は強い。

坂元のドリブルの特長は、縦にも中にも行けること。左足でイン巻きのクロスを上げると見せかけて、懐の深いフェイントを駆使して縦に切れ込むこともできれば、そうやって縦も見せることで、今度はカットインしての左足のシュートも効果的になる。

下部組織時代を過ごした特別な相手との一戦に挑む

J1挑戦1年目。堂々、開幕スタメンを掴むと、ここまでのリーグ戦で全試合に出場している。「タツのパフォーマンスには満足している」。（ミゲル・アンヘル・）ロティーナ監督の評価も高く、すっかりJ1に順応し、指揮官の信頼を勝ち取った。

中でもここ数試合の活躍は目覚ましい。第5節・サンフレッチェ広島戦で縦への突破から右足でオウンゴールを誘発するクロスを上げれば、第7節のサガン鳥栖戦ではカットインから左足のミドルシュートでJ1初ゴールを記録。前節の湘南ベルマーレ戦ではMF奥埜博亮とのワンツーでペナルティーエリア内に進入、相手ディフェンスのファウルを誘い、PKを獲得して決勝点につなげた。坂元自身、「ここ数試合、やっと得点にも絡めてきて自信になっている。結果を残せる自信は付いてきたので、これからどんどん結果を残していきたい」と表情は明るい。

そんな上り調子のタイミングで、運命の一戦が訪れた。

FC東京U-15むさし出身の坂元は、U-18への昇格が叶わず、前橋育英高校、東洋大学を経てプロ入りした経緯がある。そんな彼にとって、FC東京は特別な相手。「中学の頃、お世話になったクラブ。U-18には昇格できなかったけど、自分でも上がれるレベルではないと思っていたので、妥当な判断だと受け止めていた」と当時について冷静に語る一方で、「ユースに上がれなくて、悔しい思いで高校、大学とプレーしてきた部分もある」と反骨心を滲ませる。それだけに、「自分にとっては大きな試合。成長した姿を見せつけたい」気持ちも強い。

右サイドを主戦場にしている坂元と対面するFC東京の左のボランチには、同じFC東京U-15むさし出身で、FC東京U-18に進んだ一学年下のMF安部柊斗がいる。「明治大でも一つ上の学年に入って、中心選手としてチームを引っ張っていた。守備で相手を潰せて、運動量があって、そこから攻撃にも出て行ける。何でもできる選手だった」（坂元）。そんな彼らのマッチアップも、この試合の見どころの一つだ。

古巣という意味では、大学卒業後、唯一オファーをくれた山形への感謝の気持ちも胸に戦っている。

「昨季は自分がチームを引っ張る思いで臨んでいた。最後にJ1昇格が叶わず、自分の力不足を感じた」。その悔しさを糧に、今季、さらにプレーヤーとしての成長を期し、C大阪への移籍を決断。「今年はもっと絶対的な選手になって、J1の優勝に貢献したい。そのためには、まだまだ足りない。このくらいの得点の絡み方では、まだまだ足りない。ここからもっともっと、結果を突き詰めていきたい」と決意を口にしている。

柔和な顔つきだが、この言葉を聞くだけでも、胸に秘めた闘志は人一倍であることが分かる。「彼が素晴らしいのは、攻撃だけではなく、守備でもチームのために貢献してくれるところ」。ロティーナ監督もそう称えるように、後半の苦しい時間帯でも、歯を食いしばって懸命に戻り、守備でも献身的に戦えるタフさがある。

首位・川崎フロンターレを追走すべく連勝を狙う今節。初のJ1にも臆することなくプレーし、日に日に輝きを増している“戦うレフティー”の、キレ味鋭いドリブルに注目して欲しい。

文・小田尚史

1980年生まれ。2009シーズンより、サッカー専門紙「EL GOLAZO」にてC大阪と徳島ヴォルティスを担当。2014シーズンよりC大阪専属となり、現在はクラブのオフィシャルライターとしても執筆中。

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