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明治安田J1リーグ

【コラム】わずか数ヶ月。されど数ヶ月。川崎フロンターレの大卒ルーキー・旗手怜央が歩む確かな成長曲線 | Jリーグ

【コラム】わずか数ヶ月。されど数ヶ月。川崎フロンターレの大卒ルーキー・旗手怜央が歩む確かな成長曲線 | JリーグDAZN
【国内サッカー・ライターコラム】首位を走る川崎フロンターレで、大卒ルーキーながらコンスタントに試合に出場している旗手怜央。快進撃を続けるチームの中で成長著しい旗手が、ここまで存在感を発揮できるようになった要因とは。自身の言葉と同期の三笘薫の言葉から、背番号30の今に迫る。
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ターニングポイントとなった仙台戦

「このままだと、今シーズンの自分はもう終わってしまうかもしれない……」

川崎フロンターレのFW旗手怜央は、焦燥感に駆られていた。

約4カ月の中断を経て、7月4日に明治安田生命J1リーグが再開してから3試合連続で途中出場。その間、チームも3連勝と勢いに乗っていた。にもかかわらず、である。旗手は焦っていた。

「自分のプレーに納得もできなければ、試合に出てもチームの力になれていないなと感じていたんです」

7月18日、J1第5節の横浜FC戦はベンチ入りするも、出場機会は与えられなかった。それがより一層、旗手の焦りを煽った。

だから、4日後のベガルタ仙台戦に向かうメンバー発表の際、名前が呼ばれたときには驚く自分がいた。

「もしかしたら(遠征)メンバーに入れないんじゃないかって思っていたんです。だから、これがラストチャンスだなと。ここで結果を残せなければ、1から頑張らないと、メンバー外からやり直さなければいけないなって」

そんな覚悟で臨んだ仙台戦だった。

出番が巡ってきたのは、2点を追いかけていた後半の頭。右ウイングで途中出場した旗手は58分、右SBのDF山根視来からパスを受ける。素早くゴール前の状況を確認すると、相手DFが寄せ切るよりも早く、右足でクロス。GKが飛び出せない位置に巻くように上げたボールは、一緒に途中出場していたFW小林悠が頭で合わせた。

逆転の狼煙となる1点だった。そこから川崎は10分間で3得点を上げてスコアをひっくり返す。旗手はアシストという結果で、初めてチームの勝利に貢献した。

「目に見える結果を残せたことで、自分の中でもちょっとすっきりしたところがありました。だから、この夏場を振り返ってみると、自分の中ではあの1試合が本当に大きかったんです。アシストでもゴールでも、数字というのは誰が見ても評価しやすいというか。他のところももちろん見てほしいですけど、自分も結果(数字)にはこだわっていたので」

続く第7節の湘南戦では初の先発出場を果たした。その試合で、同じ大卒ルーキーのFW三笘薫が、途中出場から初ゴールを記録する。だが、仙台戦で自信を手にした旗手に、もう迷いはなかった。

「比較していたわけじゃないですけど、その後、薫は(カップ戦も含めて)5試合連続でゴールを決めたんですよね。自分はスタメンで試合に出させてもらう機会が増えてきて、自分としては薫が結果を残していても、焦りはなかったというか。自分は自分でやるべきことをしっかりやる。(仙台戦で)1つ結果を残せたことで、あとは自分のプレーをするだけだなと思うことができました」

三笘が語る旗手の魅力とは

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先発で起用されているからこそ、自分がやるべきことをやり切ればいい。聞けば、旗手はこう教えてくれた。

「右ウイングで出場することが多いですけど、そのときは相手の裏を突くプレーや自分自身がゴールに向かうプレーをすること。インサイドハーフとSBとの関係でサイドを崩すコンビネーションは、自分の中でも手応えを感じるようになりました。あとはやっぱり守備ですよね。チームとして今シーズン取り組んでいる前線からの守備。ウイングの選手がスタートを切るときもあるので、そこもしっかり自分から行けるようにする。ハードワークや球際の強さも求められているので、そこは試合を重ねるにつれて徐々にできてきているという感覚もあります。あとは、自分の強みである、ゴールに向かうプレーをしたいと思っています」

大学は異なるが、1年生のときから全日本大学選抜などで一緒にプレーしてきた三笘は、旗手の魅力をこう言葉にする。

「まず自分に足りないところで言うと、一つは運動量ですよね。怜央は走れるから、ウイングもできるし、インサイドハーフもできる。守備でも頭を使って貢献できるので、チームの穴にならないのが大きいと思います。また、その運動量があるから、守備をしていたところから攻撃でも出力を発揮できる。だから、攻守に絡めるんだと思うんです。それにもともとFWなので、シュート力もありますし、自分の形に持っていければ、相当、自信はあるんじゃないかなと。最初のころは、なかなか得点が入らなくて苦しんでいましたけど、1つ入ってからはどんどん入っている。僕も追い抜かれないようにしたいとは思いますけど、ドリブルからのシュートという形は、僕よりも俊敏性や(足の)振りの速さがある。なおかつパンチ力もあるので、ゴール前ではオールラウンドに力を発揮できると思います」

リーグ戦18試合を終えて、三笘が先発したのが3試合に対し、旗手が9試合に先発しているのは、同期である三笘も認める「運動量」によるところも大きいのだろう。その分、三笘は途中から登場することで、キレを発揮して8得点を挙げているのだから、鬼木達監督の起用法に脱帽したくなる。

ただ、旗手自身も「焦らなかったから結果がついてきた」と言うように、1つゴールが決まれば、堰を切ったように得点が生まれている。

8月5日に行われたJリーグYBCルヴァンカップの鹿島アントラーズ戦で、三笘のアシストから初ゴールを記録した旗手は、8月26日の神戸戦(J1第24節)、29日の清水戦(J1第13節)、その後9月23日の横浜FC戦(J1第18節)でも得点を記録している。

「(中村)憲剛さんにも『ゴールを決めてから自信に満ちあふれているな』と言われました(笑)。僕自身もゴールを決めてさらにすっきりした部分があったので、いい意味でもっと得点を狙っていきたいと思います。得点を決めてからは、試合を通して自分のよさを長い時間出せるようになりました」

変化したプレーの優先順位

勝手な印象ながら、旗手には、どこかチャンスでパスを選択しているイメージがあった。それは育成年代の日本代表の試合で感じたことでもある。自分で打てる場面でも、さらに確率が高い味方を探して、そちらを選んでしまう。それにより好機をふいにしてしまうシーンもあり、ストライカーらしくないなと、思ったことがあった。

ところが、今はどうだろう。チャンスとみれば、強気な選択をして、ミドルレンジからでも積極的にシュートを狙っている。

「フロンターレに加入した当初も、周りの人をうまく使おう、周りに合わせようということばかりを考えていたんですよね。そういうプレーをしていると、あまり自分のよさが出なかったというか。正直なところ、自分の魅力が伝わらないなとすごく感じていて。だったら、周りに何を言われようが、まずはゴールを選択するようなプレーをしなければ自分の魅力も伝わらない。自分がこのチームに貢献するためには、そういうプレーをするしかないなと。それもあってゴールという結果につながっているのかなと思います」

もちろん、今もパスを選ぶこともある。だから、J1第10節の北海道コンサドーレ札幌戦やJ1第14節の横浜F・マリノス戦で、三笘のゴールをお膳立てできているのだ。

根本的に違うのは、その優先順位だった。

「札幌戦で薫が決めたシーンは、最初は自分で打とうと考えたんですけど、最終的には自分じゃないなと思ったのでパスを出しました。自信がついたことで、局面、局面でいい選択ができているというのがあるかもしれない。だから、今までの自分と違うところと言えば、選択肢がまずはゴールになっているところかなと思います」

以前ならば、最初からパスという選択肢も持っていたが、今の旗手は優先順位としてまずはシュートがある。だから、打つときには躊躇することがない。DAZNの中継では、選手たちの声もよく拾われるが、先輩から思いっ切り「出せよ!」と言われていることもあるくらいに。

「そう言ってるのは(FW小林)悠さんだと思うんですけど(笑)、多分、悠さんも同じ状況だったら、シュートを打っていると思うんですよね。結果的に入らなかったとしても、まず打つという姿勢がなければ、パスという選択肢にも至らない。シュートがあってはじめて横パスも生きてくると今は思えています」

思わず、頷いてしまった。おそらく小林もシュートを打っているだろうなと納得した。

「自信はついてきましたけど、安心していられないというか。今も危機感のほうが強いです。同じポジションにはアキさん(MF家長昭博)もいれば、(FW齋藤)学くんもいる。アキさんからポジションを奪ってやろうという思いでやっていますけど、まだまだ全然、追いつけていない。僕は、アキさんみたいにはプレーできないですけど、今は自分のプレーをしようと思っています」

ゴールに向かうプレーを選択できるようになった。プレーの優先順位も変わった。次は「そこに迫力を出したい」と旗手は意気込む。わずか数カ月、されど数カ月——ここまで成長している彼を知れば、シーズンが終わるころにはどんな景色を見せてくれるのか、楽しみでしかない。

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文・原田大輔

1977年生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を経て、2008年に独立。現在はJリーグの取材を中心に、各クラブのオフィシャルメディアや各媒体に記事を寄稿している。

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