5度のPFA年間ベストイレブン、4度のクラブ年間最優秀選手賞――。クラブ低迷期を支え続けたダビド・デ・ヘアは、紛れもなくマンチェスター・ユナイテッドのレジェンドだ。
デ・ヘアがユナイテッドにやって来たのは、まだアレックス・ファーガソン監督が率いていた時代の2011年。ユースを過ごしたアトレティコ・マドリードでデビューし、出場した公式戦84試合で確実にその才能を世界に知らしめた若きスペイン人GKは、レアル・マドリードやバルセロナなどの国内ビッグクラブに興味を持たれながらも、国外の厳しい環境に自ら身を置くことを決断した。
まだ身体の線が細かったデ・ヘアは移籍当初、プレミアリーグ特有のフィジカル戦に苦慮。ハイボールやクロス対応では不安定さを露呈し、そのパフォーマンスには厳しい声が飛び交った。それでも、ファーガソン監督が信頼して起用し続けた男は、当時のGKコーチであるエリック・スティール氏と共にピッチ内外で自身の改善に努め、誰もが認める世界屈指のGKに成長したのだ。
当時のデ・ヘアについてスティール氏は以前、「彼は1日に2～3度も睡眠を取り、夜にはしょっちゅうタコスを食べていた。我々はプロティンを飲むことを勧め、ジムでのトレーニングも行わせた。彼は嫌がっていたよ。スペインでは筋力トレーニングをそんなにしないからね。我々は彼のフィジカルのベースを構築したんだ」と、生活習慣から改善したことを明かしている。
プレミアの水に慣れたデ・ヘアはそこからクラブにとって欠かすことができない選手に。2012-13シーズンにプレミアリーグ制覇に貢献すると、9シーズンにわたってレギュラーとして活躍した。
クラブは2012年のファーガソン監督の退任により暗黒時代を過ごすことになるが、デ・ヘアはデイヴィッド・モイーズ、ルイス・ファン・ハール、ジョゼ・モウリーニョ、そして現在のオーレ・グンナー・スールシャールと全ての指揮官から全幅の信頼を寄せられ、確固たる地位を確立してきた。
29歳となったデ・ヘアは、すでにユナイテッドで公式戦394試合に出場。同クラブ史上最高の守護神が語られる際に必ず名前が出てくる元デンマーク代表GKピーター・シュマイケル（362試合）、元オランダ代表GKエドウィン・ファン・デル・サール（266試合）の両名よりもすでに多くの試合でゴールマウスを守っているのだ。
派手やアクションやタイトル数などでは両名に劣るデ・ヘアだが、厳しい時代を過ごすクラブを最高峰で地道に支え続けてきたその功績は、トロフィー数に関わらず改めて評価されるべきもの。間違いなく、クラブ最高のレジェンドの一人と言えるだろう。
プレースタイル
デ・ヘアの特長と言えば、何と言ってもそのレスポンスだ。至近距離からのシュートにはめっぽう強く、これまで驚異的反応で数々のビッグセーブを披露してきた。また、他のGKと一線を画すのが足を使ったセービング技術。近距離からの低い弾道のシュートを足でセーブする離れ業で、幾度となく試合の主役となっている。無論、足下の技術にも優れており、キック精度も高い。歴史に残る名手だ。
動画：プレー＆セーブ集
プロフィール・経歴
ダビド・デ・ヘア／David de Gea
1990年11月7日生まれ 193cm・76kg 利き足：右
| シーズン | 所属クラブ | 出場・得点 |
|---|---|---|
| 2009-10 | アトレティコ・マドリード | 19試合・0得点 |
| 2010-11 | アトレティコ・マドリード | 38試合・0得点 |
| 2011-12 | マンチェスター・U | 29試合・0得点 |
| 2012-13 | マンチェスター・U | 28試合・0得点 |
| 2013-14 | マンチェスター・U | 37試合・0得点 |
| 2014-15 | マンチェスター・U | 37試合・0得点 |
| 2015-16 | マンチェスター・U | 34試合・0得点 |
| 2016-17 | マンチェスター・U | 35試合・0得点 |
| 2017-18 | マンチェスター・U | 37試合・0得点 |
| 2018-19 | マンチェスター・U | 38試合・0得点 |
| 2019-20 | マンチェスター・U | 38試合・0得点 |
| 2020-21 | マンチェスター・U | 14試合・0得点 |
※成績は国内リーグ（2021年1月10日時点）
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