「俺たちはアトレティックに勝たなきゃいけない」
マジョルカ練習場のロッカールーム、日本代表としての戦いを終えたばかりの久保建英は、チームメートの一人にそう語った。まさに、意志の込もった言葉、である。長旅も、両足に蓄積している疲労も、この若き日本人が抱えている野心を挫くことはできない。
もっと、もっと、もっと、もっと……。若さゆえ、自分の力を信じるがゆえ、まだたどり着かなければならない“場所”があるゆえの貪欲さは、ピッチ内外で見せる表情からも分かる通り。マジョルカにとっては、頼もしいことこの上ない。
ルイス・ガルシア・プラサ率いるチームはラ・リーガ第3節までを2勝1分けで終えて勝ち点7を獲得。1部残留のためのさらなるアドバンテージを確保する上で、日本人の野心と才能は大きな後押しになる。
久保の姿勢がマジョルカを変える?
実際マジョルカの中には久保のはっきりと表れた意気込み、チームを引っ張る姿勢に感化されている選手たちがいる。「あいつは時間を無駄にするためにここに来たわけじゃない。モチベーションが半端なくて、それが練習から感じられるんだよ」。
彼らはマイクのないところで、そんなことを口にしている。そして久保がそうした姿勢を示せすことができるのは、マジョルカで自分のアイデンティティーをすでに確立しているからでもある。
久保がレアル・ソシエダをはじめとして、財政とスポーツの両面でマジョルカを上回るクラブからのオファーに断りを入れたのには、確固たる理由があるはず。昨季ビジャレアルとヘタフェでついには見つけられなかったものが、ここにはあるのだから。
ガルシア・プラサが久保の加入直後に話していた内容は、それを見事に言い当てているように思える。
「加入初日からタケの心からの笑顔を見ることができた。チームメート達と気兼ねなく触れ合っていたが、若手選手にとって自分が愛されていると感じられることは素晴らしいことだ。私たちにとって大切な選手になるよ」
久保のポジションについて議論沸騰中
胸に宿る自信、他者から寄せられる信頼、地に足をつけていられる環境……。久保が自分のフットボールを示すために必要な条件が、ここマジョルカには揃っている。
まだ、何か揺らいでいるものがあるとすれば、それはプレーするポジションか。この日本人がどの位置でプレーすべきかは、マジョルカのサポーターにとっても大好物の議論となっている。右サイドハーフ、トップ下、そのほか偽9番に左サイドハーフと好みは千差万別だが、全員一致しているのはベンチに座らせるのはあり得ない、ということだ。
私個人の意見を記させてもらえば、久保はトップ下として相手のDFとMFのライン間に据えるべきだと思う。そこならばドリブル突破やラストパスなど最たる長所を存分に生かすことができるし、対戦相手が必要以上に彼を警戒する場合には、異なる場所にスペースが生まれてチームメートの恩恵にもなる。
なおガルシア・プラサは第2節アラベス戦(1-0)で久保をトップ下として起用し、第3節エスパニョール戦(1-0)では右サイドに置いた。
最近、『ディアリオ・デ・マジョルカ』は彼へのインタビューを行ったが、そこでは「私たちの基本システム1-4-2-3-1で、タケはどんな攻撃的ポジションでもプレーできる。私たちはタケのほか、ダニ・ロドリゲス、イ・ガンイン、アマトも擁しており、各試合で彼ら4選手を適切な形で起用していくことになるだろう」と語っている。
11日(日本時間12日4時)のラ・リーガ第4節アトレティック・クラブ戦、久保はフィジカルに問題を抱えない限りスタメンを張ることが確実となっている。スペインのクラシックと称されるクラブの一つアトレティックは、第3節までの成績が1勝2分けとマジョルカと同じく負けなし。第5節が始まるまで笑い続けていられるのは、一体どちらか……。
アトレティックとマジョルカの人々だけでなく、善良なるフットボール・サポーターがソファーに座って見守るべき試合の一つだろう。ボールが転がるのが、久保が転がしていくのが、待ち切れない一戦だ。
文/セバスティア・アドロベル(Sebastia Adrover)、マジョルカ地方紙『ディアリオ・デ・マジョルカ』
翻訳・加筆・構成/ 江間慎一郎
1983年生まれ。東京出身。携帯サッカーサイトの編集職を務めた後にフリーのサッカージャーナリスト・翻訳家となり、スペインのマドリードを拠点に活動する。 寄稿する媒体は「GOAL」「フットボール批評」「フットボールチャンネル」「スポニチ」「Number」など。文学的アプローチを特徴とする独創性が際立つ記事を執筆、翻訳している。
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