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【コラム】久保建英には、”ニュー・マラドーナ"になってほしくはない | ラ・リーガ

【コラム】久保建英には、”ニュー・マラドーナ"になってほしくはない | ラ・リーガ(C)Getty Images
【コラム】フットボールの象徴ディエゴ・マラドーナが亡くなった――。今ほど、消えていった"ニュー・マラドーナ"たちのことを振り返るのに適したタイミングはない。スペインの『マルカ』『オンダ・セロ』などでビジャレアルを担当するビクトール・フランク氏は、そう力説する。

UEFAヨーロッパリーグ(UEL)のアンセムが鳴り響いた後、スタジアムは耳を聾する重たい静寂に包まれた。

その雰囲気の正体はもちろん、フットボールを象徴する10番、ディエゴ・アルマンド・マラドーナへの黙祷である。

今週は、誰もがマラドーナのことを思いながら過ごすことになった。

思いを寄せるきっかけは、どこにだって転がっている。

道で子供がボールを蹴っていれば、私たちがマラドーナを思い出すきっかけになる。テレビでリポーターが話していれば、マラドーナの訃報を思い出すきっかけになってしまう。そして、プロ選手のプレーを見れば、マラドーナのようには決してなれないと思ってしまうのだ。

ディエゴは、あらゆる所に存在している。

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退団騒動が持ち上がった久保。だが…

マラドーナの訃報は久保建英とビジャレアルが飛行機でイスラエルに向かっているときに届いている。

その衝撃は、久保の退団騒動をかき消すほどだった。『エル・ペリオディコ・メディテラネオ』曰く、彼はビジャレアルで出場機会が限られていることを理由に、他クラブへの移籍を検討しているという。ビジャレアル関係者は関知していないようだが、現状に鑑みれば真実だと思える。

久保が失望する理由は理解できる。

彼が期待していたようなシーズンになっていないことは。今回のマッカビ・テルアビブとのアウェー戦まで、UELでは全試合で先発出場を果たしているが、それで十分ではないのだろう。

UELグループステージよりもレベルが高いラ・リーガでは満足な出場機会を得られていないし、所属元であるレアル・マドリードとの一戦でわずか5分しか出場できなかったことは大きな打撃だったに違いない。

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「彼とは何回も話し合っているよ。19歳ながら成熟している。が、だからこそ、もうすべてを欲してしまっている。彼には外部ではなく、チームメートや監督ら内部の意見に耳を傾けてほしい」

ウナイ・エメリは久保についてそう語っていたが、おそらく、この19歳の日本人は辛抱して待てないようだ。彼の未来が素晴らしいものとなることに疑いの余地はない。

ただ、選ばれし者として、進む道を間違えてほしくはない。ダークサイドには、引きずり込まれてほしくはない。

マッカビ・テルアビブ戦、それでも久保は今一度その野心を示そうとしたが、チームメートと同様に相手の堅守を前に苦労を強いられている。

左サイドでのプレーはやはり苦手としているようで、どう仕掛ければいいかに困っている様子も見受けられた。後半にはほとんど存在感がなくなってしまい、63分にピッチを後にすることになった。

消えたニュー・マラドーナたちを見よ

結局1-1ドローで終了したこの試合は、久保にとって課題を残すものだった。

が、課題があるからこそ、進む道があるということも忘れてはいけない。

例えばエメリは、この日本人のことを同じく左利きのダビド・シルバに似ていると評していた。シルバは22歳の頃、バレンシアでエメリから指導を受けていたが、そのときには右サイドで起用されることが多かった。きっとエメリの頭の中では、久保が左サイドでただ仕掛けるだけでなく、シルバのように味方を生かすこともできる万能性を手にしてほしいとの考えがあるのだろう。

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“ニュー・マラドーナ”と呼ばれた若手たちが何人いて、そして何人が姿を消したのか――。今ほど、このことを振り返るのに適したタイミングはない。

マラドーナ本人にしたって、甘い蜜を吸おうと近づいてきて、愚かな助言をする人間たちに振り回される人生を送ってしまった。フットボール、社会、ビジネスの重圧が、彼の行動や振る舞いを不健全なものにしてしまったのだ……。

自分がマラドーナだと思うことは、問題になり得る。久保は、長い道程において数歩を踏み出しただけだと自覚しなければならない。

その道は19歳で踏破できるものではない。メッシですら、そうだったのだから。

レアル・マドリードのトップチームでプレーしたいのならば、まずビジャレアルでレギュラーを張れる力が備わっていることを示すべきだろう。

ビジャレアルの次戦は、現在ラ・リーガで首位に立つレアル・ソシエダ戦。魅力的な試合であり、久保にとっては、また一歩を踏み出す機会となる。

文= ビクトール・フランク  /スペイン『オンダ・セロ』『マルカ』ビジャレアル番

翻訳= 江間慎一郎

1983年生まれ。東京出身。携帯サッカーサイトの編集職を務めた後にフリーのサッカージャーナリスト・翻訳家となり、スペインのマドリードを拠点に活動する。 寄稿する媒体は「GOAL」「フットボール批評」「フットボールチャンネル」「スポニチ」「Number」など。文学的アプローチを特徴とする独創性が際立つ記事を執筆、翻訳している。

放送・配信予定

  • 試合:2020-2021 ラ・リーガ第11節 レアル・ソシエダ対ビジャレアル
  • 日時:2020年11月30日(月)日本時間5:00
  • 配信:DAZN
  • 解説:小澤一郎 実況:桑原学

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