大袈裟な言葉から、この文章を記し始めてみようか。久保建英は英雄としてヘタフェに戻ってきた。
……やはり少し大袈裟だから、少し現実的に描写しよう。久保はヘタフェ本拠地コリセウム・アルフォンソ・ペレスに疲れと、いつもの落ち着きを感じさせながら戻ってきている。ホセ・ボルダラス監督と手を握り合い、チームメートたちから祝福を受けて。その意味はもちろん、U-24日本代表としてアルゼンチンのような強豪相手に2アシストを記録したためだ。
彼はヘタフェが送り出した6人の代表選手の一人だった。合流日である4月1日、最初に帰還した代表選手は、U-21スペイン代表として結果を残したマルク・ククレジャと、モロッコ代表デビューを果たしたチャクラ。どちらも幸せそうだ。その一方でトルコ代表エネス・ウナルはコンディションが思わしくなく、セルビア代表ネマニャ・マクシモビッチはなぜか合流が遅れて……と、前述の2人と比べて対照的な状況。最後の一人であるジェネ・ダコナムは、トーゴ代表として臨んだ2試合で勝利を逃したが、そんなことは関係なく、いつも通り笑みを浮かべて練習に取り組んでいた。
さて、2日はこちらの聖木曜日だが、昨年はコリセウムに隣接する練習場は熱狂に包まれていた。祝日にあたるこの日は、いつもならたくさんの子供たちが自分たちのアイドルと触れ合い、スタジアムから練習場までの道で写真を一緒に撮ったり、サインを書いてもらったりしている。だがしかし、新型コロナのパンデミックは、強烈な静寂を呼び込んでしまった。監督たちにとっては喜ばしい落ち着きを手にしたのかもしれないが、サポーター、特に子供たちにとっては悲しむべき状況だ。チームはこうした中で、エルチェに続いて再び残留を争う直接的ライバルとの一戦でラ・リーガを再開させる。
3日に臨む第29節、敵地エル・サダールでのオサスナ戦。あそこの土地に住む人の典型は、冗談をほとんど言わずに黙々と働く、竹を割ったような性格を持つと言われるが、オサスナはまさにそれを体現するチームだ。無駄口を叩くことなく、せっせと、懸命にプレーをする。何よりも激しいプレーを。ピッチに向けて猛烈な声援を送り、エル・サダールをまるで野戦場としてしまう彼らのサポーターがいないことは、ヘタフェにとって幸いと言えるだろう。
ボルダラス率いるヘタフェとオサスナの対戦は、いつどんなときにも肉弾戦の様相を呈してきた。そこで勝敗を分けていったのは相手のミス、またはとても希少な創造的プレーというディテールである。創造性という点で、久保に目を向けないわけにはいかないだろう。エルチェ戦の彼は輝かしいプレーを見せたし、日本代表戦でもその輝きが曇ることはなかったのだから。
久保がエルチェ戦に続いてスタメンとなるか、それともオサスナに疲労の色が見えてから出場するのかは、まだ分からない。しかし北九州の地で見せた極めて高精度の2本のCKアシストは、オサスナ戦で勝敗を分けるディテールになり得る。対して不安要素は、日本からの長旅による疲れだ。2万キロにも及ぶフライトは、まだ若い彼にも少なからず影響を与えているだろう。
ラ・リーガも残り10節。久保はヘタフェで成功をつかむかどうかという別れ道に立っている。同時期に加入した同じくバルセロナ下部組織出身のカルラス・アレニャーは、すでにレギュラーとしての地位を確立した。次は、日本人の番とならなければならない。少なくとも、ここ最近の流れを見る限り、久保はヘタフェに必要な選手であることを示している。彼のその才能が、オサスナとの肉体的な争いの中で差す一筋の光になることは、容易に想像ができるのだ。
文/ホセ・アントニオ・デ・ラ・ロサ、スペイン『アス』紙ヘタフェ番
翻訳= 江間慎一郎
1983年生まれ。東京出身。携帯サッカーサイトの編集職を務めた後にフリーのサッカージャーナリスト・翻訳家となり、スペインのマドリードを拠点に活動する。 寄稿する媒体は「GOAL」「フットボール批評」「フットボールチャンネル」「スポニチ」「Number」など。文学的アプローチを特徴とする独創性が際立つ記事を執筆、翻訳している。
順位表
※第28節終了時点
順位 | 点 | 勝 | 分 | 敗 | 差 |
---|---|---|---|---|---|
1 アトレティコ・マドリード | 66 | 20 | 6 | 2 | +33 |
2 バルセロナ | 62 | 19 | 5 | 4 | +43 |
3 レアル・マドリード | 60 | 18 | 6 | 4 | +26 |
4 セビージャ | 55 | 17 | 4 | 7 | +18 |
5 レアル・ソシエダ | 45 | 12 | 9 | 7 | +16 |
6 ベティス | 45 | 14 | 3 | 11 | -3 |
7 ビジャレアル | 43 | 10 | 13 | 5 | +8 |
8 グラナダ | 36 | 10 | 6 | 12 | -12 |
9 アスレティック・ビルバオ | 35 | 9 | 8 | 11 | +6 |
10 レバンテ | 35 | 8 | 11 | 9 | -1 |
11 セルタ・デ・ヴィーゴ | 34 | 8 | 10 | 10 | -8 |
12 バレンシア | 33 | 8 | 9 | 11 | -4 |
13 オサスナ | 30 | 7 | 9 | 12 | -12 |
14 ヘタフェ | 29 | 7 | 8 | 13 | -11 |
15 カディス | 29 | 7 | 8 | 13 | -20 |
16 バジャドリード | 27 | 5 | 12 | 11 | -12 |
17 エルチェ | 25 | 5 | 10 | 13 | -17 |
18 エイバル | 23 | 4 | 11 | 13 | -11 |
19 アラベス | 23 | 5 | 8 | 15 | -21 |
20 ウエスカ | 21 | 3 | 12 | 13 | -18 |
※1~4位がチャンピオンズリーグ出場権、5位がヨーロッパリーグ出場権を獲得。18~20位は自動降格。
ラ・リーガ日程
第29節
4/3(土)23:15 レアルマドリード vs エイバル
ダニエル・カルバハルに復帰のめどが立ったものの、トニ・クロースが内転筋に問題を抱えるなど、依然として怪我人の多さに泣かされているレアル・マドリード。ミッドウィークにはUCLのリヴァプール戦、次節には大一番のエル・クラシコが控えており、エイバルを破って士気を高めたい。
4/4(日)1:30 オサスナ vs ヘタフェ
代表ウィークではU-24日本代表として日の丸を背負い、アルゼンチンとの親善試合では2アシストで大国撃破の原動力となった久保建英(ヘタフェ)。スペインの有力紙『アス』もそのプレーを絶賛しており、最高の状態でリーグ戦に臨む背番号「5」に熱視線を送ろう。
4/5(月)4:00 セビージャ vs アトレティコ
7シーズンぶりのリーガ制覇を目指すアトレティコにとって、今節のセビージャ戦は第35節のバルセロナ戦に次ぐ山場。15ゴールと覚醒中のユセフ・エン=ネシリには特に注意が必要で、このストライカーを封じることが最強守備陣のメインタスクになりそうだ。
4/6(火)4:00 バルセロナ vs バジャドリード
5連勝で首位アトレティコとの差を4ポイントにまで詰めてきた2位バルセロナ。5戦7発のリオネル・メッシに加え、ウスマン・デンベレもバルサ加入以降では最高のパフォーマンスを披露しており、勝って次節に控えるエル・クラシコに備えたい。
開催日 | キックオフ (日本時間) | 試合 |
---|---|---|
4/3(土) | 4:00 | レバンテ vs ウエスカ |
4/3(土) | 21:00 | グラナダ vs ビジャレアル |
4/3(土) | 23:15 | レアル・マドリード vs エイバル |
4/4(日) | 1:30 | オサスナ vs ヘタフェ |
4/4(日) | 21:00 | アラベス vs セルタ |
4/4(日) | 23:15 | エルチェ vs ベティス |
4/5(月) | 1:30 | カディス vs バレンシア |
4/5(月) | 4:00 | セビージャ vs アトレティコ |
4/6(火) | 4:00 | バルセロナ vs バジャドリード |
4/8(木) | 4:00 | ソシエダ vs ビルバオ |
第30節
開催日 | キックオフ (日本時間) | 試合 |
---|---|---|
4/10(土) | 4:00 | ウエスカ vs エルチェ |
4/10(土) | 21:00 | ヘタフェ vs カディス |
4/10(土) | 23:15 | ビルバオ vs アラベス |
4/11(日) | 1:30 | エイバル vs レバンテ |
4/11(日) | 4:00 | レアル・マドリード vs バルセロナ |
4/11(日) | 21:00 | ビジャレアル vs オサスナ |
4/11(日) | 23:15 | バレンシア vs ソシエダ |
4/12(月) | 1:30 | バジャドリード vs グラナダ |
4/12(月) | 4:00 | ベティス vs アトレティコ |
4/13(火) | 4:00 | セルタ vs セビージャ |
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