ヘタフェ本拠地コリセウム・アルフォンソ・ペレスに、またもや進撃を見せる怪物がやって来る。UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)でリヴァプールを破って準決勝に進出し、バルセロナとのクラシコも制したレアル・マドリー。息絶えたと思っても復活し、世界最高のクラブの座を維持し続ける"七つ頭のヒュドラ"だ。
2カ月の彼らはもう致死的な傷を負ったとみなされていた。負傷者続出に成績不振と、ジネディーヌ・ジダンという監督のキャパシティーを超えて、破滅への道を歩んでいると思われた。だがシーズン最終局面の直前に入ってみれば、ラ・リーガとUCLを獲得できるポジションにつけ、誰も競り合いたくないチームとなっている。それこそがレアル・マドリー、いや、ジダン・マドリーなのだろう。
ヘタフェはレアル・マドリー戦に立ち向かうため、前節カディス戦で喫した思いもよらない敗戦の傷を癒すために7日間の猶予があった。彼らのここまでの調子を見る限り、シーズン終了まで残留を争うことは免れないだろう。
終盤戦、ヘタフェはどう戦うのか?
問題は、ピッチ上で一体どうやって戦っていくのか、ということだ。
冬の移籍市場で獲得した久保建英とカルラス・アレニャーに賭けるのか、これまでのように肉弾戦上等で批判が集中する堅守速攻に頼るのか……。いずれにしろ、わずか4日間でレアル・マドリー、バルセロナとの連戦に臨むことは、ホセ・ボルダラスにとって言い訳になり得る。彼らから勝ち点を獲得することは計算に入っていおらず、どんな形でもそれを手にできるならば歓迎すべきなのだから。
ヘタフェのプレースタイル論争は、レアル・マドリーを所属元とする久保の扱いが大部分を占めている。これについてボルダラスは、レアル・マドリー戦前に一つの見解を示した。彼をスタメンで起用し続けない理由は、フィジカルにあるのだという。
「彼はフィジカルのレベルを引き上げなくてはならない。本人もそれを理解しているよ。彼には凄まじい選手になれる才能があるが、それだけが欠けているんだ。フィジカルを改善するために懸命に働く必要がある。現代フットボールのプレースピードはとても速く、接触プレーも多いのだから。技術的には、レアル・マドリーが大きな期待を寄せるだけのクオリティーがある」
さて、そのボルダラスについても、クラブでの地位は安泰ではない。レアル・マドリー戦前に注目の発言したのは、彼だけではなかった。会長のアンヘル・トーレスが「監督のサイクルが続くのは3年だ(ボルダラスは4年目)。私たちはときに真理を受け入れることができず、時間通りに決断を下せない」と言い放ったのだ。ボルダラスには感謝をしながらも、できる限り早く出ていってほしい……。彼の発言には明確な意思が込められていた。
久保に取って重要なのは…
シーズン終盤戦に突入した現在、久保にとって重要なのは会長の意思ではなく、監督の意思となる。トーレス会長がボルダラスに別れを告げるとしても、それは今季終了後になるはず。そして、その今季終了までに収められる成果こそが何よりも大切なのだ。
レアル・マドリーではヴィニシウス・ジュニオールが自分の立ち位置を確立しつつある。そのフィジカルは、まるで竜巻だ。その一方でヴィニシウスよりも効果的なプレーを見せながらも、どこか脆弱さを感じさせるロドリゴは、この時期になって存在感を失いつつある。
彼らブラジルの若手2選手は、久保が同クラブに戻るために競うべき直接的なライバルたちだ。また日本人は彼らのほか、離脱者が続出するトップチームを埋め合わせている下部組織の選手たち(マルビン・パク、セルヒオ・アリバス……)とも顔を突き合わせることになる。彼らの敵としてピッチに立つ時には、自分がどれだけ価値ある存在なのかを示さなくてはならない。熾烈なサバイバルを生き抜いて、絶対的勝者の選手となる……。それが"ヒュドラ"たるレアル・マドリーの選手の宿命だ。
レアル・マドリーとの一戦は、コリセウムで毎シーズン行われている試合の中でも最も特別なものだ。白いチームは今回、素晴らしい時期にいながらも、フィジカルが激しく消耗している極限状態でスタジアムを訪れることになる。
「プレーリズムだ!」
彼らとの試合を前に、ボルダラスが練習中に何度も叫んでいた言葉だった。ヘタフェ指揮官はこちらが激しいプレーリズムとフィジカルで上回れば、サプライズを起こせると睨んでいる。
ヘタフェは今季、コリセウムでバルセロナに勝利し、アトレティコ・デ・マドリーとは引き分けている。そのため難しいことではあるものの、レアル・マドリー相手に良い結果を収めても、奇跡の域には入らないだろう。その奇跡まではいかない偉業に、久保が絡んでくれることを期待したい。
文/ホセ・アントニオ・デ・ラ・ロサ、スペイン『アス』紙ヘタフェ番
翻訳= 江間慎一郎
1983年生まれ。東京出身。携帯サッカーサイトの編集職を務めた後にフリーのサッカージャーナリスト・翻訳家となり、スペインのマドリードを拠点に活動する。 寄稿する媒体は「GOAL」「フットボール批評」「フットボールチャンネル」「スポニチ」「Number」など。文学的アプローチを特徴とする独創性が際立つ記事を執筆、翻訳している。
ラ・リーガ日程
第33節 4/19(月)4:00 ヘタフェ vs レアル・マドリード
レンタルで武者修行中の久保建英にとって、保有元であるレアル・マドリードとの一戦は自身の価値をアピールする絶好機。今季はビジャレアルとヘタフェでリーグ戦26試合に出場も1アシストのみと説得力のある数字を残せておらず、この試合は目に見える結果にこだわりたい。
開催日 | キックオフ (日本時間) | 試合 |
---|---|---|
4/18(日) | 21:00 | オサスナ vs エルチェ |
4/18(日) | 21:00 | ソシエダ vs セビージャ |
4/18(日) | 23:15 | アラベス vs ウエスカ |
4/18(日) | 23:15 | アトレティコ vs エイバル |
4/19(月) | 1:30 | ベティス vs バレンシア |
4/19(月) | 1:30 | カディス vs セルタ |
4/19(月) | 4:00 | ヘタフェ vs レアル・マドリード |
4/19(月) | 4:00 | レバンテ vs ビジャレアル |
4/28(水) | 未定 | ビルバオ vs バジャドリード |
4/28(水) | 未定 | バルセロナ vs グラナダ |
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