【コラム】 攻撃不振に喘ぐヘタフェで久保建英が背負う期待と役割｜ ラ・リーガ

久保建英がヘタフェにやって来た。

ウナイ・エメリ率いるビジャレアルでは結果を出せなかった日本人MFは、レアル・マドリードと同じくスペイン首都に拠を構えるクラブで、本来の才能を示さなくてはならない。

何しろヘタフェは、彼のことを特別な存在、チームの中で最も優れた技術を有する選手と考えているのだから。アンヘル・トーレス会長とホセ・ボルダラス監督は、攻撃の手詰まりを解消するべく、何としてでも久保がほしかったのだ。

攻撃力改善へーー。高まる久保への期待

久保の到着は、もちろんサポーターに期待を生じさせている。まるで2016年クラブ・ワールドカップで、ゴールデンボールのクリスティアーノ・ロナウド、シルバーボールのルカ・モドリッチに次ぎ、ブロンズボールを受賞したばかりの柴崎岳がやってきたときのようだ。

しかしボルダラスが抱える期待の総量は、最後には失望に変わってしまったあの頃をはるかに凌駕しているのかもしれない。

というのも、現在のヘタフェは新型コロナウイルスの影響もあって満足な補強ができず、スペイン最高のチームたちと鎬を削るチームから、残留争いを巻き込まれるチームに変わってしまったのだ。だからこそ久保は、指揮官が待ち侘びていた希望を背負う存在なのである。

ボルダラスはおそらく、久保、またバルセロナからのレンタルで獲得したカルラス・アレニャーを生かすため、プレースタイルにテコを入れることになるだろう。ヘタフェは今季も、昨季から継続して両サイドハーフに本職サイドバックのアラン・ニョム、マルク・ククレジャを起用する4-4-2を使用しているが、今季はゴールが取れずに苦しんでいる。

ポストプレーもこなせた38歳ホルヘ・モリーナがグラナダ移籍で空けた穴は大きく、その代わりに900万ユーロもの移籍金をビジャレアルに支払って獲得したエネス・ウナルは現状コパで1得点のみと低調。ボルダラスは、ラ・リーガ16試合12得点というゴールが欠けている状況の改善を、久保とアレニャーの加入で目指すことになる。

久保は右サイド、あるいはトップ下での起用か

ヘタフェはこれからフィジカルの量を減らして、技術の量を増やすのだろう。システムについては、4-4-2から4-5-1に変更する可能性がある。ピッチ中央にはネマニャ・マクシモヴィッチ、マウロ・アランバリの壊し屋二人に加えてアレニャーを配し、右サイドハーフに久保、左にククレジャ、前線にストライカーを一人置く形だ。

また4-4-2では、久保を右だけでなくトップ下として使う可能性もあり得る。いずれにしても彼は、アレニャーを中心に行われるゲームメイクで、フィニッシュフェーズのカギを握らなくてはいけない。

マジョルカ時代にはアトレティコ・マドリード相手にその抜群のドリブルでチャンスを創出し続け、『マルカ』紙で「アトレティコにも久保のようなタレントがいたら」という記事も出たが、ビジャレアル時代ではなく、あの頃の輝きを放つ必要がある。

そう、ボルダラスが求めている久保は、レアル・マドリードに数えきれないくらいのオファーが殺到したビジャレアル加入前の久保、そこから順調に成長を遂げていく久保建英なのだ。ヘタフェは、もしそんな姿を見せてくれるならば、レンタルを来季まで延長することも視野に入れている（レアル・マドリードはまだEU圏外枠が空いておらず、競争も激しい）。

まあ、それはともかくとして、今、見据えなければならないのは今季のラ・リーガ後半戦、できるだけ早く残留を決めることだ。日本から生まれたフットボール界のトップ・オブ・トップにたどりつける逸材は、その期待と責任を背負い、さらなる成長を果たさなければならない。

文／フアンカル・ナバセラーダ、スペイン『マルカ』紙ヘタフェ番

翻訳＝ 江間慎一郎

1983年生まれ。東京出身。携帯サッカーサイトの編集職を務めた後にフリーのサッカージャーナリスト・翻訳家となり、スペインのマドリードを拠点に活動する。 寄稿する媒体は「GOAL」「フットボール批評」「フットボールチャンネル」「スポニチ」「Number」など。文学的アプローチを特徴とする独創性が際立つ記事を執筆、翻訳している。

順位表

※第17節終了時点。※第19節前倒し分も反映

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