実におもしろい──。
『ガリレオ』(東野圭吾氏著)の湯川学教授からいただいたわけではなく、正直な反応である。
以下はプレミアリーグ(2月22日現在)の得点ランキング10傑だ。
選手名 | 所属クラブ | |
---|---|---|
17得点 | モハメド・サラー | リヴァプール |
15得点 | ブルーノ・フェルナンデス | マンチェスター・ユナイテッド |
13得点 | ドミニック・カルヴァート=ルーウィン | エヴァートン |
ハリー・ケイン | トッテナム | |
ソン・フンミン | トッテナム | |
12得点 | パトリック・バンフォード | リーズ |
ジェイミー・ヴァーディ | レスター | |
11得点 | イルカイ・ギュンドアン | マンチェスター・シティ |
10得点 | オリー・ワトキンズ | アストンヴィラ |
カラム・ウィルソン | ニューカッスル |
サラーとB・フェルナンデスがコンスタントに得点を重ね、ソン・フンミンのカウンターは凄みを増している。ギュンドアンは13節以降の12試合で11ゴールを記録し、1月の月間MVPを獲得した。この男、ついに覚醒したのか!?
しかし、得点王争いで注目すべきは、トップ10にイングランド人ストライカーが6人も名を連ねていることだ。
23節のサウサンプトン戦でハムストリングを痛めたウィルソンは、3月下旬までの加療・安静を余儀なくされたが、不振のニューカッスルで孤軍奮闘。本拠セント・ジェームス・パークが立錐の余地もない状況であれば、サポーターの大歓声を浴びていたに違いない。
名監督との出会いによって
さて、筆者は早くから「ケインのバックアッパーとしてカルヴァート=ルーウィンをイングランド代表に」と推奨してきた。本家には及ばないものの、空中戦の強さとバランスにすぐれたポストワークは、国際舞台でも十分に通用すると考えていた。
そして今シーズン、キャリアハイの13ゴール。カルロ・アンチェロッティ監督との出会いで状況判断が格段の進歩を遂げ、無駄走りが非常に少なくなった。
スピードでケインを上まわり、ハメス・ロドリゲスやギルフィ・シグルズソン、リュカ・ディニュといったアシスト役にも恵まれているだけに、サラーとの4点差は射程圏内といって差し支えない。
名監督との出会いは、ヴァーディとバンフォードにも大きなプラスになった。
若いころのヴァーディーはピッチ上のボールを遮二無二追いかけていたが、昨シーズンからアタッキングサードにポイントを絞り、相手のボールホルダーを中央からサイドへ追い出すようにしている。ここに2列目、アンカー、サイドバックが密集してボールを奪い、ショートカウンター。ヴァーディの動きが、レスターの得意とするパターンの呼び水となっている。
ブレンダン・ロジャーズ監督は34歳になったヴァーディの体力面を考慮し、頻度より密度を求めたとでもいえばいいだろうか。このプランが幸いし、試合の最終盤でもヴァーディは元気はつらつと動いている。34歳。まだまだ健在だ。
また、バンフォードはマルセロ・ビエルサ監督の指導により、眠っていた才能が開花しつつある。ヴァーディとは異なり、豊富な運動量、細部にわたるポジショニングなど、少なからぬ守備的タスクを課せられながら、ここまで12ゴールは合格点だ。
チェルシーに所属していた当時は歴代の監督になぜか認められず、ローン移籍を繰り返していたが、バンフォードのポテンシャルは多くの関係者が認めるところだった。
「いま、俺がここにいるのはすべて監督のおかげ」
27歳にしてブレイクの予感漂うバンフォードも、出会いの大切さを痛感していた。
カルヴァート=ルーウィン、バンフォード、あるいは昨年夏にアストンヴィラがクラブ史上最高額の2800万ポンド(約39億円)で獲得し、その額面通りに働いているワトキンスの初戴冠か!?
いやいやヴァーディーが2年連続で、みずからが昨シーズンに樹立した史上最年長の得点王記録を塗り替えるのか、今シーズンのタイトル争いは非常に白熱している。
総合値で圧倒的に他を上まわる
ただ、やはり主役はこの男、ケインである。
足首の負傷などで万全の体調からはほど遠いものの、サラーに4点差の3位につけているのだからゴールスコアラーとしての底力は並大抵のレベルではない。
ましてトッテナムはディフェンシブなチームであり、リヴァプールやユナイテッドに比べると、チャンスの数が限られる。シュート総数268本は、降格圏でもがくフラムより26本も少ないリーグ13位だ。
それでもチャンスを確実にモノにし、なおかつ解任論が飛び出したジョゼ・モウリーニョ監督を、「100%信頼し、支持している」と公言するあたりには、キャプテンとしての責任感が漂っている。
2015-16シーズンから2年連続で得点王に輝いた後、17-18シーズンは30ゴールを挙げながらランク2位。その後2シーズンは度重なる負傷に唇を噛みはしたが、17ゴール、18ゴールと、センターフォワードとしての使命はつねにまっとうしてきた。
右足で左足で、ヘディングでも決められる。ストライカーとしての総合値で圧倒的に他を上まわる。
すべての現象に必ず理由があるように、近年の実績を踏まえてもケインの存在は見逃せない。4シーズンぶり3度目の得点王なるか!?
文・粕谷秀樹
1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。
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