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サッカー

【コラム】ラ・リーガ前半戦のベストイレブン | 2020-2021 | 吉田治良セレクト

【コラム】ラ・リーガ前半戦のベストイレブン | 2020-2021 | 吉田治良セレクト(C)Getty Images
【コラム】ラ・リーガは1月23日の第20節から後半戦突入。シーズンを折り返したこのタイミングで、スポーツライターの吉田治良氏が前半戦のベスト11を選出する。

近年、ラ・リーガのベストイレブン選考には“定型フォーマット”があった。

乱暴な言い方をすると、それはレアル・マドリードとバルセロナの「ビッグ2傾斜型」の選考だ。

例えば、CBに セルヒオ・ラモス ジェラール・ピケ 、中盤センターに トニ・クロース やセルヒオ・ブスケツといった具合に、まずは主要ポジションをビッグ2のメインキャストで固め、そこにシーズンを賑わせた旬のタレントや、得点ランキング上位のアタッカーを組み込んでいく。

そして最後に「 リオネル・メッシ 」という落款印(らっかんいん=書や絵画などに捺す印鑑のこと)を捺せば、なんとなく納得のベストイレブンが出来上がったものだ。

しかし、今シーズン前半戦は様相が異なる。

ビッグ2が足並みをそろえるように停滞。いずれも故障に苦しむS・ラモスとピケ(後者は右膝前十字靭帯損傷で長期離脱中)をはじめ、長く両チームの主軸を担ってきた「ベストイレブン常連組」のパフォーマンスが、総じてピリッとしなかったのだ。

現地時間1月23日現在、首位に立つのはアトレティコ・マドリード。これを4ポイント差で追うのが王者マドリーだが、しかし彼らの消化試合は2つも多い。そして、3位セビージャを挟んで暫定4位のバルセロナは、アトレティコより試合数が1つ多いにもかかわらず、すでに10ポイントもの大差を付けられている。

百戦錬磨の点取り屋、 ルイス・スアレス の獲得と、3バックシステム(3-4-2-1)の導入によって、アトレティコの攻守のバランスが著しく向上したのは確かだ。ただし、その強さを際立たせているのは、権勢を誇ってきたビッグ2のもたつきに他ならない。

とりわけ心配なのが、1月20日のコパ・デル・レイ3回戦で3部のアルコジャーノに敗れ、ジネディーヌ・ジダン監督の解任論も囁かれるマドリーだ。批判はあるにせよ、ロナルド・クーマン新監督のもと、有望な若手が台頭するバルセロナと比べて、チームの新陳代謝の遅れが深刻なのだ。

こうした背景を踏まえて選考した結果、2020-21シーズンのラ・リーガ前半戦ベストイレブン(システムは4-3-3を採用)には、近年のフォーマットを打破する、新鮮な顔ぶれが多く並んだ。

オブラク選出は論を俟たない

GK: ヤン・オブラク (アトレティコ・マドリード)

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いきなり新鮮味に欠ける人選となったが、ここまでラ・リーガ最少の7失点、最多11回のクリーンシートというオブラクの圧倒的な数字を見れば、論を俟たないはずだ。

怪我で出遅れたマルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ)、昨シーズンにサモーラ賞(最少失点GK)を獲得したティボー・クルトワ(マドリー)という強力なライバルを、セービングの安定感で大きく上回る。

3バックへの移行にも難なく対応。ディエゴ・シメオネ監督の守備戦術に不可欠な大黒柱であり続けている。

メンディの先発時はマドリー無敗

DF:ジュール・クンデ (セビージャ)
DF:パウ・トーレス (ビジャレアル)
DF:セルジーニョ・デスト(バルセロナ)
DF:フェルラン・メンディ(レアル・マドリード)

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S・ラモスとピケの重鎮2人を選外としたCBには、圧巻の跳躍力で不動の地位を築いたクンデと、同じくエアバトルに強く、ポジショニングも巧みなパウ・トーレスを選出。とりわけスペイン代表にも定着した後者は、いまやS・ラモスの後継者としてマドリー行きが噂されるまでの存在となった。

次点はパウ・トーレスと同じ左利きで、フィードに定評のあるアトレティコの マリオ・エルモーソ 。3バック導入の恩恵を受けた1人でもある。

難しかったのがSBの人選で、まず“本命” ダニエル・カルバハル (マドリー)が故障に悩まされた右サイドには、入団1年目からバルサ・スタイルに難なくフィットした20歳のデストを抜擢した。「メッシの背後」を守るというタフな役回りをそつなくこなしている。

ただ、第二の春を謳歌する35歳の ヘスス・ナバス (セビージャ)、高精度クロスを連発した キーラン・トリッピアー (アトレティコ)も遜色がない。

左はバレンシアの ホセ・ルイス・ガヤ も捨てがたかったが、ここはマドリーから唯一の選出となるメンディを推したい。左サイドからの組み立てが多いチームで、攻撃面での貢献度が著しくアップ。自慢の守備力も健在で、彼がスタメン出場したリーグ戦はここまで無敗(10勝3分け)をキープする。

「前半戦のMVP」とも呼べるインパクトを放った18歳

MF: コケ (アトレティコ・マドリード)
MF: ジョアン・ジョルダン (セビージャ)
MF: ペドリ (バルセロナ

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3-4-2-1システムの導入により、サイドではなく中盤センターで司令塔として振る舞える機会が増えたコケは、チーム内での存在感が見違えるほど高まった。昨年11月には、2年ぶりにスペイン代表復帰も果たしている。

コケの前に位置するインサイドハーフには、右にジョルダン、左にペドリを選出。技術力、戦術理解力、インテンシティの三拍子がそろうジョルダンは、 イヴァン・ラキティッチ 加入の影響を微塵も感じさせず、攻守にハイレベルなプレーを披露している。

一方、「前半戦のMVP」とも呼べるインパクトを放ったのが、弱冠18歳のボールプレーヤー、ペドリ。高度なテクニックもさることながら、そのサッカーIQの高さと何事にも動じないメンタルの強さは特筆に値する。ゴール前の密集地帯をメッシとの細かいパス交換で攻略していくさまは、かつての アンドレス・イニエスタ を彷彿とさせた。

インサイドハーフで次点を挙げるとすれば、悩めるマドリーにあっても安定感を失わないクロースか。

モレーノやジョレンテとはやはり格が違う

FW: ミケル・オヤルサバル (レアル・ソシエダ)
FW:ルイス・スアレス(アトレティコ・マドリード)
FW:リオネル・メッシ(バルセロナ)

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3トップの左は、“神童” アンス・ファティ (バルセロナ)が健在なら文句なしだったが、11月上旬に左膝半月板を損傷し、現在も離脱中だ。

ただ、いわゆる“偽のウイング”として5節から5試合連続ゴールを記録するなど、序盤戦の活躍度で言えば、オヤルサバルも負けてはいない。彼が怪我で欠場した12月の5試合でチームが1勝もできなかった(2分け3敗)事実からも、その重要性が分かるはずだ。

CFには、ここまでメッシと並ぶリーグ最多タイの11ゴールと、バルセロナからアトレティコに移籍しても、相変わらずの決定力を見せつけているルイス・スアレス。周りを活かす術にも長けた熟練のフィニッシャーは、カウンター一本槍だったチームの攻撃の引き出しを劇的に増やしてみせた。 ジョアン・フェリックス トマ・ルマル など、スアレスの加入によって息を吹き返したアトレティコのアタッカーも少なくない。

そしてFWの最後の1人には、近年の“定型フォーマット”に絶対不可欠なメッシを選んだ。

3トップの右には、チャンスメイクからフィニッシュワークまで、難易度の高いプレーをさりげなくやってのける ジェラール・モレ―ノ (ビジャレアル)や、シメオネによって中盤からFWにコンバートされてブレイクしたアトレティコの マルコス・ジョレンテ など、他にも候補はいるが、やはり彼らとは格が違う。

確かに、開幕前の移籍騒動を引きずり、序盤戦は若返りが進むチームで浮いた存在になっていたメッシだが、相性抜群のペドリの台頭とともにゴールと笑顔を取り戻した。ラ・リーガでは11月以降の11試合で10ゴールと、右肩上がりで調子を上げている。

徐々にではあるが、確実にメインキャストの代替わりが進行中のラ・リーガ。ただそれでも、依然としてベストイレブンからメッシを外せば、画竜点睛を欠く印象が否めないのだ。

文・吉田治良

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

直近のラ・リーガ日程

第20節

開催日キックオフ
(日本時間)
試合スコア
1/23(土)5:00レバンテ vs バジャドリード2 - 2
1/23(土)22:00ウエスカ vs ビジャレアル0 - 0
1/24(日)0:15セビージャ vs カディス3 - 0
1/24(日)2:30ソシエダ vs ベティス 
1/24(日)5:00アラベス vs レアル・マドリード 
1/24(日)22:00オサスナ vs グラナダ 
1/25(月)0:15エルチェ vs バルセロナ 
1/25(月)2:30セルタ vs エイバル 
1/25(月)5:00アトレティコ vs バレンシア 
1/26(火)5:00ビルバオ vs ヘタフェ 

第21節

開催日キックオフ
(日本時間)
試合
1/30(土)5:00バジャドリード vs ウエスカ
1/30(土)22:00エイバル vs セビージャ
1/31(日)0:15レアル・マドリード vs レバンテ
1/31(日)2:30バレンシア vs エルチェ
1/31(日)5:00ビジャレアル vs ソシエダ
1/31(日)22:00ヘタフェ vs アラベス
2/1(月)0:15カディス vs アトレティコ
2/1(月)2:30グラナダ vs セルタ
2/1(月)5:00バルセロナ vs ビルバオ
2/2(火)5:00ベティス vs オサスナ

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