マンチェスター・シティの2年ぶりとなる優勝で幕を閉じた2020-21シーズンのプレミアリーグから、独断と偏見でベストイレブンを選出。単に活躍した選手ではなく、チーム貢献度に加えて「印象的な数字」を残した選手から11名を選ぶことにした。
89年以来の記者協会MVPに輝く
コロナ禍での開催となった今季は、全試合にフル出場した選手が極めて少なかった。GKも例年の半数ほどの4名だけ。その中で印象的な活躍を見せたのがアストンヴィラのエミリアーノ・マルティネスだ。
ハイボール対応やシュートストップなど全てが安定しており、リーグ1位のセーブ率を誇った。古巣アーセナルとの試合では2戦ともシャットアウト勝利。データ会社『Opta』によると、移籍後に前所属チーム相手に2戦連続クリーンシートを達成したのは史上3人目だという。
筆者は 昨季のベストイレブン でもアーセナルでわずか9試合出場の同選手を選んでおり、そんな彼が今季は全試合にフル出場したのだから選ばずにはいられない!
センターバックはウェズレイ・フォファナ(レスター)、ルイス・ダンク(ブライトン)、アントニオ・リュディガー(チェルシー)など好プレーヤーが豊作だったが、今季はシティの2人で決まりだ。
リーグ制覇の立役者となったポルトガル代表のルベン・ディアスは、DFとして1989年のスティーヴ・ニコル(元リヴァプール)以来となる記者協会の年間最優秀選手賞に選ばれた。彼が出場した32試合は1試合平均0.65失点で、彼が不在の6試合は平均1.8失点だった!
ルベン・ディアスとコンビを組むのはジョン・ストーンズだ。彼の場合は完全にルベン・ディアスの“バーター”選出である。それでも今季は頼れる相棒を手に入れたことで、自信を持ってDFラインでボールを保持してリーグ1位のパス成功率を誇った。
リーズのダラスが11人いたら…
右サイドバックはリーズのスチュアート・ダラスだ。彼を見ているとジェイミー・キャラガーを思い出す。現役時代に「夢はキャラガー11人のチーム」とチャントを歌われ、そんなタイトルの本まで出版されたが、リヴァプールのそのレジェンドは生粋のDFであり、11人集めても試合には勝てないだろう。しかしダラスに関しては、彼が11人いたらリーグ上位を狙える気がする。
今季のダラスは、マルセロ・ビエルサ監督の元で両サイドバック、サイドMF、セントラルMF、トップ下と様々なポジションをこなし、献身的なプレーと正確なキック技術を披露した。
退場者を出した4月のシティ戦では、2得点でチームの勝利に貢献。後半追加タイムには長い距離を走って、敵DFと競り合いながらネットを揺らした。プレミアリーグで8ゴールを記録したのは、北アイルランドの選手として12年ぶりの快挙だという。
左サイドバックはマンチェスター・ユナイテッドのルーク・ショーだ。高い身体能力が魅力で、近年は好守においてプレーに余裕が出てきた。
今季は2年ぶりに同僚が選ぶユナイテッドの年間最優秀選手に選ばれており、クリスティアーノ・ロナウド、アントニオ・バレンシア、ダビド・デ・ヘアに次いで史上4人目の複数回受賞となった。
"陸・空の覇者"となったソーチェク
中盤は3枚。1人目はシティのMFイルカイ・ギュンドアンだ。点取り屋として覚醒し、12月中旬からの2ヶ月間はリーグ戦12試合で11ゴールという無双状態にあった。自身初のシーズン2桁ゴールを達成してチーム得点王(プレミア13点)にも輝いた。
無論、彼は得点力だけの選手ではない。中盤の狭いスペースでの軽やかなターンと状況判断は、今季のプレミアリーグで「子供たちに見せたいNo.1選手」だったと思う。
2人目は、マンチェスター・Uの“王様”であるブルーノ・フェルナンデスだ。ケヴィン・デ・ブライネ(マンチェスター・C)やジャック・グリーリッシュ(アストンヴィラ)も目を見張る活躍を見せたが、圧倒的な数字という点ではポルトガルのプレーメーカーに軍配が上がる。
ブルーノ・フェルナンデスは今季プレミアリーグで18ゴール12アシスト。全公式戦で見ると28ゴールを決めており、2009-10シーズンのフランク・ランパードの27ゴールを抜いて、プレミアリーグ在籍MFのシーズン最多ゴール記録を更新した。
さらに彼は昨年1月に加入して以降、今季の最終節に欠場するまでリーグ戦51試合に連続出場して26ゴール19アシスト。単純に凄くない?
中盤の3人目は、6位ウェストハムの大躍進の原動力となったチェコ代表のMFトマーシュ・ソーチェクだ。このコロナ禍で、今季全試合にフル出場したフィールドプレーヤーはわずかに3名だが、そのうちの一人が彼だ。
中盤でのボール奪取能力に加え、ゴール前ではワンタッチシュートの巧さも見せつけて今季リーグ戦10ゴール。さらに192㎝の長身を活かしてリーグ1位の空中戦勝利数を記録し、走行距離もリーグ1位という"陸・空の覇者"となった。
「全曜日でゴール」の珍記録
次に3トップだが、23ゴールでトップスコアラーに輝いたFWハリー・ケイン(トッテナム)は外せない。プレミアリーグ通算3度目の得点王は、ティエリ・アンリ(4回)、アラン・シアラー(3回)に次いで史上3人目の快挙だ。
さらに今季は、少し下がった位置からラストパスも繰り出してリーグ最多の14アシスト。得点王とアシスト王の同時戴冠はアンディ・コール(93-94)、ジミー・フロイト・ハッセルバインク(98-99)以来で、こちらも史上3人目となる快挙だった。
そのケインのパスを引き出した韓国代表FWソン・フンミンも選ぶべきだろう。トップスピードで裏に抜け出して迷いなく両足を振り抜く得点シーンは爽快だった。キャリアハイの17ゴールは見事だが、それ以上に際立った数字がある。今季プレミアで最もゴール期待値(PKを除く)を上回ったのが彼なのだ。ゴール期待値「8.9」のところ、ソン・フンミンは「7.1」も上回る16ゴール(PKを除く)を叩き出したのだ。
12月のノースロンドン・ダービーではファーポストに完璧なロングシュートを叩き込むなど、何度も難しいシュートを決めて見せた。ケインの14アシストのうち、実に9本がソン・フンミンのゴールであり、彼がケインに二冠を獲らせたと言っても過言ではない。
最後の1人は、フィル・フォーデン(マンチェスター・C)、パトリック・バンフォード(リーズ)でも良かったが“面白い記録”を打ち立てたということで、レスターのFWケレチ・イヘアナチョを選出しよう。
このナイジェリア代表は3月以降の12試合で11ゴールを叩き出し、エースであるジェイミー・ヴァーディの負担を軽減させ、プレミアリーグでキャリア初となる2桁ゴール(12点)をマークした。
そしてコロナ禍の異例なシーズンならではの面白い記録を生み出してくれた。1シーズンのうちに月曜日から日曜日までの「全ての曜日でゴール」を決めるプレミアリーグ史上初の快挙を成し遂げたのだ。今季のような“スクランブル”日程でない限り、木曜日開催は珍しいため、この記録は当分破られないだろう。
以上が私的ベストイレブンだが、こうして見るとバランスの取れた悪くないチームに思える。少なくとも「ダラス11人」よりかは強いはずだ!
田島氏選出のベストイレブン
- FW:ソン・フンミン、ケイン、イヘアナチョ
- MF:ギュンドアン、ソーチェク、B・フェルナンデス
- DF:ショー、R・ディアス、ストーンズ、ダラス
- GK:E・マルティネス
文・田島 大
「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まった『フットメディア』所属。英国在住歴を持つプレミアリーグのエキスパート。
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