インターナショナルウィークによる中断期間を終え、ミランの指揮官ステファノ・ピオリはこれから、極めて重要な強行軍を開始しなければならない。ところが多くの主力メンバーが招集から外れる見込みとなっており、まずは離脱者の確認から取り掛からなければならない。
かねてより離脱していたアレッサンドロ・フロレンツィやジュニオール・メッシアス、ズラタン・イブラヒモヴィッチやティエムエ・バカヨコ、ラデ・クルニッチ、ダヴィデ・カラブリア、ダニエル・マルディーニに加えて、さらに重要な主力の離脱が相次いだ。新型コロナウイルスに陽性反応を示したテオ・エルナンデスやブラヒム・ディアス、さらに2人のGKが戦列を離れた。
第3GKのアレッサンドロ・プリッツァーリはひざの手術のために少なくとも12月半ばまでの欠場が予想されているが、今シーズンのセリエAで最も素晴らしいパフォーマンスを見せていたフランス人正GKマイク・メニャンも、思いがけない災難に見舞われた。左手首の手術を余儀なくされ、2022年初めまで離脱する見込みとなった。
こうしてやむを得ず、タタルシャヌがミラン指揮官の唯一のオプションとなった。クラブはその裏で、無所属のアントニオ・ミランテと契約し、さらなる対策も講じている。
グローブの準備を着々と進める“タタ”
1985年2月9日生まれで、数カ月後には36歳の誕生日を迎えるチプリアン・タタルシャヌ。そんな彼は今、セリエAで最も輝かしいサプライズだったはずの同僚の代役を務めることを求められている。チャンピオンズリーグ(CL)グループステージの残り4試合を含む少なくとも16試合で、ミランのゴールマウスを守ることになるかもしれない。
こうして“タタ”は突然、大急ぎでグローブをはめることになった。それもミランにとって最も重要なこの3カ月、チームの今シーズンの目標を決定づけることになるこの時期に。ヨーロッパのカップ戦で61試合もの出場経験を持ち、ルーマニア代表として70試合以上に出場したGKにとって、思いがけない先発出場のチャンスとなった。
ミラノ中心部を離れた一軒家で家族とともに暮らす彼が好むように、近年はスポットライトから遠く離れた場所で過ごしてきた。だが今こそ、責任ある任務を背負わなければならない。フィオレンティーナでパウロ・ソウザが不変の信頼を寄せていたあの頃の彼に戻るべき時がやって来た。
所属クラブ | リーグ戦出場数 | 失点 |
グロリア・ビストリツァ | 45 | 57 |
FCステアウア・ブカレスト | 133 | 98 |
フィオレンティーナ | 81 | 101 |
ナント | 64 | 68 |
リヨン | 2 | 2 |
ミラン | 1 | 3 |
ミランでのセリエA出場はわずか1試合
ルーマニア出身の“スパイダーマン”は、ミランにおいてリーグ戦での出場はわずか1試合にとどまっている。その唯一の試合は、2020年10月のローマ戦だが、悪い意味での主役となってしまった。
タタルシャヌにとって呪われた月曜日の夜、試合開始からわずか14分でミスを犯してしまう。コーナーキックの場面で飛び出しが空振りとなり、エディン・ジェコにローマの同点弾の絶好のチャンスを与えてしまった。その後もジョルダン・ヴェレトゥにPKを沈められ、試合終了数分前には、マラシュ・クンブラに追加点を許して2点を献上した。その結果、試合は3-3で引き分け、開幕戦から続いていたミランの連勝は「4」で途絶えた。
なお、興味深いことに、この時、ローマのゴールマウスを守っていたのは、現在、ミランに加入してタタルシャヌの同僚となったミランテだった。
ミランでのカップ戦におけるパフォーマンス
タタルシャヌは昨シーズン、ジャンルイジ・ドンナルンマの代役をカップ戦において4回務めている。ヨーロッパリーグ(EL)グループステージのスパルタ・プラハ戦では、2度の対戦で1-0および3-0と、ともにクリーンシートを記録。コッパ・イタリアでは、ラウンド16のトリノ戦に続いて準々決勝のインテル戦に出場したが、1-2と逆転負けで敗退に終わった。
ルーマニア人GKがミラノにおいて、最も素晴らしいパフォーマンスを見せたのはトリノ戦だろう。90分間をスコアレスで終えると、延長戦を経てPK戦へ突入。まさに“タタ”がトマス・リンコンのシュートを防ぎ、ミランの勝利に貢献した。
FCステアウア・ブカレストでCLデビュー
タタルシャヌは、CLにおいてもミランのゴールマウスを託されるかもしれない。ロッソネーリは日本時間の10月20日、ポルトガルへと渡り、ポルトとのファーストレグに臨むほか、11月4日に行われる2度目の対戦では、ホームで迎え撃つ。
だがルーマニア人GKにとって、CLは初めての大会ではない。デビュー戦は、FCSBでプレーしていた2013年9月28日のシャルケ戦(0-3)に遡る。この時のグループEにおいて、チェルシーやバーゼルと同居し、3分3敗と最下位で戦いを終えた。タタルシャヌが唯一、無失点に抑えたのは、スコアレスドローとなったシャルケとの2戦目だった。
出番がやってくる
今、頼りにできるのはタタルシャヌしかいない。チーム全体に力と勇気を与えることのできる孤高の背番号1番を背負い、再び大きな夢を抱くべき時が来た。
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