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【連載】戦術トレンド考察「カテナチオは遠い過去の話」| 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 | 欧州・海外サッカー

【連載】戦術トレンド考察「カテナチオは遠い過去の話」| 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 | 欧州・海外サッカー(C)Getty Images
【インタビュー】元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニ氏がセリエAを探究する当連載。第9回はイタリアサッカーの戦術トレンドを考察する。ザックが「カテナチオは遠い過去の話」と断言する理由は?

サッカーは時代時代によって「トレンド」が変わるもの。イタリアサッカーも例外ではありません。今回はセリエAの戦術トレンドを考察していきましょう。

カルチョ=カテナチオ(カテナッチョ)。そのイメージを持っている方は、まだ一定数いるのではないでしょうか。

堅守・速攻を重視した守備的なサッカーを指す言葉で、今ではどちらかというとネガティブな印象が強い戦術ですね。

伝統的に堅い守備を誇るイタリアサッカーは、長らくその「カテナチオ」という代名詞で一括りされることが多かったように思います。

ただ、それも遠い過去の話。今のスタイルはまったく異なります。分かりやすい数字を見てみましょう。

2021年に入り、第15~19節の5節分を消化したセリエA。その期間の計50試合で生まれたゴール数はどれくらいだったと思いますか?

答えは147ゴールです。1試合平均は2.94。ほぼ3ゴールと言える数字です。ロースコアのイメージが強い「カテナチオ」とは明らかに一線を画す結果ですよね。

次に、昨シーズンの得点ランキングに目を移してみます。

トップは ラツィオ チーロ・インモービレ 。30歳のこのイタリア代表FWは、37試合に出場して36ゴールを決めました。

2021-01-15-immobile-lazio

続く2位は31得点の クリスティアーノ・ロナウド 。高い決定力を発揮し、 ユヴェントス をリーグ9連覇へと導いています。

では、彼ら2人の数字は過去のデータと比較してどうか。

例えば、現在ウクライナ代表を率いる往年の名ストライカー、アンドリー・シェフチェンコ。彼は ミラン で2000ー01、03ー04シーズンと二度の得点王に輝いていますが、いずれも24得点での受賞でした。

14~15年前と比べ、明らかに得点のアベレージは上がっていますね。1試合の平均ゴール数も含め、各チームのゴールへの意識がより高まっているひとつの裏付けとなるでしょう。

見応えのあるデュエルが増加

試合になると、さらに分かりやすく、以前と違うプレースタイルの変化が見てとれます。

まずロングボールを前線に蹴り込むだけのチームがほとんどなくなりました。ディフェンスラインから攻撃を組み立てるチームが大半です。

当然、ディフェンダーの意識も大きく変わりますよね。守備の意識が希薄になったとまでは言いませんが、攻撃の組み立てにより注力するようになりました。

ボールを繋ぐ意識がチーム全体で高まったことにより、各選手の配置にも大きな変移がありました。

例えば、センターバックの選手がボールを保持していたとします。以前ならリスクヘッジで、ボールホルダーより低い位置に陣取る選手が散見されたたものです。

ただ、今ではそういったディフェンシブなポジショニングはほとんど見られなくなりました。

そして、チーム全体としてピッチをより広く使う配置が採用されるように。そうなると、より広いスペースが生まれますよね。

逆にボールを保持していないチームからすれば、前線からのプレスでビッグチャンスを作れる可能性が広がったことにもなります。

前線からプレスが効果を発揮し、ボールを奪うことができれば、それこそ少ない手数でゴール前に一気に迫ることが可能となったわけです。

中盤に関しても、守備的なサッカーが主流だった時代には"暗黙のルール"が存在していました。

MFひとりがプレッシングに行った場合、その他のMFはカバーリングで位置を下げる。これがいわば不文律でした。

その暗黙のルールも、マンマーク戦術を採用するチームが増えたことで過去の産物になりつつあります。1対1という個人戦の側面が強いマンマーク戦術ですから、当然、よりリスクは伴います。

一方で、ピッチ上で見応えのあるデュエル(対決)が増え、スペクタクルな試合が増える結果にも繋がりました。

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マンマーク戦術の先駆けとなったのは、ジャンピエロ・ガスペリーニ率いる アタランタ 。それにイヴァン・ユリッチが指揮を執る エラス・ヴェローナ が追随し、今ではミランも取り入れています。

つまり、リスクを負ってでも攻撃に転じようというチームが増えているのが今のセリエAです。

トレンドを体現する代表格はマッケニー

セリエAは他リーグに比べ、より戦術的なリーグであることに今も変わりはありません。

ただ、攻撃的なサッカーを志向するチームが増えたことで、以前より戦術の重要性が少し薄れつつあるのもまた確かでしょう。

われわれイタリア人指揮官はこれまで、恐ろしいほど戦術に固執してきました。可能な限りのシステムを試してきましたからね。

そのシステム論に、今はより幅広い解釈が加わっている印象です。以前は主にディフェンシブな解釈で成り立っていたシステム論。今はそこに攻撃的なエッセンスの「戦略」がプラスされました。

今のイタリアサッカーは、攻撃サッカーを目指す中で、「戦術」と「戦略」のバランスが良い具合に図れていると言っていいでしょう。

ユヴェントスのMF ウェストン・マッケニー (左)などは、今のトレンドを体現するまさに代表的な選手。

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アメリカ代表のボランチですが、その動きはまさに神出鬼没。右サイドへ、左サイドへとピッチを縦横無尽に駆け回り、ときにFWのクリスティアーノより前のポジションにいることも珍しくありません。

昔のようにガチガチに戦術に縛られることはありませんね。22歳とまだ若いマッケニーにとってシステムは、あくまでも数字の並びに過ぎないんです。

トレンドの変化によって、試合に向けた準備にも変遷がありました。

今の選手はみな強度が高く、それでいて質の高いプレーを求められます。90分間、100%の力で走りきる体力が必須です。その中でミスを出来るだけ減らし、ダイレクト、1タッチ以内でプレーする。

高いプレースピードの中でクオリティを求められる練習メニューも多いようです。

今思えば、私が日本代表を率いると決まったとき、3-4-3があたかも代名詞のように語られることが多かったと思います。数字だけが一人歩きする状況に、実は大きな違和感を覚えていました。

なぜなら、私が3-4-3を用いたのは、 ウディネーゼ とミランでのみ。日本代表でも結局は採用しませんでしたから。

サッカーはその時代、時代のトレンドに敏感でなければいけません。とくにわれわれ監督は、流れの変化に即対応する適応力が求められます。

もし古いサッカーを展開しようものなら、すぐに時代遅れのレッテルを貼られてしまいます。

指揮官は、与えられた戦力にもっとも適したシステムを採用することこそが重要。戦術には時代によって様々な変化が加わります。

サッカーは実に奥深いスポーツです。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

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