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【連載】ジェノアとフィオレンティーナで起きた監督交代劇の真相 | 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 | 欧州・海外サッカー

【連載】ジェノアとフィオレンティーナで起きた監督交代劇の真相 | 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 | 欧州・海外サッカー(C)Getty Images
【インタビュー】元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニ氏が2020-21シーズンのセリエAを探究する当連載。第6回はそれぞれ12月、11月にジェノアとフィオレンティーナで起きた監督交代劇の真相に迫る。どうやら成績不振だけが理由ではなさそうだ。

ジェノアのマランは〝短気の被害者〟になった

世界に数多く存在するリーグの中でも、シーズン中に監督の解任劇が頻繁に起こるのは、セリエAぐらいではないでしょうか。

今に始まったことではないので、特筆すべきことでもありませんが、今シーズンも例の如く、14節を終えた現時点ですでに2チームが監督の交代を決断しました。

2チームのうち直近が、ジェノア。12月20日、セリエBからの昇格組であるベネヴェントに0-2で敗れ、今シーズンから指揮を執っていたロランド・マランが任務を解かれました。

新監督として招へいされたのはダヴィデ・バッラルディーニ。新監督と言っても、ジェノア監督就任はなんと4回目となります。

ただでさえ監督解任が多いと評判のセリエA。今回の件でさらにその奇異さを世に印象づける形となったのではないでしょうか。

決断を下したのは、もちろん会長であるエンリコ・プレッツィオージです。偏屈な性格で知られる彼は、頭に血が上りやすいことでも有名。実際、衝動的な行動が目につきます。

プレッツィオージにとって監督交代は、言ってしまえばそれこそシャツを着替えるようなもの。マランもまた彼の短気の被害者となってしまいました。

この交代劇により、プレッツィオージは昨シーズン指揮を執っていたダヴィデ・ニコラ、そしてマラン、バッラルディーニと、3人に給料を払っていくことになります(編集部注:解任のニコラとマランは従来の契約満了までサラリーが保証される)。

彼自身の懐が痛むだけですから、他人がとやかく口を挟む問題ではありません。コロナ禍でどのクラブも経済的に余裕がない中ですが、彼には財力があるということでしょう。

成績だけを見れば、マラン(写真)の解任は致し方なかった面もあります。

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監督交代後のジェノアは12月23日のスペツィア戦で2-1の勝利。バッラルディーニ新監督の初陣を白星で飾り、マラン体制下で1勝4分け8敗の最下位に沈んでいたチームは18位に浮上しました。

マランには同情すべき点もあります。まず9月27日の2節ナポリ戦後に、選手やスタッフのコロナウイルス感染が相次いで発覚しました。

その数、なんと17人。その時点で起用可能な選手はプリマヴェーラ(U-19)の選手を含む13人のみ。どんな優秀な監督であってもお手上げだったでしょう。

マランは今シーズン始めに就任したばかりでした。チームを作り上げていく初期段階でのコロナ被害。その後のプラン変更を余儀なくされたことは想像に難くありません。

私だったら結果だけを見て判断を下さない

選手に目を向ければ、コロナ禍による中断があった昨シーズンを終え、ほとんど休みがない状態で新シーズンを迎えたという事実もあります。

シーズンに突入してからは中3日のスパンでの連戦が続いています。

例えばこれが毎シーズン、UEFAチャンピオンズリーグに出場しているユヴェントスの選手なら問題はないでしょう。週2試合のペースにも慣れています。

一方、ジェノアは欧州カップ戦に出場できるような強豪ではありません。週に2試合をこなすリズムは、選手たちはまったくの未経験。肉体的にも精神的にもかなりきついはず。

ピッチ外でのこういった要素も踏まえれば、マランにとっては気の毒な境遇が重なったと言えます。

個人的にはプレッツィオージは少し決断を早まったとも思っています。

昨シーズン終盤もそうでしたが、今シーズンもコロナ禍の影響によって今までにない特殊なシーズン。試合は無観客で開催され、かつてない過密日程を強いられています。

私がもしクラブの会長だったら、そういった特殊な要素も加味し、監督の処遇は結果だけを見て判断を下すことはしないでしょう。

今シーズンに限って言えば、監督交代は最終手段。と考えると、マランの解任は、選手との不協和音など成績不振以外の理由があったのではないかと想像しています。

会長がいくら短気なプレッツィオージとはいえ、そのような理由がないと私の中では説明がつきません。

ジェノアのサポーターは、イタリアの中でもかなり熱狂的として知られています。もしかしたら、プレッツィオージには彼らの「どうにかしろ!」といったような声がプレッシャーになっていたのかもしれませんね。

フィオレンティーナの会長には淡い思惑が

サポーターからの重圧で言えば、今シーズン、最初の監督交代を決断したフィオレンティーナも同じです。

ジェノアの本拠地であるジェノバ同様、フィレンツェもサポーターの目がとても厳しい土地柄で有名。それは試合が無観客で開催されようが、何ら変わりはありません。

結果が残せなければ容赦なく叩かれます。最悪の場合、選手は街を歩くことさえ困難な状況に陥るほどです。

フィオレンティーナは昨シーズン途中に就任したジュゼッペ・イアキーニが指揮を執っていました。

解任されたのは、スコアレスドローに終わった11月7日の7節パルマ戦後。後任は、11シーズンぶりのチーム帰還となる元イタリア代表監督のチェザレ・プランデッリに託されました。

この交代劇も個人的には違和感を覚えました。確かにイアキーニは7試合で2勝2分け3敗と、期待されたような結果を残せませんでした。

ただ、先ほども言ったように、今シーズンは特殊なシーズン。金銭的な側面からも、どのクラブの会長も監督交代には熟考を重ねるはずです。

フィオレンティーナのケースも、私個人としては成績以外での理由が大きかったような気がしています。

イアキーニはフィレンツェであまり愛されていなかった、と噂を耳にしました。それが真実なら、不振時におけることの顛末は想像がつきますよね。

また、ロッコ・コミッソ会長もサポーターとの関係が悪化していたと聞いています。

プランデッリは2005-2006シーズンから5季にわたりフィオレンティーナを指揮し、チャンピオンズリーグでも快進撃を見せるなど手腕を発揮。フィレンツェでの人気が根強い監督です。

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会長のコミッソには、プランデッリの招へいでサポーターの怒りを収め、さらに彼らとの関係を修復したいという淡い思惑があったのではないでしょうか。

イタリアも他国同様、監督の解任理由は成績不振によるものが大半です。

そこにファンからの圧力などピッチ外でのあらゆる要素が絡んできます。他リーグにはあまりない大きな特徴と言って良いでしょう。

シーズン中の監督解任劇は、イタリアサッカーのいわばお家芸のようなもの。

ですが、こういうコロナ禍の大変な時期だからこそ、各クラブの会長にはいつもより長い目で見てほしいものですね。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

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