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【連載】"お家芸"の指揮官交代が続出…一大ムーブメントの真相に迫る | 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 | 第17回

【連載】"お家芸"の指揮官交代が続出…一大ムーブメントの真相に迫る | 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 | 第17回(C)Getty Images
【欧州・海外サッカー インタビュー】2020-21シーズンのセリエA10傑のうち、8チームが新監督の招聘に踏み切った。ザッケローニ氏が「イタリアサッカーのお家芸」と語る指揮官交代はなぜ頻発したのか。

ここ数週間で、2020-2021シーズンのセリエAトップ10のうち、実に8クラブが監督交代に踏み切りました。例年以上にベンチに動きがあるオフとなっていますね。

とはいえ、さほど驚くことではありません。そもそもイタリアサッカーにとって、監督交代は"お家芸"みたいなもの。決して珍しいことではなく、残留を争うようなスモールクラブに限った話でもありません。

11シーズンぶりのスクデット(リーグ優勝)を獲得したインテルでさえ、歴史を紐解けば、頻繁に監督を交代させています。ミランもしかり。

ここ数年、ユヴェントスも入れ替わりが激しくなっています。マッシミリアーノ・アッレグリが18-19シーズン終了後に退任。その後を継いだのはマウリツィオ・サッリで、昨季はアンドレア・ピルロが監督を務めました。そして新シーズンは周知のとおり、アッレグリが再登板します。

ナポリに至っては1人の監督が2シーズン以上にわたってベンチに座り続けることの方が珍しいです。

今オフの激しい動きは、新型コロナの影響もあるかもしれませんね。ご存知のように、各クラブとも財政面で苦戦。補強に費やせる資金が限られています。

ゆえにチームを変えられる力を持った選手の獲得が厳しい状況です。その中で何か変化を加えられるとしたら……。その答えが監督交代というある種の"妥協案"に結びついた形ではないでしょうか。

経験豊富なベテランたちが復帰を果たしていることも、決してそのことと無関係ではないでしょう。

前述のとおりアッレグリがユーヴェに戻り、ルチアーノ・スパレッティがナポリ、ジョゼ・モウリーニョがローマ、サッリがラツィオに収まりました。

彼らはみな、過去に何らかのタイトルを獲得している老練家。新進気鋭の若手監督に指揮を託したクラブも少なくありませんが、残念ながら成功したケースはあまり多くありません。

インザーギとは対照的なサッリ

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ということで、ここからは復帰を果たしたベテラン監督たちの今後の展望について語っていきましょう。

まずはサッリから。彼は昨季まで4シーズンにわたって指揮を執っていたシモーネ・インザーギの後釜として就任しました。

そもそも監督交代は常にリスクを伴うもの。それがラツィオのように長年、同じ監督のもとほぼ同じ戦力で戦ってきたチームなら、なおさらのことでしょう。

インザーギに指導された選手たちは、リーグ優勝こそ果たせませんでしたが、コッパ・イタリア、スーペルコッパ・イタリアーナとカップ戦のタイトルを手にしています。

そこまで低調というわけではないチーム状況で、監督が代わり、新体制が軌道に乗らなかった場合、どのようなリスクが生まれるのか。たとえば、選手たちの間にこんな感情が渦巻く可能性があります。

「オレたちがタイトルを獲得できたのは、インザーギに教えられたサッカーを展開したからだ」

サッリはとても頭の良い監督ですから、そういった選手の心情も想定済みでしょう。したがって、就任早々に大きな変化を加えるとは考えにくいですね。

とくにセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ、ルイス・アルベルト、チーロ・インモービレといった攻撃陣の軸に大きな変更は求めないはずです。

変化を加えるなら、最終ラインなど他のポジションではないでしょうか。

個人的に興味があるのは、どのようなトレーニングを課すか。サッリは頑固で、神経質な面もあります。選手一人ひとりへの要求は、より細かいものとなるでしょう。

おおらかな性格で知られるインザーギとはそれこそ対照的。この交代が吉と出るか凶と出るか。サッリの手腕の見せどころとなるでしょう。

ローマ時代はトッティとの不協和音が

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次にナポリの新監督について話しましょう。スパレッティはそもそも、就任直後に何かを大きく変えようとするタイプの監督ではないです。

新任の彼が手始めにとりかかること。それは選手との関係構築です。一人ひとりの性格をしっかり把握して、その上で徐々に自分の色を出していきます。

とはいえスパレッティにも隠せない自我の強さがあります。就任期間が長くなると、誰かしらと衝突することもしばしば。フランチェスコ・トッティと不協和音を奏でたローマ時代の話はあまりにも有名です。

アッレグリと同じく、スパレッティも2年の充電期間を経ての復帰になります。そのぶん、モチベーションはかなり高いでしょう。ただ、指導方針や目指すサッカーは以前と変わらないはずです。

そもそも彼は決して何か新しいものを創り出す、イノベータータイプではありません。ただ私はローマ時代の彼の功績は忘れていませんよ。トッティをファルソ・ヌエベ(偽9番)で起用し、創造性あふれるプレーを展開したあのローマを。

ナポリでも当時のローマ同様に、しっかりとした戦力が揃っています。ナポリでもまた、何か面白い戦術を生み出してくれることを期待しています。

リーノは代理人の存在が仇に

最後はベテランと呼ぶには早すぎますが、ジェンナーロ・ガットゥーゾについて。

ガットゥーゾは今オフ、フィオレンティーナと契約を結びました。にもかかわらず、すでに退団しています。就任発表からわずか21日での別れでした。

問題となったのは、彼の代理人を務めるジョルジュ・メンデスの存在です。メンデスの顧客リストにはクリスティアーノ・ロナウドの名前もあります。

そんな大物エージェントがガットゥーゾとタッグを組み、自らの顧客である2選手をフィオレンティーナに送り込もうと企んだのです。

それの何が問題か、考えてみましょう。もしメンデスの息のかかった選手をチームにいれると、ガットゥーゾとメンデスの間に利害問題が発生することになります。

たとえば、その2選手が他とさほど変わらないレベルだと仮定します。にもかかわらず、優先的に起用されたら? それを見た周囲の反応は? さまざまな疑惑が浮かび上がるでしょう。

そもそも多くの選択肢があるなかで、どうしてガットゥーゾはメンデスの選手を2人もリクエストしたのか。

サッカー界では珍しいことではないのですが、ときに今回のようなケースも勃発します。私が代理人と一度も契約を交わしたことがないのも、そういった懸念が常に付いて回ったからです。

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リーノ(ガットゥーゾの愛称)はその後、トッテナムの監督候補にも急浮上しましたね。しかし、トッテナムファンの猛烈な反対に遭い、破談になったと見られています。はたして真相はどうだったのか。

トッテナムにとってファンの猛抗議は、それこそ都合が良かったのではないでしょうか。さもなければ、メンデスの顧客である選手も獲得せざるをえなかったでしょう。

リーノはナポリできっちり結果を残しました。さきほども触れましたが、新しい就職先を見つけるのに代理人の力は必要なかったはずです。

結局、メンデスの存在が仇となり、フィオレンティーナ、トッテナムというチャンスを逃してしまいました。

メンデスは優秀なエージェントです。なので、遅かれ早かれ、リーノの新たな職場を見つけてくるでしょう。ただ、フィオレンティーナでの一件がどうしても腑に落ちません。それが私の率直な気持ちです。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

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