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【連載】マッシモ・アンブロジーニのニコロ・バレッラ評「セリエAの歴史上でも稀有なMF」| イタリアサッカー界の重鎮が登壇「カルチョS級講座」第13回

【連載】マッシモ・アンブロジーニのニコロ・バレッラ評「セリエAの歴史上でも稀有なMF」| イタリアサッカー界の重鎮が登壇「カルチョS級講座」第13回(C)Getty Images
【インタビュー】元ミランのマッシモ・アンブロジーニ氏は今を時めくインテルのMF、ニコロ・バレッラの才能を高く買っているようだ。同氏が「歴史上でも稀有なミッドフィルダー」と評する理由とは——。

マッシモ・アンブロジーニ。この名前を聞いて、長い金髪をなびかせながらピッチを縦横無尽に駆け回る姿を思い出すファンも多いのではないだろうか。

ミランでキャリアの大半(計17シーズン在籍)を過ごし、ファビオ・カペッロ、アルベルト・ザッケローニ、カルロ・アンチェロッティ、マッシミリアーノ・アレッグリら歴代の名将たちと数々のタイトルを獲得。パオロ・マルディーニ引退後の2009-10シーズンから、キャプテンも務めた元イタリア代表MFだ。

フィオレンティーナでプレーした13-14シーズンかぎりで現役を引退し、43歳となった現在は解説者として活躍の幅を広げている。

そんな彼がいま注目するのが、現時点で「セリエAベストMF」との呼び声が高いイタリア代表のMFニコロ・バレッラ。

11シーズンぶりのセリエA優勝に向け、首位を走るインテルの要。往年の名手が24歳のその若き才能を語り尽くす。

確固たるパーソナリティを保持

バレッラは素晴らしい選手だ。イタリア最高のミッドフィルダーという声も多く耳にする。私もその意見には同意するよ。

個人的にはローマのニコロ・ザニオーロ、チェルシーのジョルジーニョと同レベルと評価している。

その2人はいま、負傷離脱中だ。「現時点で試合に出場している選手」に限定するなら、バレッラとサッスオーロのマヌエル・ロカテッリ、この2人が私の中でベストだ。

バレッラの名前を聞いてまずパッと思い浮かぶのは、その負けん気の強さ。そして運動量が豊富で、前線へ飛び出すオフ・ザ・ボールの動きも素晴らしい。

足下の技術も申し分ないね。ボールを扱わせてもぎこちなさがなく、すべての動作がスムーズ。パスセンスも非凡なものがある。

技術に優れた選手ならば他にも名前は挙がるが、バレッラの場合はそこに強い決断力が備わった、パワフルなプレースタイルが魅力的だね。

強気な姿勢をいつだって崩さず、プレーにまったくブレがない。どんな難しい局面でもボールをもらうことをためらわないんだ。

要するに確固たるパーソナリティを保持しているということ。その強さを前面に押し出したプレーこそが、私が考えるバレッラの最大の強みだ。

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闇雲にピッチを駆け回るわけではない

技術的な観点から言えば、彼のダイナミズムも大きな武器の1つ。

力強さや迫力を指す単語だが、ここで私が指すダイナミズムは、単純に力強い、躍動感あるプレーにとどまらない。

先にも触れたが、バレッラは90分間を走り抜ける無尽蔵のスタミナを持っている。試合を観れば一目瞭然だが、彼は本当によくピッチを動き回るプレーヤーだ。

闇雲にピッチを駆け回る選手なら山ほどいるが、バレッラはそうではない。彼のランニングは迫力があって、なおかつ効果的。守備で相手にプレッシャーをかけるシーンでも、攻撃で前線に飛び出す動きひとつ切り取っても、その走りに無駄が一切ない。

スタミナと技術があって、さらに質の高いランニングができる。こういったバレッラのような特徴を持った選手は、実はセリエAでもほんの一握りだ。

裏を返せば、体力をいたずらに消耗することなく、大事な局面でしっかりとパワーを使えているということ。

強度の高いプレーを絶え間なく繰り出すインテルの中盤で、バレッラがしっかり存在感を示せている理由はそこにある。

経験と年齢を重ね、精神面でも大きく成長していることがうかがえるね。

インテルに加入する前はカリアリでプレーしていたけれど、その頃はまだ、ピッチ上で感情をコントロールできない場面も散見された。

それこそカッとなって無駄なファウルを犯し、イエローカードをもらうなんてこともあった。

今はそういったシーンはほとんどなくなった。メンタル面で成熟したのだろう。

歴代の名MFに肩を並べるには…

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さらにワンランク上をめざすなら、得点に絡むプレーを増やすことが不可欠かな。

巧みなボールコントロールで時間を生み出し、前線へプレッシャーをあたえるランニング。さらにシュート力も備わっている。

となれば、アタッキングサードでもっと決定的な仕事を期待されるのは当然だ。

今以上に得点に絡むプレーが増えれば、きっと歴代の名ミッドフィルダーに肩を並べられるはず。それぐらいの実力がバレッラには備わっている。

プレースタイルが似ている選手として、マルコ・タルデッリの名前をよく耳にする。82年のスペイン・ワールドカップ優勝メンバーの1人で、アッズーリとして81試合に出場(6得点)した往年の名手だ。

ただ、現在66歳。43歳の私でさえ現役時代の彼のプレーはあまり記憶にないんだ。だから、それが正しいかははっきりとは言いきれないな。

(アンドレス)イニエスタにも似ているとの声もあるが、正直、バレッラと同じタイプの選手を見つけるのは難しい。

というのも、バレッラはセリエAの歴史上でも稀有なミッドフィルダーなんだ。

身長176cmと、それほど体格に恵まれているわけじゃない。にもかかわらず、その体格に似つかわしくない力強いプレーを繰り出せる。

彼の実力をもってすれば、偉大なミランでもレギュラー陣を脅かす存在にはなれただろう。

アンチェロッティ時代のミランで想像してみよう。基本フォーメーションは4-3-2-1。バレッラの特徴を考えると、適正ポジションは中盤3枚の両脇、つまりインサイドハーフだ。

当時は右が(ジェンナーロ)ガットゥーゾで、左が(クラレンス)セードルフだった。いくらバレッラでも、世界的な名手の2人から定位置を奪うのは決して簡単ではなかったはずだ。

それでも、どちらかがケガや出場停止で欠場した場合は、立派に代役を務めただろうことは想像できるね。

イタリアサッカーを背負って立つ1人

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唐突だが、イタリアでは多くの外国人選手がプレーしている。他リーグと比較してもセリエAは多いんじゃないかな。それが原因で、「若いイタリア人選手の活躍の場が奪われている」との議論が何度となく交わされてきた。

そんな難しい状況でも、優秀な選手はビッグクラブでも定位置を奪える。バレッラはそれを証明してみせた。イタリアサッカー界にとってはとてもポジティブなことだ。

私から言わせれば、そもそも才能がある選手は、国籍に関係なく試合に絡めるもの。しかし、残念ながらサッカー界はそんな理想だけで物事を語れないのも事実だ

最近の事例で言えば、ジェノアのケース。

ジェノアにはジャンルカ・スカマッカ(上写真)という若いイタリア人フォワードがいる。イタリアU-21代表歴がある、将来が楽しみな22歳のアタッカーだ。

彼のような優秀な逸材を抱えながら、ジェノアは昨夏にウズベキスタン人のエルドル・ショムロドフという選手をチームに迎えた。

その獲得に費やした額は、なんと900万ユーロ(約12億円)。交渉の経緯は知らないが、果たしてそこまでの大金をはたいて補強すべき戦力だったのか。

今のところショムドロフは金額に見合っただけの活躍ができていない(※4月3日時点で21試合出場・3得点)。

何よりスカマッカというイタリアの若き才能の出場機会を奪ってしまったことが納得できないよ。

ちょっと脱線したが、バレッラは今後のイタリアサッカーを背負って立つ優秀な若手の1人。

彼のプレーにはこれからも期待しているよ。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

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