マンチェスター・シティとトッテナムによる注目のカードは、ペップ・グアルディオラとジョゼ・モウリーニョの因縁のライバル対決でもある。
まず、この一戦は4月に行われる大一番に向けたドレスリハーサルだ。というのも、両者はカラバオカップ(リーグカップ)の決勝で対戦することが決まっているのだ。
例年、リーグカップの決勝は2月末か3月初めに開催されており、今シーズンも当初は2月末に予定されていたが、一人でも多くのサポーターを入れて試合を行うために4月25日に変更された。
少し話が逸れるが、普段は“おまけ”のカップ戦と見られているリーグカップも今季ばかりは注目を集めるだろう。同大会を3連覇中のシティは、1980年代のリヴァプールが持つ4連覇という記録に並ぶチャンスなのだ。
それを達成できれば、グアルディオラは一人で4連覇を達成した史上初の監督となる(リヴァプールは4連覇の途中に監督交代があった)。
モウリーニョだって負けていない。過去にチェルシーとマンチェスター・ユナイテッドを率いてリーグカップを制しており、仮に今回も頂点に立つことができれば史上初の3クラブでの制覇となる。さらにはアレックス・ファーガソンとブライアン・クラフという名将たちを抜いて優勝回数も単独1位の通算5回になるのだ。
そんな偉大な指揮官が率いているチーム同士の対戦というわけだ。両監督の対戦成績は、11勝6分け7敗でペップに分がある。しかしモウリーニョはスパーズの監督に就任した19年11月以降、シティに対して2連勝中。もし今回も勝利すれば、スパーズはペップからリーグ戦3連勝した初めてのチームとなる!
20歳のフォーデンが原動力に
11月に行われた今季最初の対戦では、イルカイ・ギュンドアンのPK失敗やオレクサンドル・ジンチェンコの退場という言い訳があるにしろ、シティは0-2の完敗を喫した。だがその敗戦以降、シティは無敗を維持しており、最近はプレミアリーグで10連勝と向かうところ敵なしだ。
そんなチームの原動力となっているのが20歳のMFフィル・フォーデンである。4-1で快勝した先週末のリヴァプール戦では1得点1アシストの活躍で称賛を集めた。右サイドから仕掛け、半歩ずらして弾丸シュートを叩き込んだゴールは圧巻だった。
今季は公式戦29試合に出場して既に10得点6アシスト。自身キャリア初となる2桁ゴールをマークしている。
「彼はどんなポジションでもプレーできるだろう。左SB、右SBだって可能なはず。センターバックとしてもプレーできてしまうだろうね。プレミアリーグの大舞台でも、まるで公園で遊んでいるかのようにプレーする。信じられない」
元ウェールズ代表にして人気解説者のロビー・サヴェイジが『BBC』でこう賛辞を送れば、『スカイ・スポーツ』では元ユナイテッドのギャリー・ネヴィルが「ここ数年の期待に応え、フォーデンが大人になった日」とリヴァプール戦を振り返った。
どうやらペップを信じて正解だったようだ。大会MVPに選ばれる活躍を見せ、イングランドをU-17ワールドカップ制覇に導いた17年以降、常に注目を浴びてきたフォーデンだが、一流だけが集うシティで本当に成長できるのか疑問だった。
だから外部からはローン移籍を促す声が多かった。それでもペップはその度に移籍を否定してフォーデンをチームに留めてきた。それが正しい選択なのか、当時は誰にも分からなかった。
シティの下部組織でチームメイトだったジェイドン・サンチョは、17歳でクラブを離れてドルトムントで脚光を浴び、一足先に代表デビューを果たしていた。昨シーズンのリーグ戦出場時間を見れば、サンチョがブンデスリーガで2290分間出場したのに対し、フォーデンは892分間に留まった。
今季はMFダビド・シルバが退団したことでフォーデンの出番が増えるのは分かっていた。だが、ここまでチームの核に定着できると予想する者は少なかった。
フォーデンならばサンチョのように移籍の道を選んでも成功したはずだが、それでは今の彼は存在しない。D・シルバの柔らかさ、リヤド・マフレズの切れ味、ベルナルド・シウヴァの献身性、セルヒオ・アグエロの決定力。今のフォーデンがあるのはペップを信じてシティで学んだからだ。
ペップに感謝するホイビュア
スペインの名将に感謝するのはフォーデンだけではない。トッテナムのデンマーク代表MFピエール=エミール・ホイビュアもペップと忘れられない時間を過ごしたことがある。
ホイビュアは12年に16歳で母国デンマークのクラブからバイエルン・ミュンヘンに移籍し、1年後にやってきたグアルディオラ監督の元でプレーするようになった。13年に父親がガンと診断されたとき、支えてくれたのはペップだったという。
その年のデンマーク年間最優秀タレントに選出された際、彼はこんなエピソードを明かした。
不安と悲しみに暮れる17歳のホイビュアに電話をかけてきたのはグアルディオラだった。そして「愛する人と一緒に時間を過ごすべきだ。例えそれで自分の仕事に影響が出たとしても」と声をかけ、一緒に泣いてくれたという。
後にホイビュアは「僕はペップの元で戦術面が飛躍的に成長した。彼のスタイルとフットボール観が好きなんだ」と英紙『ガーディアン』に語っている。
今季モウリーニョが「展開を読む力に長けている。いつか監督になるだろう」と称えたミッドフィルダーは、ペップの元で戦術を学び、その後サウサンプトンで実績を重ね、今こうしてスパーズの中盤を支えているのだ。
ケインは心身ともに充実
そのスパーズは、前節 ウェストブロム戦 でエースのハリー・ケインが怪我から復帰すると、一時の不調が嘘のように躍動感を取り戻した。ケインにボールが収まることで、周りの選手たちも積極的にスプリントした。
ケインは序盤のチャンスこそ決められなかったが、後半にはホイビュアの縦パスを貰って先制点をマーク。そして54分にはセンターライン付近で得たFKを直接狙った。シュートは枠を外れたし、リスタートが早すぎたせいで主審にやり直しを命じられたが、心身ともに充実していないとこういうプレーは生まれない。
復帰戦ゆえに少し身体が重く見えたのは気のせいだったようだ。
ケインはミッドウィークに行われたFAカップ5回戦のエヴァートン戦でも途中出場からソン・フンミンのクロスに頭で飛び込んでゴールを奪った。チームは延長戦の末4-5で敗れたが、これからのトップ4争いで巻き返しが期待できる内容だった。
「4得点を自信に変えてシティ戦に臨むということですか?」
試合後に『BBC』のレポーターに聞かれたモウリーニョは「我々は5失点したよ!」と間髪入れずに切り返した。どうやらチームだけでなく、監督も調子を取り戻したようだ。
公式戦15連勝中のシティの強さは本物だ。しかし、今の彼らを止められるチームがあるとしたら、それはモウリーニョ率いるスパーズなのかもしれない。
文・田島 大
「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まった『フットメディア』所属。英国在住歴を持つプレミアリーグのエキスパート。
直近のプレミアリーグ試合日程
第24節
開催日 | キックオフ (日本時間) | 試合 |
---|---|---|
2/13(土) | 21:30 | レスター vs リヴァプール |
2/14(日) | 0:00 | クリスタルパレス vs バーンリー |
2/14(日) | 2:30 | マンチェスター・シティ vs トッテナム |
2/14(日) | 5:00 | ブライトン vs アストンヴィラ |
2/14(日) | 21:00 | サウサンプトン vs ウォルヴァーハンプトン |
2/14(日) | 23:00 | ウェストブロム vs マンチェスター・U |
2/15(月) | 1:30 | アーセナル vs リーズ |
2/15(月) | 4:00 | エヴァートン vs フラム |
2/16(火) | 3:00 | ウェストハム vs シェフィールド・U |
2/16(火) | 5:00 | チェルシー vs ニューカッスル |
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