日本のエースは、最強シティの堅守をこじ開けることができるのか。マンチェスター・シティ対サウサンプトンは何とも楽しみな一戦だ。
まずは独走態勢に入ったシティである。先週末のマンチェスター・ダービーに敗れて連勝が止まったものの、公式戦21連勝はイングランド・トップリーグ所属クラブにおける新記録で、気づけば2位以下に10ポイント以上の差をつけている。
よっぽどのことがない限り、2年ぶりのリーグ優勝は安泰だ。それどころかチャンピオンズリーグ、FAカップ、EFLカップを加えて4冠だって不可能ではない。
もし達成できれば、1966-67シーズンのセルティックに次いで史上2チーム目となる「国内3冠+チャンピオンズリーグ(カップ)」の“クアドラプル”だ!
シティは2シーズン前も“4冠”まであと10試合に迫ったが、チャンピオンズリーグ準々決勝でトッテナムとの同国対決に敗れて国内3冠に留まった。
だが今シーズンは守備の安定が際立っており、彼らを止められるチームは国内外を見渡しても皆無に等しいように思う。
細かい動き直しで突破口を切り開く
そんな強大なチームに挑むサウサンプトンは、週末のシェフィールド・ユナイテッド戦で2-0の快勝。実にリーグ戦10試合ぶりの勝利を収めた。道中には泥沼の6連敗もあり、残留争いに巻き込まれつつあった中での3ポイントは非常に大きい。
ラルフ・ハーゼンヒュットル監督もセインツでの記念すべき100試合目を白星で飾れて「長いこと勝てていない時期には最初の1勝が最も難しいもの」と安堵に似た喜びを口にした。
怪我人続出もあって苦しんでいたサウサンプトンに、ようやく駒が戻ってきているのは朗報だ。「久しぶりに各ポジションにメンバーが揃った。以前よりも格段に内容が良かったのは、メンバーが揃ったからだ」と指揮官はシェフィールド・U戦後のオンライン会見で振り返った。
監督が勝てなかった時期を全て怪我人のせいにしたくなるのは当然である。それくらい今シーズン前半戦の彼らは好調だった。
11月6日の第8節ニューカッスル戦に勝ったときには、暫定ながら32年ぶりにイングランド・トップリーグで首位に立った。だから戦力さえ揃えばという思いは強く、指揮官は「来季はもっと選手層を厚くしないと。それができれば怪我人の穴も埋められる」と切実に訴えた。
14位サウサンプトンは残留ラインとされる勝ち点40まであと7ポイントだ。
シェフィールド・U戦で負傷したエースのFWダニー・イングスが約3週間の離脱となったため、チームのカギを握るのはやはり南野拓実だろう。シェフィールド・U戦ではチャンスを決め切れなかったとはいえ、常に僅かなギャップを見つけてボールを受けて攻撃のテンポを生み出していた。
シティ戦でも、南野が細かい動き直しで突破口を切り開くはずだ。
エディハドは日本人にとって縁起が良い
前回、サウサンプトンがマンチェスターで試合をした際には“赤いチーム”に9ゴールを叩き込まれる大惨事となったが、今度はスカイブルーのチームが相手だ。そして会場はエティハド・スタジアムである。少し主観が入るが、このスタジアムは日本人にとって縁起が良いように感じる。
日本代表チームがイングランドで「国際Aマッチ」を戦ったのは過去に6試合あるのだが、勝利したのは1回だけ。それが2004年5月30日のアイスランド戦(3-2)で、その会場となったのがシティの本拠地だった。
そして2日後にはユーロ2004を控えるイングランド代表と同会場で対戦し、小野伸二が右足インサイドでGKデイヴィッド・ジェイムズの股を抜く同点ゴールを決めて1-1で引き分けたのだ。ちょうどスタンドで観戦していた筆者も興奮して立ち上がったのを覚えている。
プレミアリーグで日本人がシティから奪った唯一のゴールも、このスタジアムで生まれた。17年5月に当時レスターに所属していた岡崎慎司がマーク・オルブライトンのクロスを左足で振り抜いてネットを揺らしたのである。
首位チーム撃破も夢ではない
優勝争いとは無関係のシーズン終盤の1試合に過ぎないが、シティにはその試合を忘れていない者がいる。
シティが2-1で競り勝ったその一戦で、実はレスターも2点目を決めて同点に追いつく…はずだった。77分に獲得したPKを決めたのだが、PKを蹴る際に足を滑らせて軸足にもボールが当たり“2度蹴り”と判定されてゴールが認められなかったのだ。
そのPKを蹴った選手こそ、今季シティでリーグ戦7ゴールを叩き出しているリヤド・マフレズである。
無論、ペップ・グアルディオラ監督もその一戦を忘れていないだろう。就任1年目のグアルディオラは、優勝争いに絡めずにアーセナルと熾烈なトップ4争いを演じていた。もしレスターに負けていたら、チャンピオンズリーグ出場権を逃し、今の“ペップ王国”はなかったかもしれない。
南野は、その時の岡崎に続いて日本人として史上2人目となるシティ戦でのゴールを狙うわけだ。どんどん積極的に狙って欲しいし、狙わないとダメだろう。少しでも消極的なプレーをしたら、17年11月の対戦でネイサン・レドモンドが受けたような、敵将ペップによる“公開説教”が待っているかもしれない!
もちろん両チームの実力差は明白だ。それでも今季のサウサンプトンには“大金星”が期待できる。今季はFAカップで前年度覇者のアーセナルを撃破したし、プレミアリーグでも「首位チーム」(エヴァートン、リヴァプール)と2度対戦して2勝しているのだ。
だからサウサンプトンには、残留争いの大一番でもあるブライトンとのサウスコースト・ダービーが週末に控えているとはいえ、メンバーを温存せずに全力でぶつかって欲しい。
そうすれば首位チーム撃破も夢ではない。二度あることは三度ある…はず。
文・田島 大
「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まった『フットメディア』所属。英国在住歴を持つプレミアリーグのエキスパート。
直近のプレミアリーグ試合日程
開催日 | キックオフ (日本時間) | 試合 | スコア |
---|---|---|---|
3/9(火) | 3:00 | チェルシー vs エヴァートン | |
3/9(火) | 5:00 | ウェストハム vs リーズ |
第33節
開催日 | キックオフ (日本時間) | 試合 |
---|---|---|
3/11(木) | 3:00 | マンチェスター・シティ vs サウサンプトン |
第28節
開催日 | キックオフ (日本時間) | 試合 |
---|---|---|
3/13(土) | 5:00 | ニューカッスル vs アストンヴィラ |
3/13(土) | 19:30 | リーズ vs チェルシー |
3/14(日) | 0:00 | クリスタルパレス vs ウェストブロム |
3/14(日) | 2:30 | エヴァートン vs バーンリー |
3/14(日) | 5:00 | フラム vs マンチェスター・シティ |
3/14(日) | 21:00 | サウサンプトン vs ブライトン |
3/14(日) | 23:00 | レスター vs シェフィールド・U |
3/15(月) | 1:30 | アーセナル vs トッテナム |
3/15(月) | 4:15 | マンチェスター・U vs ウェストハム |
3/16(火) | 5:00 | ウォルヴァーハンプトン vs リヴァプール |
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