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【連載】往年の名手マウロ・タソッティがボローニャDF冨安健洋を分析「良い意味で"ふてぶてしさ"を感じる」| イタリアサッカー界の重鎮が登壇「カルチョS級講座」第12回

【連載】往年の名手マウロ・タソッティがボローニャDF冨安健洋を分析「良い意味で"ふてぶてしさ"を感じる」| イタリアサッカー界の重鎮が登壇「カルチョS級講座」第12回(C)Getty Images
【インタビュー】イタリアサッカー界の重鎮がカルチョの魅力や神髄に迫る当連載。第12回はミランの黄金期を支えた往年の名手マウロ・タソッティが、ボローニャに所属する日本代表DF冨安健洋を掘り下げる。

カルチョの国で日増しに評価を高めている冨安健洋。福岡出身のこの22歳は、いまやセリエAでもっとも注目される若手プレーヤーの1人となった。その実力は歴戦の名プレーヤーたちもこぞって太鼓判を押すほどだ。

かつて世界屈指の右サイドバックとして鳴らしたマウロ・タソッティもその1人。

長年のミラニスタならご存じだろう。アレッサンドロ・コスタクルタ、フランコ・バレージ、パオロ・マルディーニとともに鉄壁の4バックを結成し、80~90年代のミラン黄金期を支えた元イタリア代表DFだ。

1997年の現役引退後は指導者の道を歩み、古巣ミランでカルロ・アンチェロッティ、レオナルド、マッシミリアーノ・アッレグリ、セードルフ、フィリッポ・インザーギのもとでヘッドコーチを歴任。

61歳となった現在は、母国ウクライナの代表監督を務めるかつての教え子、アンドリー・シェフチェンコの右腕として手腕を振るっている。

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ユーティリティ性の高い選手

冨安は本当に良い選手だ。私は代表(ウクライナ)の活動がないときは基本、イタリアにいる。だからセリエAの動向は今も欠かさずチェックしているが、冨安のプレーにはかなりのインパクトを受けているよ。

まず目を見張るのが、ディフェンスならどのポジションも高いレベルでこなせる能力。この類い稀な才能が彼の最大の武器であり、チームにとっての大きなアドバンテージになっている。

ボローニャの監督である(シニシャ)ミハイロヴィッチも冨安には相当、助けられているんじゃないかな? チーム状況に応じて、複数の選択肢を与えてくれるわけだからね。

彼のようなユーティリティ性の高い選手がチームにいると、監督は本当に助かるよ。

長いシーズンでは、ケガや出場停止で起用できない選手が続出するなんてことは良くある。そんなとき、彼のような選手がチームに存在するか否かでは大きな違いが生まれるんだ。

過去セリエAでプレーした日本人選手の中に、ディフェンダーはほとんどいなかった記憶がある。

外国人プレーヤーに関してはやはり、助っ人の意味合いが強い。

イタリアは歴史上、常に世界レベルの優秀なディフェンダーを輩出してきたから、日本人に限らず、そのポジションに外国人枠を割く必要性がまったくなかったんだ。

各クラブとも、今までは主にアタッカーやミッドフィルダーを好んで獲得してきたのにはそういった背景がある。

ただここ数年で移籍マーケットのグローバル化はさらに進んだ。優秀な外国人ディフェンダーもより増え、選択肢が広がった。まさに冨安のような選手だ。時代の移り変わりを感じるね。

ミハイロヴィッチのもとでプレーすることは有益

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冨安の価値は、高いユーティリティ性だけではない。パーソナリティの部分でも光るものを持っている。

プレーを観る限り、彼には良い意味で"ふてぶてしさ"を感じる。遠慮がまったくないんだ。

ピッチ上では少なくともシャイなタイプではなさそうだね。言葉は少し乱暴になるが、サッカーではそういった「面の皮の厚さ」も重要な要素の1つだ。

もちろん技術レベルも高い。守備面は当然のこと、攻撃でも積極的に関われる高い能力が備わっている。

そもそも現代サッカーにおいて、ディフェンダーには攻守両面で貢献できる能力が問われる。それこそ私がプレーしていた30~40年前とは、求められる資質がまったく違っている。

ゴールキーパーの役割でさえその頃と比べたら大きく変わったほどだ。今は足下の技術もしっかりしていないと、良いゴールキーパーとは言えないからね。

セリエAに参戦して約1年半。冨安は順調に成長を遂げているね。

最近のプレーを観ても、状況判断がかなり向上していることがうかがえる。以前と比べて格段と進歩したように思えるよ。

セリエAは外国人プレーヤーにとって大きな成長をもたらしてくれるリーグだ。なぜなら毎試合、毎試合、気の抜けないゲームが続くからだ。

とくに戦術面で多くのことを体感できるのがセリエA。世界の他リーグと比較しても、本当に戦術的でタフなリーグだよ。

今後の課題で言えば、冨安に足りないのは経験だけ。その観点から考えても、ミハイロヴィッチのもとでプレーすることは、彼にとって有益だ。なぜなら、ミハイロヴィッチ自身が百戦錬磨の世界的なディフェンダーだったからだ。

ミハイロヴィッチは戦術面においてとても優秀な監督。ボローニャでの日々は、冨安のキャリアの中でも重要なシーンとなるのではないかな。

明るいキャリアが開けている

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冨安と似たタイプの選手を挙げるのは難しいね。彼のキャリアが今後、どのような発展を遂げるのか。きっちりと見極める必要がある。

とくにポジションについてだ。右サイドバックとしてキャリアを積み上げていくのか、それともセンターバックに専念するのか。今はまだ、本職がどちらかさえはっきり言えない状況だ。

そういう段階ではありつつも、「ビッグクラブへの移籍の可能性はあるか」と問われれば、私は間違いなくYESと答えるよ。実際、ミランが今冬の移籍市場で補強リストに名前を挙げ、獲得に動いていたわけだからね。

ボローニャとミランの交渉がどのような推移を辿ったかは正直、分からない。

ミランは最終的にターゲットを変え、チェルシーからフィカヨ・トモリを獲得した。そのことから推測するに、交渉は難航したんだろう。

今は多くのチームが優秀なディフェンダーを探している状況。その証拠に、ディフェンダーの市場価値が一時と比べ、グンと跳ね上がっている。

クラブにとって冨安のような若くて将来性のあるディフェンダーの獲得は、最高の投資となるはずだ。

ボローニャだって、ベルギーの小クラブ(シント=トロイデン)から「冨安」という宝を掘り当てたのだからね。

ボローニャが今後、各方面で評価があがっている彼に関してどのような戦略を練っているのか、気になるところだ。

考えられる選択肢は2つ。

もしボローニャがビジネスとして考えるのなら、冨安を買った値段より高値でビッグクラブに売ることも選択肢の1つだ。

一方、資金的に余裕があるのなら、彼をチームに留まらせるのも手だ。ボローニャが上位を目指すことを考え、冨安をディフェンスリーダーとしてチームの中心に据える。

冨安の実力を鑑みれば、ボローニャがそう考えたとしても何ら不思議ではない。

いずれにせよ、冨安には明るいキャリアが開けている。そのことだけは間違いなさそうだね。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

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