微妙な判定が下されたのは、J1第8節FC東京対札幌の55分の場面だ。
札幌のFWチャナティップのパスがFC東京のMF三田啓貴に当たったところからカウンターが発動。ディエゴ・オリヴェイラがドリブルで持ち上がると、キム・ミンテが抜かれかけたところでたまらずファウル。主審はキム・ミンテのファウルを取ってイエローカードを提示した。
ただ、ここでビデオ・アシスタント・レフェリー（VAR）が介入。主審がオンフィールドレビューを行った結果、決定的な得点機会の阻止、いわゆるDOGSOとなりレッドカードへと変更され、キム・ミンテは一発退場となった。映像見返すと厳しいジャッジにも見られたが、今回はこの場面について徹底的な議論が行われた。
DOGSOマスターで知られる平畠氏は「僕の印象ではイエローでいいのかなという気がする」と語りつつ、「ディエゴ・オリヴェイラ選手のドリブルは、ボールこそゴール方向に蹴り出していますが、彼の体の向きはタッチラインと並行しているように見える。これでもボールの方向が優先されてゴール方向へのプレーと判断されるのでしょうか」とするTwitterで寄せられた投稿を紹介した。
原氏は「俺らより皆さんのほうが指摘が鋭い」と語った上で、自身の見解を口にした。
「DOGSOと言われればDOGSOっぽい感じもする。難しいけど、この試合のシチュエーション（前半にFC東京の選手が退場していた）で言うと、やはりDOGSOになってしまうんだろうなという気がした。オリヴェイラの体は、確かにそこから回っていかなければいけない感じだったけど、そうすると真ん中に戻っている選手たちも間に合うようにも感じる。切り取ってみると難しい」
互いに明確なイエローかレッドかの判断ができない中、FIFA・AFC・JFAの審判インストラクターを務める深野氏は、「最初にメインスタンド側からのカメラの映像を見た時には『あ、イエローカードだ』と一瞬思った」と正直な思いを吐露。ただ、別のカメラの映像を見たことで見識が変わったことを明かしている。
「ゴール裏に近い方からのカメラを見て『DOGSOだ』という風に思い直しました。1つポイントとなるのが、ペナルティエリアの角です。割と幅に近いところ、いわゆる45度ぐらいでした。そうすると、シュートに持っていけると思えると。私の最初の印象では、もうちょっとタッチラインに寄っているのでは、角度がないのではないかと思ったんですけど、十分にいい角度だった。そういう意味では、違う映像を見てDOGSOに変わりました」
この回答に対して平畠氏と原氏は、本当にVARが介入する条件である「明白な」シーンだったかに言及。深野氏に「明白な間違いと言えない状況の中でVAR介入が行われたこと」についての質問を投げかけた。
それに対して深野氏は「VARからすると、おそらくこれは明白な間違いだと思ったんじゃないかなと思います」と回答。最終的な結論としても「DOGSO、レッドカードだと思います」とし、今回の判定を尊重した。
非常に難しいジャッジとなったDOGSO判定。今後も同様の問題が出てきた時にはジャッジリプレイでの議論を期待したいところだ。
DOGSO（ドグソ）とは
DOGSOとは「Denying Obviously Goal Scoring Opportunity」の略称で、ファウルによる「決定的な得点機会の阻止」を指す。下記4条件がすべて揃った場合、得点ができる可能性とみなされる。
- プレーの方向：攻撃側の選手が相手ゴールに向かっている
- 守備側競技者の位置と数：守備側の選手が状況的に得点を防ぐことが困難だった
- 反則とゴールの距離：攻撃側の選手が得点可能な位置だった
- ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性：攻撃側の選手がファウルを受けなかった場合、シュートやドリブルが可能だった
Jリーグジャッジリプレイ
- 配信：DAZN
- 配信日：毎週火曜日
- MC：桑原学
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