エラーコード %{errorCode}

明治安田J1リーグ

【中村憲剛引退特集】楽しみ半分、緊張半分。取材はまるで試合――。そして生まれた連帯感 | Jリーグ

【中村憲剛引退特集】楽しみ半分、緊張半分。取材はまるで試合――。そして生まれた連帯感 | JリーグDAZN
【Jリーグ コラム】先日、現役引退を発表した中村憲剛。川崎フロンターレ、Jリーグ史に名を残した中村の幕引きにあたり、本人とのインタビューを数多く行ってきた原田大輔氏に、取材の思い出を振り返ってもらった。
▶▶▶DAZNの詳細をチェックする◀◀◀

意志と情熱をより強く感じて

「まさか」と思う反面、「やはり」と思う自分もいる。

中村憲剛の現役引退のことだ。

今シーズン限りでの現役引退を発表したのは、40歳の誕生日に行われたJ1第25節のFC東京戦で、バースデー決勝弾を挙げた翌日だった。

引退会見を終えた直後の中村に、心境を聞く機会に恵まれた。

会見では、「35歳の誕生日を迎えたときに、妻と40歳までと決めていた」と話していた。だから、「39歳になった直後に、左膝前十字靱帯を断裂し、過酷なリハビリを続けている間も」——と問いかけた。途中で質問の意図を汲み取った中村は、「1人でカウントダウンしていました。そうじゃなかったら、精神的に耐えられなかったと思う。でも、だからこそ戻らなければいけなかったんです」と教えてくれた。

現役引退を決意していながら、再起に挑んでいた中村の姿を思い起こすと、意志と情熱をより強く感じて、全身に鳥肌が立った。

振り返れば、この感覚をいつも与えてくれるのが川崎フロンターレの背番号14だった。

初めて中村にインタビューをしたのは、いつだっただろうか。彼がこれほど多くの栄光に恵まれる前だったことは覚えている。取材機会は年々増え、ときにはあまりに連続して取材を担当したことから、「また?」と言って、笑われたこともあった。サッカーやチームの話はもちろん、クラブのこと、ときには人生観について語ってもらったこともあった。

テーマは多岐に及んだから、「引退」の二文字について触れたことも当然ある。そう思って、過去のインタビューをひっくり返してみたが、中村は聞くたびに「まだまだ続けますよ」とか「40はひとつの区切り」とは言うものの、その先——要するに40歳以降の自分については何一つ語っていなかった。だから、過去の取材を見返した今、改めて「決めていたんだな」と思いもしたし、腑に落ちた。

「サッカーが好きだったんですよね。自分でもバカだなって思うくらいに」

2020_11_6_jleague_nakamura2

そんな中村への取材は、いつも試合に臨む選手のような気持ちだった。流れを引き寄せられるのか(この場合、どんな話の展開になるのか)という楽しみが半分、試合に勝たなければ(この場合、言葉を引き出さなければ)という緊張感が半分だった。 

学生時代に目立った活躍をすることもできなければ、注目を集めることもなかった中村が、なぜ、ここまでサッカーを続けてこられたのかという問いにはこう答えてくれていた。

「もし別の分野に興味があったり、サッカーに興味がない状況になっていたら、たぶんやめていたと思います。エリート街道まっしぐらというわけではなかったので、そうなりやすい環境だったことは間違いないですけど……ただ、ただ、サッカーが好きだったんですよね。自分でもバカだなって思うくらいに。でも、自分がこうありたいという理想像は常に持ち続けていました。それが今も残っているから、ここまでプレーしているんだと思います」

37歳でJ1初優勝を遂げたときには、過去に思いを馳せてくれた。

「もともと、すべての責任を自分自身に向けることで力に変えてきた人間なんです。だから、これまでタイトルが獲れないのは、ずっと自分のせいだと思っていた。その胸のつかえが取れたような思いがある。自分がプロになった2003年はJ2を戦っていて、ホームの等々力で試合をしても、雨が降れば観客は3000人程度。それが今はフルに観客が詰めかけてくれている。だから、みんなで優勝を成し遂げられたことが、自慢でもあり、誇りなんです。今日まで自分がここでプレーし続けてきたことは間違いではなかったんだなと、改めて感じました」

38歳でJ1を連覇したときには、こんな言葉を残してくれた。

「成功も失敗も積み重ねていく。今までは失敗、失敗のなかで、ちょっとずつ成功が手に入る形でしたけど、大きな成功を手にしたことで、経験値がグンと上がった。負けて得られるものもありますけど、やっぱり勝って得られるものは比べものにならない。それは負けてきた自分だから得られた経験でもある」

連帯感が生んだ言葉

中村とのインタビューは、いつも1時間を越えていた。だいたい30分、長くても45分くらいで切り上げるのが暗黙のルールだが、あの2人だから長くなるだろうと、いつしかクラブからも大目に見てもらうようになった。

それだけ取材を重ねてきただけに、2人の間に、ニヤリとする瞬間が訪れるようになった。こちらは言葉を引き出そう、引き出そうと粘り、あちらは言葉を絞り出そう、絞り出そうとすることで生まれる連帯感とでも言えばいいだろうか。

左膝前十字靱帯断裂のケガから全体練習に合流したときだった。終始、前向きに取り組んできた姿勢について聞いた。

「ケガは治すしかないという考えで一貫していたんです。一方で試合は、チームがどうすれば勝てるか、いいサッカーができるか、ずっと考えることができますよね。だから、ケガは有限で、試合は無限なんですよ」

最後の言葉を聞いて、思わずお互いにニヤリとした。復帰が間近に迫ってきた時期に、改めて18年間過ごしてきたクラブの未来について聞いたときだった。

「大事なものはしっかりとピッチ内外で幹として築いてきているので、受け継いでいってほしいですね。そういう大事なところは大事にしつつ、現状維持は後退の始まりなので、新しいこと、ファン・サポーターの人たちが楽しめる、喜べるものを、時代の流れに即して取り組んでもらえたらと思います」

現状維持は後退のはじまり。その言葉にも、やはりニヤリとしたのを覚えている。それはまるで、中村の生き様でもあるように思えたからだった。

39歳を迎えた1年前、左膝前十字靱帯を断裂した直後には、こんなことを言っていた。

「戻るならば、完璧な中村憲剛の姿で戻らなければならない」

復帰戦で得点を決め、40歳の誕生日にもゴールを決めるなど、その言葉をまさに有言実行してきた。だから今、もう1つ、思い出したことがある。

あれは左膝前十字靱帯の再建手術を終えた後の病室だったように記憶している。2019年シーズンも間もなく終わることもあり、天皇杯の話題を振ったのだ。

そのとき、中村はこう言っていた。

「来年の天皇杯は100回大会なんですよね。記念すべき100回大会で、自分が未だ獲ったことのない天皇杯で優勝する。そうなったら最高ですよね」

その言葉を聞いて、お互いにニヤリとしたことも、はっきりと覚えている。

勝ち続ければ、現役最後の試合は、2021年1月1日の天皇杯決勝になる。もうしばらく、彼にはニヤリとする瞬間を共有してもらえそうだ。全身を鳥肌が包むようなプレーとともに——。

2020_11_6_jleague_nakamura3

文・原田大輔

1977年生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を経て、2008年に独立。現在はJリーグの取材を中心に、各クラブのオフィシャルメディアや各媒体に記事を寄稿している。

川崎フロンターレの試合日程

日時対戦カードスタジアム放送予定
12/22(土)15:03サガン鳥栖 H等々力△ 0-0
27/4(土) 19:00鹿島アントラーズ H等々力〇 2-1
37/8(水) 19:30FC東京 A味スタ〇 4-0
47/11(土) 19:00柏レイソル H等々力〇 3-1
57/18(土) 18:00横浜FC Aニッパツ〇 5-1
67/22(水) 19:30ベガルタ仙台 Aユアスタ〇 3-2
77/26(日) 19:00湘南ベルマーレ H等々力〇 3-1
88/1(土) 19:00ガンバ大阪 Aパナスタ〇 1-0
98/8(土) 19:00大分トリニータ H等々力〇 2-0
108/15(土) 14:00北海道コンサドーレ札幌 A札幌ド〇 6-1
118/19(水) 19:00セレッソ大阪 H等々力〇 5-2
128/23(日) 18:00名古屋グランパス A豊田ス● 0-1
138/29(土) 19:00清水エスパルス H等々力〇 5-0
149/5(土) 18:00横浜F・マリノス A日産ス〇 3-1
159/9(水) 18:30ヴィッセル神戸 H等々力〇 3-2
169/13(日) 18:30サンフレッチェ広島 H等々力〇 5-1
179/20(日) 19:00浦和レッズ A埼玉〇 3-0
189/23(水) 19:00横浜FC H等々力〇 3-2
199/27(日) 19:00湘南ベルマーレ ABMWス〇 1-0
2010/3(土) 15:00セレッソ大阪 Aヤンマー〇 3-1
2110/10(土) 18:00ベガルタ仙台 H等々力〇 1-0
2210/14(水) 19:00サンフレッチェ広島 AEスタ〇 2-0
2310/18(日) 19:00名古屋グランパス H等々力〇 3-0
248/26(水) 19:00ヴィッセル神戸 Aノエスタ△ 2-2
2510/31(土) 18:00FC東京 H等々力〇 2-1
2611/3(火・祝) 14:00北海道コンサドーレ札幌 H等々力● 0-2
2711/14(土) 17:00鹿島アントラーズ AカシマDAZN
2811/21(土) 14:00大分トリニータ A昭和電ドDAZN
NHK大分
2911/25(水) 18:30ガンバ大阪 H等々力DAZN
3011/18(水) 19:00横浜F・マリノス H等々力DAZN
3112/5(土) 14:00清水エスパルス AアイスタDAZN
NHK静岡
3212/12(土) 14:00サガン鳥栖 A駅スタDAZN
3312/16(水) 19:00浦和レッズ H等々力DAZN
3412/19(土) 14:00柏レイソル A三協F柏DAZN

DAZNについて

DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信!今すぐ下の記事をチェックしよう。

● 【番組表】直近の注目コンテンツは?
● 【お得】DAZNの料金・割引プランは?

2020Jリーグ関連ページ

2020 Jリーグ ( 日程・結果 | 総合J1 | J2 | J3

J1