茫然自失の2013年。文字通りの完全勝利を収めた2019年
イギリス発祥と言われる『ダービー』の定義が同じ地域に本拠地を持つチーム同士の対戦だとするならば、横浜F・マリノスと川崎フロンターレの一戦は厳密に言えばダービーではない。都市の定義を都道府県まで広げた時に、ほかにも対象クラブが存在するのだから、なおさらである。
『オリジナル10』としてJリーグ開幕時から名を連ねる横浜FMは、アマチュア時代の日産自動車サッカー部から名門として日本のサッカー界を牽引してきた。それは川崎Fがどれだけタイトルを勝ち獲ろうとも追いつけない次元の話だ。
一方で成績だけを切り取った時に、近年は川崎Fの勢いに押され気味なのも事実だ。川崎Fが初めてJリーグを制した2017年から昨年までに3度の優勝を飾っているのに対して、横浜FMは2019年の1度のみ。それも2004年以来、15年ぶりに手にしたリーグ優勝だった。
もっとも、久々の戴冠にそれだけの年月を必要とした理由の一端を担っているのは、皮肉なことに川崎Fである。
忘れもしない2013年の最終節、横浜FMは優勝をかけた大一番を等々力競技場で戦った。直前にホームで戦った新潟戦に敗れて優勝を持ち越していた経緯もあり、モチベーションはまさに最高潮。アウェイゴール裏にはファン・サポーターが所狭しとばかりに詰めかけ、ウォーミングアップ時から声量MAXで声援を送った。
しかし結果は無情にも0-1の敗戦。他会場で勝利した広島に逆転優勝を許した。試合終了のホイッスルと同時にキャプテンを務めていた中村俊輔(現・横浜FC)はグラウンドに突っ伏したまま動けなくなった。頭を抱え、泣き崩れる背番号25の姿は今でもまぶたの裏に焼きついて離れない。
茫然自失か、あるいは虚無感か。今でも最適な形容を見つけることができずにいる。ミックスゾーンを俯きながら歩く選手たちの表情が忘れられない。悲願のリーグ優勝は目前に迫りながらも掌からこぼれ落ち、歓喜を迎えるはずの舞台は悪夢として記憶に深く刻まれた。
悔しさを部分的に払しょくしたのは、まだ記憶に新しい2019年の第33節だった。この試合に勝利すれば他会場の結果次第では優勝が決まる可能性のある一戦で、横浜FMは4-1で川崎Fを撃破。優勝こそ最終節に持ち越したものの、自慢の攻撃力が爆発しての快勝は前祝いとして十分すぎるインパクトがあった。
それは今年で4年目を迎えるアンジェ・ポステコグルー監督の『アタッキングフットボール』がひとつの完成形を見た瞬間でもあった。それまでは堅守を前面に押し出して勝利していたが、この日は正面から打ち合いを演じた末に相手を上回った。トリコロールが文字通りの完全勝利を収めた一戦だったというわけだ。
感情論は最高のスパイス。借りは早めに返す
単純な勝敗以外でも、主力選手の行き来が話題をさらった時期がある。それに関して言えば、もしかしたら当事者の選手以上に意識するのがファン・サポーターで、禁断の果実であることを彼らは知っている。だから必然的にブーイングの回数が増え、音量が大きくなるのも仕方ない。
そして不思議なことにホームで迎え撃つよりもアウェイに乗り込んで戦った時に「負けたくない」という感情が大きくなる。わざわざ敵陣に乗り込んでおきながら一敗地に塗れようものなら、次の対戦まで大きな顔はできない。だからこそ勝たなければいけない一戦なのだ。
ダービー以外で、これだけ負けたくないと思う相手はおそらく川崎Fしかいない。感情論は時としてエンターテインメントにおける最高のスパイスになることを、我々は本能的に理解しているのかもしれない。
昨季はアウェイだけでなくホームでも敗れて2戦2敗の“ダブル”を食らった。借りたものは早めに返したほうがいいのは誰もが知っている。ならば開幕戦で対戦できるのはこれ以上ない機会だろう。
チャンピオンチームに敬意を表しつつも、胸を借りるという表現を使うつもりは毛頭ない。むしろ覚悟してもらおうではないか。
文・藤井雅彦
1983年、神奈川県生まれ。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、2006年からサッカー専門新聞『EL GOLAZO』の横浜F・マリノス担当を務め、現在はwebマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』の責任編集としてチームに密着し続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、書籍の執筆・構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』、『サッカー・J2論』(すべてワニブックス)がある。
横浜F・マリノスの試合日程
節 | 日時 | 対戦カード | スタジアム | 配信・放送予定 |
---|---|---|---|---|
1 | 2月26日(金)18:00 | 川崎フロンターレ A | 等々力 | DAZN |
2 | 3月7日(日)13:00 | サンフレッチェ広島 H | 日産ス | DAZN |
3 | 3月10日(水)18:00 | アビスパ福岡 A | ベススタ | DAZN |
4 | 3月14日(日)13:00 | 浦和レッズ H | 日産ス | DAZN |
5 | 3月17日(水)19:00 | 徳島ヴォルティス H | ニッパツ | DAZN |
6 | 3月21日(日)14:00 | ガンバ大阪 A | パナスタ | DAZN |
7 | 4月3日(土)13:00 | 湘南ベルマーレ H | 日産ス | DAZN |
8 | 4月6日(火)19:00 | セレッソ大阪 H | 日産ス | DAZN |
9 | 4月11日(日)14:00 | ベガルタ仙台 A | ユアスタ | DAZN |
10 | 4月16日(金)19:00 | 北海道コンサドーレ札幌 A | 札幌ド | DAZN |
11 | 4月24日(土)14:00 | 横浜FC H | 日産ス | DAZN |
12 | 5月1日(土)14:00 | FC東京 A | 味スタ | DAZN |
13 | 5月9日(日)13:00 | ヴィッセル神戸 H | 日産ス | DAZN |
14 | 5月15日(土)15:00 | 鹿島アントラーズ A | カシマ | DAZN |
15 | 5月22日(土)17:00 | 柏レイソル H | 日産ス | DAZN |
16 | 5月26日(水)19:00 | 大分トリニータ A | 昭和電ド | DAZN |
17 | 5月30日(日)13:00 | 清水エスパルス H | 日産ス | DAZN |
18 | 6月19日(土)17:00 | 名古屋グランパス A | 豊田ス | DAZN |
19 | 6月23日(水)19:00 | サガン鳥栖 H | ニッパツ | DAZN |
20 | 6月27日(日)18:00 | 徳島ヴォルティス A | 鳴門大塚 | DAZN |
21 | 7月3日(土)19:00 | 柏レイソル A | 三協F柏 | DAZN |
22 | 7月10日(土)18:00 | アビスパ福岡 H | ニッパツ | DAZN |
23 | 8月9日(月・祝)18:00 | 清水エスパルス A | アイスタ | DAZN |
24 | 8月13日(金)19:00 | 大分トリニータ H | ニッパツ | DAZN |
25 | 8月21日(土)18:00 | ベガルタ仙台 H | ニッパツ | DAZN |
26 | 8月25日(水)19:00 | サガン鳥栖 A | 駅スタ | DAZN |
27 | 8月28日(土)19:00 | 鹿島アントラーズ H | 日産ス | DAZN |
28 | 9月11日(土)or 9月12日(日) | サンフレッチェ広島 A | Eスタ | DAZN |
29 | 9月18日(土)or 9月19日(日)or 9月20日(月・祝) | 名古屋グランパス H | ニッパツ | DAZN |
30 | 9月25日(土)or 9月26日(日) | 横浜FC A | ニッパツ | DAZN |
31 | 10月1日(金) | 湘南ベルマーレ A | レモンS | DAZN |
32 | 10月16日(土)or 10月17日(日) | 北海道コンサドーレ札幌 H | 日産ス | DAZN |
33 | 10月23日(土)or 10月24日(日) | セレッソ大阪 A | ヨドコウ | DAZN |
34 | 未定 | FC東京 H | 未定 | DAZN |
35 | 未定 | ガンバ大阪 H | 未定 | DAZN |
36 | 11月20日(土) | 浦和レッズ A | 埼玉 | DAZN |
37 | 11月27日(土) | ヴィッセル神戸 A | ノエスタ | DAZN |
38 | 12月4日(土) | 川崎フロンターレ H | 日産ス | DAZN |
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