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リヴァプール

【コラム】日本人のプレミアリーグ挑戦史「クロップ監督の薫陶は南野の将来に大きなプラスをもたらす」| 粕谷秀樹のNOT忖度

【コラム】日本人のプレミアリーグ挑戦史「クロップ監督の薫陶は南野の将来に大きなプラスをもたらす」| 粕谷秀樹のNOT忖度(C)Getty Images
【欧州・海外サッカー コラム】リヴァプールの南野拓実がベンチ外になるなど試練に直面している。とはいえユルゲン・クロップ監督の信頼を失ったわけではない。むしろ指揮官からの「薫陶は南野の将来に大きなプラスをもたらす」。

中田はプレミアでも活躍できたはず

いま、メジャーリーグは大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)の話題で持ちきりだ。投げて打って走って……もはや超人ではないか。「ショウヘイ、キュンです」と、日本語で実況するアナウンサーまで現れた。

また、イチローはシアトル・マリナーズで、松井秀喜はニューヨーク・ヤンキースで大活躍し、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希も、2~3年後には太平洋を渡る公算が非常に大きい。

翻って、プレミアリーグの日本人、である。

これまでにサポーターの心を完全につかんだ選手はただひとり、岡崎慎司だ。プレッシングの権化として、2015-16シーズンのレスターに貢献。決して手を抜かず、20~30メートルほど離れている相手ボールホルダーに襲いかかる様は、美しさえあった。

36試合・5得点。特筆すべきデータではないものの、岡崎の場合は数字に現れない貢献度が非常に高く、彼がいなければ奇跡のリーグ優勝は成し遂げられなかったに違いない。

ピッチを退く際、万雷の拍手が贈られた。レスターのサポーターは、労を惜しまずに体を張り続けた岡崎に心から感謝し、リスペクトさえしていた。

選手個々の技量を踏まえれば、中田英寿は岡崎を上まわる。ASローマに所属していた当時は、あのフランチェスコ・トッティが神経質になるほど戦略・戦術的にすぐれていた。

ただ、プレミアリーグではクラブの選択を誤った。05年から1年間、中田がプレーしたのはボルトン・ワンダラーズ(フィオレンティーナからローン)で、率いていたのは、あのサム・アラダイスである。ロングボール・ドカーン、ヘディング・ドーン。典型的なオールドスタイルの指揮官だ。

細かいパスワークを身上とする中田の頭上をボールが通り過ぎていく。ほとんどボールに触れず、ピッチ内を上下動するだけ……。どのような経緯でボルトンに加入したのだろう。よりテクニカルなクラブであれば、ポゼッションを意識した監督であれば、中田はプレミアリーグでも活躍できたはずだ。返す返すも、選択ミスは残念だ。

「タキの貢献を忘れないでほしい」

2021-11-24 MINAMINO KLOPP LIVERPOOLGetty Images

中田に限らず、監督との出会いやクラブの選択は、選手たちの将来を左右する。「プレミアリーグで成功したい」という野心はもちろん大切だが、みずからの個性とかけ離れたクラブ、監督では成功できない。

こうした事情を踏まえると、南野拓実のリヴァプール移籍は正解だった。たしかにいま、ベンチにすら入れない日々が続いている。モハメド・サラー、サディオ・マネ、ディオゴ・ジョタ、ルイス・ディアスなど、ポジションを争うライバルがいずれも世界水準であるための、あまりにも高度なお家事情だ。

「タキ(南野の愛称)をメンバーから外すのは断腸の思い」

ユルゲン・クロップ監督もせつなく、苦しい胸の内を明かした。

しかし、彼は南野をつねに気にかけている。リーグカップで優勝したとき、FAカップで決勝に進出した際も、「タキの貢献を忘れないでほしい」とメディアに訴えた。公の場で選手を名指しで批判する、マンチェスター・ユナイテッドのラルフ・ラングニック暫定監督のような愚者ではない。

クロップ監督はつねに体を張り、不当な批判から選手を守ってきた。ビッグネームだろうが、イングランド人の古参だろうが、アカデミー出身の若手だろうが、日本人だろうが、フェアな姿勢を貫いている。

契約時に重視すべき条件

やはり、出会いは重要だ。クロップ監督の薫陶は、南野の将来に大きなプラスをもたらす。しかもリヴァプールの強化担当部門は、「日本人と契約すればおいしいスポンサー契約が得られる」という邪心がない。あくまでも実力優先。日本人選手がプレミアリーグのクラブと契約するにあたり、重視すべき条件のひとつだ。

アーセナルの冨安健洋は、ミケル・アルテタ監督たっての希望で獲得した。両サイドバック、センターバック、守備MFをこなすポリバレントな才能に惚れ込み、瞬く間に交渉をまとめたという。冨安の活躍に関しては改めていうまでもなく、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督が興味津々とまで伝えられはじめている。

冨安も南野も、所属するクラブのプランに適していた。岡崎もレスターの堅守速攻に100%合致するタレントだった。

香川真司もアレックス・ファーガソン監督のリクエストにより、ドルトムントからユナイテッドにやって来た。結果としてはほろ苦かったものの、ウェイン・ルーニーやリオ・ファーディナンド、マイケル・キャリックといった主力は、香川と楽しそうにプレーしていた。

いま、日本人選手に注目するプレミアリーグのクラブも少なくはない。ただ、世界最高峰だからで飛びつかず、どのようなゲームプランなのか、監督は頑固なのか柔軟なのか、十分に吟味しなくてはならない。

中田のように、あるいはニューカッスルでラファ・ベニテス監督にまったくはまらなかった武藤嘉紀のように、クラブの戦略と批評が合わない場合は、仮に好条件のオファーだったとしても、断る勇気が必要だ。

文・ 粕谷秀樹

1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。

粕谷秀樹のNOT忖度

配信情報

プレミアリーグ第37節
サウサンプトン対リヴァプール

  • 配信: DAZN
  • 配信開始:5月18日(水)3時45分
  • 解説:林陵平 実況:藤田崇寛
  • 会場:セント・メリーズ・スタジアム

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