総ゴール数の48%に関与する
もはや異次元の選手だ。突き抜けた感がある。えっ、だれのことかって!?
モハメド・サラーである。
とにかく凄い、凄すぎる。彼が前を向いた瞬間、対峙するマーカーは異様な緊張感に足がすくみ、スタジアムの期待値は最高潮に達する。
あくまでも私見だが、今シーズンのサラーは全盛期のリオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドに勝るとも劣らない。いやいや、彼らをはるかにしのぐオーラを漂わせながら、ピッチを躍動している。
スペースに走り込みながらボールを受け、スピードに乗ったままシュートを放つまでの流れは天下一品・世界一。7節のマンチェスター・シティ戦では、名GKエデルソンの読みを嘲笑うかのようなタイミングで、ほんのわずかな隙間を撃ち抜いた。
このゴールも含め、プレミアリーグでは15ゴール・9アシスト。ともにランキングのトップに立ち、リヴァプールが挙げた総ゴール数の48%に関与する八面六臂の大活躍である。
ちなみに、ゴールに絡まなかった試合は2節のバーンリー戦と18節のトッテナム戦だけだ。さらに、チャンピオンズリーグのグループステージでもホームでのアトレティコ戦を除く5試合で7ゴールを挙げている。今シーズンのサラーは手が付けられない。
トレント=アレクサンダー・アーノルドの貢献度も非常に高い。アシスト数8はサラーに次ぐ単独2位。一昨シーズン、みずからがマークした13アシストの更新を、シーズンの折り返しを待たずして視野に入れている。
彼の右足が繰り出すフィードは、まさに正確無比だ。17節のニューカッスル戦で決めた美しい弾道を描く一撃は、年間ベストゴールにノミネートされるに違いない。
ユルゲン・クロップ監督も絶賛した。
「まるでスティーヴン・ジェラードを見ているかのようだった」
あのスーパーヒーローに思いを馳せるほど、アレクサンダー・アーノルドのミドルはインパクトがあった。いいものを見せてもらった。
サラーとマネはアフリカ選手権に?
では、ここからリヴァプールの日程をチェックしていこう。
- 12月26日:リーズ(H)
- 12月28日:レスター(A)
- 1月2日:チェルシー(A)
- 1月6日:アーセナル(A)
- 1月9日:シュールズバリー(H)
- 1月13日:アーセナル(H)
- 1月16日:ブレントフォード(H)
- 1月23日:クリスタルパレス(A)
ボクシングデイに対戦するリーズは夏の補強がままならず、選手層の薄さが災いして主力が勤続疲労を起こしている。FAカップ3回戦で相まみえるシュールズバリーはリーグ1(実質3部)のクラブだ(※編集部注/23日、新型コロナの蔓延に伴うリーズ戦の延期が決定)。
しかし、残る5チームはなかなかタフな相手である。レスターとチェルシーは言わずもがなで、アーセナルとの2試合はリーグカップ準決勝だ。また、ブレントフォードは決してあきらめず、クリスタルパレスはパトリック・ヴィエラ監督のもと、ハイプレス・ポゼッション型への意識改革が急ピッチで進んでいる。中心選手のMFコナー・ギャラガーは、メガクラブでも十分に通用するタレントだ。
しかも、リヴァプールは向こう1ヶ月、ベストメンバーを組めそうにない。来年1月9日に開幕予定のアフリカネーションズカップ(アフリカ選手権)に、サラーはエジプト代表として、サディオ・マネはセネガル代表として招集される公算が大きいからだ。
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスにより、アフリカ選手権は延期になるかもしれないが、すでに二度も延期している。今シーズン終了後に開催とのプランも浮上しているとはいえ、来年の冬にはカタール・ワールドカップが控えている。アフリカ選手権の日程は動かしづらい。
ファン・ダイクへの無理強いは禁物
また、さすがの落ち着きで最終ラインを締め、対戦相手のゲームプランを100%無効化する無慈悲なまでのロングフィードで攻撃に彩りを加えるCBフィルジル・ファン・ダイクの体調管理にも、細心の注意を払わなくてはならない。
昨シーズンの重傷から立ち直ったようには映る。ただ、前十字靭帯断裂で10ヶ月も欠場したのだから、右膝の状態を入念にチェックし、ドクターが「NO」と言ったらできる限り休ませた方がいい。無理強いだけは禁物だ。
しかも、いままでにだれも経験していないパンデミックが続き、世界中が戸惑っている。それでもプレミアリーグはすでに二桁を優に超える試合が延期になっているというのに、過密日程を緩和する兆しさえ見えない。
当然、負傷のリスクが高まり、ファン・ダイクのように長期欠場明けのシーズンを闘う者は、他の選手よりも疲労が蓄積している。
前半戦のリヴァプールは順調だった。南野拓実の活躍で、リーグカップは準決勝に進出した。しかし、来年1月に3人の主力を一気に失うケースも考えられる。ここは一度、ペース配分を、ゲームプランを再考すべきだ。
底力はプレミアリーグ屈指だ。シーズンを通して全力疾走する必要はない。
文・ 粕谷秀樹
1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。
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