2020-21シーズンのドニー・ファン・デ・ベークには失望するしかなかったが、エディンソン・カバーニは26試合・10得点。絶妙の動き出しと正確なフィニッシュで貢献した。また、19-20シーズンはアーロン・ワン=ビサカ、ブルーノ・フェルナンデスが即フィットするなど、近ごろのマンチェスター・ユナイテッドは補強が当たっている。
この夏は、ポール・ポグバが現行の契約(2022年6月満了)を5年も延長するかもしれない。なに!? 5年だと!? 巨額を動かしづらいコロナ禍の移籍市場を踏まえたのか、あるいはエージェントのミーノ・ライオラが悪知恵を授けたのか。いずれにせよ、創造力あふれるMFが残留となれば非常に大きい。
B・フェルナンデスの負担も軽減する可能性
そしてようやく、いよいよ、ついに、ジェイドン・サンチョの獲得が近づいてきた。選手本人とはすでに合意し、彼が所属するドルトムントとの交渉も大詰めを迎えている。読者の皆さんが拙稿に目を通すころ、ユナイテッドとの契約書にサインするサンチョの姿が、世界中に配信されているに違いない。
さて、20-21シーズンのサンチョは26試合に出場し、8得点・11アシスト。ドルトムントが挙げた75得点の約25%に関与していた。足もとにボールが貼り付いたかのようなドリブルで相手DFをかわし、精度の高いスルーパスで数多くのチャンスを創出した。
また、緩急のリズムをつける術に長け、なおかつ狭いスペースでもボールロストが少ない。マーカス・ラッシュフォード、アントニー・マルシャル、ダニエル・ジェイムズなどは広いスペースを欲するタイプだけに、対戦相手が低目の守備ブロックを形成すると崩せないケースが多かったが、低かろうが狭かろうが、サンチョは苦にしない。ユナイテッドの攻撃に、大きなプラスをもたらすはずだ。
さらにプレーメーカーとして機能できる。B・フェルナンデスの負担も軽減する可能性が出てきた。
両ウイングをこなせるサンチョの獲得により、ユナイテッドの定位置争いは激化する。メイソン・グリーンウッドは進化のために生存競争を闘い抜かなければならず、ラッシュフォードも安泰ではない。足もとにパスが来ないだけで不貞腐れ、プレスバックも怠るマルシャルは、ひょっとすると構想外か。
いや、定位置争いを好まないのなら、レギュラーの座を約束しろというのなら、いますぐにみずから辞めるべきだ。20-21シーズン、ポルトからやって来たアレックス・テレスが刺激になり、ルーク・ショーは見事な復活を遂げた。ディーン・ヘンダーソンのローンバックは、のんびりと構えていたダビド・デ・ヘアの闘争心に火をつけた。
サンチョ、ラッシュフォード、グリーンウッド、マルシャル、D・ジェイムズを揃えるウイングは質量ともに十分であり、ここにサイドでもプレー可能なポグバとフアン・マタを加えると、実に7人が居並ぶ強力な陣容だ。チャンピオンズリーグを含め、21-22シーズンのユナイテッドは年間50~60試合を闘うのだから、数を揃えるのに越したことはない。
世界水準のCBが是が非でも必要
この夏、ユナイテッドはセンターバックの補強も目論んでいる。ハリー・マグァイア、ヴィクトル・リンデレフ、エリック・バイリーの3人では足らなすぎる。世界水準の名手が是が非でも必要だ。
レアル・マドリードに近いスペインの有力紙『AS』は、「ラファエル・ヴァランがユナイテッドに移籍」と報じていた。28歳という年齢を考慮し、新しいチャレンジを熱望。クラブ側もヴァランがフリートランスファーとなる来年6月末日を待たず、移籍金が発生する今夏の放出を決定したという。
仮にヴァランを獲得できるのなら、ユナイテッドの最終ラインは安定する。スピード、空中戦、状況判断のいずれもが申し分なく、ビルドアップ能力も高い。マグァイアの負担を軽減するどころか、DFリーダーの座を奪える超一級品のCBだ。最終ラインの強度は大幅に増すといって差し支えない。
現在進行中の補強プランが滞りなく進めば、マンチェスター・シティやリヴァプールとも互角に闘える陣容が整う。オーレ・グンナー・スールシャール監督の経験不足は気になるものの、チーム力だけは20-21シーズンをしのぐレベルに到達する。
21-22シーズンの開幕は現地時間8月14日、本拠オールド・トラッフォードにおけるリーズ戦だ。難敵を相手にサンチョが躍動するのか!? ヴァランが鉄壁の守りを見せるのか!?
文・粕谷秀樹
1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。
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