プレミアリーグの2020-21シーズンも大詰めがやって来た。優勝、チャンピオンズリーグ(CL)出場権、トップ10など、各クラブはそれぞれの目標に向かって総力戦を覚悟しなければならない。
マンチェスター・ユナイテッドのアントニー・マルシャルに告ぐ。
「最後の8~9試合ぐらいは働いてくれないか」
さて、残留争いも要注目だ。
04-05シーズンはキーラン・リチャードソンの孤軍奮闘によりウェストブロムが、06-07シーズンにはカルロス・テベスとハビエル・マスチェラーノの活躍でウェストハムが、さらに14-15シーズンはレスターが最終盤を7勝1分2敗で駆け抜けてプレミアリーグの座を守ったように(翌シーズンに奇跡のリーグ優勝!)、最後の最後で本領を発揮するクラブも少なくはない。
「落ちてたまるか」という反骨心が力に変わる。
やはり気持ちは大切だ。16-17シーズンまでマンチェスター・シティに所属し、熱いプレーでサポーターに支持されていたパブロ・サバレタも、次のように語っていた。
「緻密な戦略に基づく戦術は絶対に必要だ。ノープランでは勝てないからね。ただし、精神的な部分を疎かにしていると痛い目に遭う。勝利の比重としては、精神面が7~8割を占めるんじゃないかな」
ビエルサが絶賛するフラム指揮官
追い込まれたときこそ真の勇気が試される。シティやユナイテッド、あるいはチェルシーが相手でも引分けではなく、3ポイントを奪いにいく積極的な姿勢こそが残留ルートなのだろう。
シェフィールド・ユナイテッド(残留圏の17位に勝ち点14差の20位)とウェストブロム(同10差の19位)の降格は避けられないが、彼らにも意地がある。CL出場権争いをかく乱するような抵抗に期待したい。
ここで、リーズを率いるマルセロ・ビエルサ監督のコメントに耳を傾けてみよう。
「素晴らしい監督だ。守備的にならず、前線のタレントを最大限に生かすプランで闘いはじめた。彼らならプレミアリーグに残れると思う」
ビエルサ監督は、フラムのスコット・パーカー監督(上写真)を絶賛した。
チャンピオンシップ(実質2部)で通じたポゼッションスタイルがプレミアリーグでは意味をなさなかったり、新型コロナウイルスの陽性反応者が出たり、今シーズンのフラムは思うように事が運ばなかった。開幕から1引分けを挟む5連敗を喫したときは、パーカー監督もかなり落ち込んでいた。
しかし、現役当時も白旗を掲げず、闘う姿勢だけは崩さなかった指揮官のマインドが、選手たちに徐々に浸透していった。1月のチェルシー戦とユナイテッド戦に敗れたものの、ともに1点差。ポイントが加算されても不思議ではない試合内容だった。そして3月のリヴァプール戦で1-0の勝利。
「俺たちはできる」
フラムには自信が芽生えつつある。
ニューカッスルは監督と主力が対立
30節終了時点で18位。17位のニューカッスルは消化試合がひとつ少ないが、わずか2ポイント差だ。しかも2月以降は3勝3分4敗と、フラムはパフォーマンス自体も落ち着いてきた。
一方、ニューカッスルは戦術をめぐり、スティーヴ・ブルース監督(写真中央)と主力の対立が明らかになった。反骨心が対戦相手ではなく、違った形でネガティヴに反応する危険度が高い。
4月中旬には、フラムとニューカッスルの立場が逆転するのではないだろうか。
一時は絶望的だったプレミアリーグ残留に、ひと筋の光が差し込んできた。強い気持ちを全面に押し出すパーカー監督のもと、フラムは上昇機運をつかもうとハードワークを続けている。
アーセナル戦(日本時間4月17日)とチェルシー戦(同5月1日)が残っている。37節はユナイテッド戦(同5月15日)で、最終節はニューカッスル戦(同5月24日)だ。次々にプレッシャーが襲いかかる。
しかし、残留争いの当面のライバルとなったニューカッスルも、トッテナム戦(日本時間4月4日)、リヴァプール戦(同4月24日)、アーセナル戦(同5月1日)、レスター戦(同5月8日)に加え、シティ戦(同5月13日)までスケジューリングされている。
同じ難局でも、精神的充実が感じられるフラムの方が、プレミアリーグの座を死守する公算が大きくなってきた。
シティユース出身のトゥシン・アダラバイヨ、チェルシーからローン移籍のルーベン・ロフタス=チーク、ドイツが誇る知将ラルフ・ラングニックも認めた逸材アデモラ・ルックマンなど、有能なタレントも十分に揃っている。
文・粕谷秀樹
1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。
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