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マンチェスター・ユナイテッド

【コラム】ユナイテッドでの日々が終焉へ…ポグバは華麗なラストダンスを舞えるか | 粕谷秀樹のNOT忖度 | プレミアリーグ

【コラム】ユナイテッドでの日々が終焉へ…ポグバは華麗なラストダンスを舞えるか | 粕谷秀樹のNOT忖度 | プレミアリーグ(C)Getty Images
【欧州・海外サッカー コラム】マンチェスター・ユナイテッドとの契約がまもなく満了となるポール・ポグバ。稀代のMFは最後に華麗なラストダンスを舞い踊るだろうか。

失望が期待を大きく上まわる

貴方の好きな人と踊ってらしていいわ

やさしい微笑みも

その方におあげなさい

けれども私がここにいることだけ

どうぞ忘れないで

1961年、岩谷時子さんが訳詩され、越路吹雪さんが歌われた「ラストダンスは私に」の一節である。後に倍賞千恵子さんや萩原健一さん、中森明菜さん、最近では福山雅治さんなど、数多くの方がカバーしたことでも知られる名曲だ。

移り気な男に愛想をつかしながら、「だれかと付き合っていらっしゃい。でも、いつかきっと帰ってきてね」と、信じて待つ女性の心を表現した内容が、多くの共感を呼んでいるという。

ポール・ポグバは、結局マンチェスター・ユナイテッドには帰ってこなかった。レアル・マドリードやパリ・サンジェルマン、ユヴェントスなどへの移籍をちらつかせ、つねにフワフワしていた。

本心なのか、エージェントのミーノ・ライオラに操られているだけなのか。サポーターも上層部も真意を測りかねていた。そのくせ、ときおり超ウルトラスーパー・パフォーマンスで人々を虜にする。今シーズンも開幕2戦で7アシスト。

「おっ、今度こそ!」

その後は右大腿部の負傷も災いし、4月9日現在のデータは1ゴール・9アシスト。スタート直後から上乗せできず、失望が期待を大きく上まわっている。

「あっ、やっぱりな」

契約を延長する気はさらさらない

「この7年、ユナイテッドは一貫性を欠いている。俺も決して本意ではないポジションでプレーしてきた」

フランス・メディアに踊ったひと言は、仮に前後をバッサリ切り取られていたとしても、サポーターにすれば裏切りでしかない。

「お前さんはそこまでいえるほど貢献したのかい?」

天賦の才はだれもが認めるところだ。ツボにはまったときの一挙手一投足はまさに世界水準で、楽しみながら対戦相手を凌駕する。絶妙なスペースに、あるいは受け手の足もとにコントロールされたパスを配し、プレー強度を上げてボール奪取を試みるマーカーには柔軟な肉体で対応。バランスも崩さず、涼しい顔でフィニッシュ。相手のスキを見逃さず、強烈で芸術的なミドル。とにかくポグバは凄いのだ。

だからこそ、いつかユナイテッドのために闘ってくれる。ジョゼ・モウリーニョやオーレ・グンナー・スールシャール、ラルフ・ラングニックとそりが合わなくても、いつかきっと本領を発揮してくれると信じていたサポーターも少なくないはずだ。

しかし、ポグバの心はすでにユナイテッドから離れている。新監督がだれであろうが、新天地を求める公算が非常に大きい。一向に改善しないユナイテッドに嫌気が差したのか、プレミアリーグ特有のハイテンポは忙しすぎるとゲンナリしたのか。6月末日に満了を迎える現行の契約を延長する気はさらさらない。

タブロイド紙『Mirror』が報じた「週給8000万円で契約延長!?」は、おとぎ話が過ぎる。

せめて最後ぐらいは “ポグバ無双”

2022-04-09-Paul Pogba-Manchester United-Everton-Premier League(C)Getty Images

2021-22シーズンは大詰めを迎えた。ユナイテッドはチャンピオンズリーグ(CL)で準々決勝にすら進めず、プレミアリーグも優勝争いとは無縁。4位以内も絶望的だ。

せめて最後ぐらいは “ポグバ無双”。CL出場権をもたらす八面六臂の大活躍を期待したいが、近ごろのパフォーマンスから判断する限り、クラブのピンチも意に介していない。

18年4月7日のマンチェスター・ダービーで見せたギラつき(0-2からポグバの2発を含む3ゴールで大逆転)はどこかに置き忘れ、「ケガだけはしないように」といったぬるい感覚も伝わってくる。

アーセナルに負傷者が続出し、トッテナムも上向いているとはいえ基本的に不安定だ。したがって、ユナイテッドが4位以内に入るわずかばかりの可能性があるにもかかわらず、ポグバの心は来シーズン以降を見据えている。

ヘアスタイルをコロコロ変え、ときには奇抜なスタイリングで人々を驚かせるが、悪いヤツではない。ちょっとした応援と、ほんの少しの寛容をサポーターが差し出せば、彼らとユナイテッドのために華麗なるラストダンスを舞い踊るに違いないと信じていたが、チームの長引く不振にポグバの方が愛想を尽かした。

よくよく思い返してみると、ユナイテッドに在籍した7シーズンは、なにもいいことがなかった。16-17シーズンのヨーロッパリーグ優勝も、心から欲していたタイトルではない。

せつなすぎる記憶とともに、ポグバとユナイテッドの7年間がもうすぐ幕を閉じる。元気でな。

文・ 粕谷秀樹

1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。

粕谷秀樹のNOT忖度

配信情報

プレミアリーグ第33節
マンチェスター・U対ノリッジ

  • 配信: DAZN
  • 配信開始:4月16日(土)23時
  • 解説:水沼貴史 実況:河村太朗
  • 会場:オールド・トラッフォード

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