ユヴェントスとの契約をあと1年残しながら、今夏移籍の噂が後を絶たないクリスティアーノ・ロナウド。36歳のこのポルトガル人は果たして来季、どこでプレーしているのか。
その疑問に答えてくれたのが、カルチョメルカート(移籍市場)専門の敏腕記者として知られるジャンルカ・ディ・マルツィオ氏。ペップ・グアルディオラのバイエルン入りなど過去のスクープは数知れず、各クラブの強化担当でさえも一目置く人物だ。
残留か、それとも移籍か。業界きっての事情通がスーパースターの去就を占う。
※インタビューは5月26日に実施。ユヴェントスは28日にアンドレア・ピルロ監督の解任、29日にマッシミリアーノ・アッレグリの新監督就任を発表した。
愛車の運び出し映像は1年前のもの
ディ・マルツィオ記者:クリスティアーノ? 日本でもその去就に注目が集まっているようだね。あれほどのスタープレーヤーだ、それも当然だろう。
5月中旬だったかな。トリノのクリスティアーノ邸に大型トレーラーが横付けされ、愛車のスーパーカーが次々と運び込まれる動画が流出したのは。
あの映像を見たら、誰もが「移籍へ加速か?」と勘ぐってしまうよね。
ただあんな映像は、クリスティアーノの去就を占う手がかりには一切ならないよ。私が得た情報によれば、そもそもあの動画は1年前に撮影されたものだ。
それより私が最大の鍵として注目しているのが、ユーヴェの指揮官の動向だ。
ピルロを新監督に迎えた今季のユーヴェは周知のとおり、序盤から苦戦を強いられ、結局リーグ10連覇を逃した。
コッパ・イタリアを制し、最終的にリーグ戦4位でCL(チャンピオンズリーグ)出場権を得たが、現時点で来季の方針については不透明のままだ。
もしピルロ続投となれば、答えはいたって簡単。すべてはクリスティアーノ次第となるだろう。
2人の関係はいたって良好だ。ピルロがクリスティアーノを議論の対象にしたことは一度たりともなかったし、続投となれば、引き続き背番号7を中心としたチーム作りを進めていくはずだからね。
従ってその場合、すべてはクリスティアーノの判断に委ねられることになる。
問題は、アッレグリ再招聘の噂が実現した場合だ。状況はガラッと変わる。
クリスティアーノがユーヴェに加入したのは2018-19シーズン。アッレグリが去ることになったシーズンだ。つまり両者は過去に1シーズンだけ、一緒に戦った経験がある。
すでに互いを知る間柄ということになるが、その関係はピルロとのそれと比べ、決して良いものではなかった。少なくとも私はそう聞いている。
フィーリングがまったく合わなかったみたいだね。お互いの意見が一致したことは一度もなかったようだ。もちろん人間性の部分ではない、戦術面での話しだ。
だからアッレグリが復帰したとしたら、おおよその想像はつく。少なくとも、両者がどう考えるだろうかはね。
当然、クリスティアーノは移籍をより強く念頭に置くことになるだろう。そしてそれは、アッレグリにとって願ったりかなったりかもしれない。
実際、アッレグリはユーヴェに復帰したら、クリスティアーノ抜きでの再スタートを望んでいるとの情報がある。
となると、スーパースターの新天地はどこになるか。ここからは移籍先について予想してみよう。
ポグバと交換トレードの可能性も
本題に移る前に、まず触れておくべきポイントがある。それはクリスティアーノの高額なサラリーについてだ。
その額、3100万ユーロ(約40億3000万円)。コロナ禍の今、これほどのサラリーを払おうとするクラブがどれだけあるか。
私が知る限り、該当クラブは2つだけ。パリ・サンジェルマン、そしてもう1つがクリスティアーノの古巣でもあるマンチェスター・ユナイテッドだ。
もちろんこの2クラブにしても、大金が動くビッグディールだ。交渉がそう簡単に成立するとは考えにくい。
そこで想定されるのが、交換トレード、または玉突きのような形での移籍実現だ。
例えば、パリ・サンジェルマン。キリアン・エンバペが噂されているレアル・マドリードに移籍したと仮定する。そうなると、クリスティアーノには後釜としてパリ行きの芽が出てくるだろう。
マンチェスター・ユナイテッドに関しては、ポール・ポグバが鍵を握っているかもしれない。
28歳のこのフランス人は、かねてからユーヴェ復帰を望んでいると言われている。双方の利害が一致すれば、クリスティアーノとの交換トレードが成立する可能性は十分にあるだろうね。
いずれにせよ、巨額が動く大型移籍になることは間違いない。
ユーヴェはマドリーからクリスティアーノを獲得する際、1億ユーロ(約130億円)という莫大な移籍金を費やした。
そして、クリスティアーノはユーヴェとの契約をあと1年残している。従ってユーヴェがクリスティアーノを放出するならば、1億ユーロを4分割した2500万ユーロ(約32億5000万円)を最低でも要求するはずだ。
そうでもしなければ、大きな損失を出すことになるからね。
パリ・サンジェルマンが有力な移籍先
つまり、クリスティアーノを獲得したいクラブは、移籍金2500万ユーロ、加えて高額なサラリーを用意しないといけないことになる。
たしかに、マドリー復帰説もあった。ただ私の知る限り、その線はもう消えている。会長のフロレンティーノ・ペレスが、復帰計画をすでに諦めたとの情報だ。
ペレスにとってクリスティアーノはもう過去の選手も同然。今狙っているのは、エンバペだ。22歳とまだ若いこのフランス人アタッカーのことを、ペレスは「NEWクリスティアーノ」と捉えているみたいだね。
それから彼のエージェント、ジョルジュ・メンデスという存在も忘れてはならないね。
クリスティアーノと同じこのポルトガル人は、ジョゼ・モウリーニョなども顧客に抱える敏腕エージェント。何がすごいかって、そのひらめき、思いつきだ。
あふれ出るアイデアと頭脳を駆使し、彼はこれまでいくつもビッグディールを実現させてきた。今もクリスティアーノの移籍を想定して、あらゆる解決策を頭の中に巡らせているはずだよ。
個人的な予想では、パリ・サンジェルマンが有力な移籍先だ。
クリスティアーノは現在36歳とベテランの域に達している。ただ、まだまだ違いを見せられるフィジカルをキープしている。しかもこれまでのキャリアでケガはほとんどしていない。彼に限って言えば、年齢は無関係だろうね。
パリ・サンジェルマンはソーシャルメディアなどを積極的に用い、世間的なアピールを重要視しているクラブ。注目度抜群のクリスティアーノの獲得は、彼らにとってそれこそもってこいだ。
マーチャンダイジングもさらに発展させられるチャンスだし、それによってクラブの実入りも確実に増えるだろうからね。
クリスティアーノが今夏、パリに新天地を求めたとしても、それは私にとって予想範囲内だよ。
結論を言えば、クリスティアーノが今夏に移籍する可能性はかなり高いとみている。
インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之
訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。
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