“シーズン初ゴール”に込めた強い気持ち
目の前に立ちはだかる「1点」の壁。清水エスパルスのMF鈴木唯人は、プロ1年目の昨シーズンに乗り越えられなかった壁を打破しようともがいている。
強い気持ちは、今シーズン初の対外戦となった1月27日の常葉大学との練習試合で早速表れていた。1本目に出場した鈴木は、ロングボールに抜け出した際、相手GKに倒されてPKを獲得。この時、ピッチ内にはボールが“二つ”あった。一つは、新加入のブラジル人FWチアゴ・サンタナが「俺が蹴る」と言わんばかりに抱えていた。しかし、ポルトガルリーグで得点王争いを繰り広げてきた実力者の威厳に満ちた振る舞いにも、鈴木は怯まなかった。
「最初、サンタナが蹴りそうになっていたんですけど、結果を残したかったのは自分も同じ。ここで譲っていちゃダメだと思って、『自分で蹴るよ』と言って蹴りました」
この“シーズン初ゴール”で弾みをつけた鈴木は、その後行われた練習試合でもコンスタントに結果を残し、開幕に向けて好アピールを続けてきた。
リーグ戦30試合出場も0得点。昨シーズンは「しっくりこない」
振り返れば昨シーズンの開幕前は、紅白戦すら参加させてもらえず、他の若手選手たちとともにピッチ脇でボール回しをしていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響による中断期間を経てチャンスをつかむと、終わってみればリーグ戦30試合に出場してルーキーイヤーの幕を閉じた。
「最初の頃は、自分でもホント笑っちゃうぐらい別メニューの日々だったんです。だけどその時に、試合に出られない状況が“普通”だと思えたのが良かったのかもしれない。プライドを全部捨てて、“できなくて当たり前”だと思いながら、試合に出る準備を続けてきた。あれだけ試合に出られるとは自分も予想してなかったし、多くの人の予想を超えられたんじゃないかなと思います」
「シュートまでの形はしっかり持っている」(中村慶太)と言われるように、出場した試合では、時間が短くとも前への推進力を発揮し、数多くのチャンスを演出した。ただ、自分自身でゴールネットを揺らすことは一度もなかった。だから、昨シーズンを総括すると「しっくりこない」という言葉に集約される。
23番の重みは分かっている。「でも、自分は自分」
最終節のガンバ大阪戦で、同い年の川本梨誉(今シーズンはファジアーノ岡山へ育成型期限付き移籍)がプロ初ゴールを決めたことも、悔しい気持ちに拍車をかけた。
「先に決められて素直に悔しかったし、それで今シーズンは移籍してしまうなんて、“結果残して逃げられた”感じじゃないですか(苦笑)。でも、同い年に『負けられないな』って思わせてくれるライバルがいるのは良いこと。だから、梨誉のことはすごく大事な存在だと思っています」
最初の1点が取れれば、見える世界が変わる。自分自身の感覚も、発する言葉も変わる――。同じ悩みを抱えてきた先輩や、スタッフ陣によく言い聞かされてきた。
しかし、チャンスを待つのではなく、変わらなければいけないのは自分自身。そのために「勝負の年」と位置付けた今シーズンは、覚悟を持って「2桁ゴール」を目標に定めた。
今シーズンから背番号が「23」に変わった。かつては岡崎慎司や北川航也、昨シーズンはティーラシン・デーンダーと、いずれも代表クラスの選手たちが背負ってきた清水のエースナンバーだ。アカデミー出身で、北川をよく慕う立田悠悟からは「エスパルスにとっての23番は、本当に特別な番号だから」と重みを伝えられた。
「自分はアカデミー出身ではないけれど、今まですごい人たちがつけてきた番号だということは分かっています。でも、自分は自分でしかないから。あまり気にしすぎても上手くいくタイプではないので、毎日死にもの狂いでやること、結局はそこだなと。謙虚にやり続けることで、自ずと結果はついてくると信じています」
「唯人」という名前に導かれるように、「他の誰とも被らない、唯一のプレースタイルを持ちたい」と度々口にする鈴木は、「0得点」という数字を今後への伸びしろだと捉えている。「0」が「1」に変わった時、新たな23番は成長速度を増し、クラブの歴史に確かな足跡を刻んでいく。
文・平柳麻衣
1992年生まれ、静岡県出身。静岡を拠点に活動するフリーライター。清水エスパルスを中心に、高校・大学サッカーまで幅広く取材。『サッカーキング』や『S-PULSE NEWS』などに寄稿する。
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清水エスパルスの試合日程
節 | 日時 | 対戦カード | スタジアム | 配信・放送予定 |
---|---|---|---|---|
1 | 2月27日(土)15:00 | 鹿島アントラーズ A | カシマ | DAZN |
2 | 3月6日(土)14:00 | アビスパ福岡 H | アイスタ | DAZN テレビ静岡 |
3 | 3月10日(水)19:00 | セレッソ大阪 A | ヤンマー | DAZN |
4 | 3月14日(日)14:00 | サガン鳥栖 H | アイスタ | DAZN 静岡放送 |
5 | 3月17日(水)19:00 | サンフレッチェ広島 A | Eスタ | DAZN |
6 | 3月21日(日)16:00 | 柏レイソル A | 三協F柏 | DAZN |
7 | 4月4日(日)14:00 | 徳島ヴォルティス H | アイスタ | DAZN |
8 | 4月7日(水)19:00 | 浦和レッズ H | アイスタ | DAZN |
9 | 4月11日(日)17:00 | ヴィッセル神戸 A | ノエスタ | DAZN |
10 | 未定 | ガンバ大阪 A | 未定 | DAZN |
11 | 4月25日(日)14:00 | 湘南ベルマーレ H | アイスタ | DAZN |
12 | 5月2日(日)14:00 | 大分トリニータ A | 昭和電ド | DAZN |
13 | 5月9日(日)14:00 | 横浜FC H | アイスタ | DAZN |
14 | 5月15日(土)14:00 | 名古屋グランパス H | アイスタ | DAZN |
15 | 5月22日(土)14:00 | 北海道コンサドーレ札幌 A | 札幌ド | DAZN |
16 | 5月26日(水)19:00 | FC東京 H | アイスタ | DAZN |
17 | 5月30日(日)13:00 | 横浜F・マリノス A | 日産ス | DAZN |
18 | 6月19日(土)19:00 | 川崎フロンターレ H | アイスタ | DAZN |
19 | 6月23日(水)19:00 | ベガルタ仙台 A | ユアスタ | DAZN |
20 | 6月27日(日)18:00 | 横浜FC A | ニッパツ | DAZN |
21 | 7月4日(日)18:00 | 大分トリニータ H | アイスタ | DAZN |
22 | 7月11日(日)18:00 | 徳島ヴォルティス A | 鳴門大塚 | DAZN |
23 | 8月9日(月・祝)18:00 | 横浜F・マリノス H | アイスタ | DAZN |
24 | 8月13日(金)19:00 | ガンバ大阪 H | アイスタ | DAZN |
25 | 8月21日(土)19:00 | 湘南ベルマーレ A | レモンS | DAZN |
26 | 8月25日(水)19:00 | 鹿島アントラーズ H | アイスタ | DAZN |
27 | 8月29日(日)18:00 | 名古屋グランパス A | 豊田ス | DAZN |
28 | 9月11日(土)or 9月12日(日) | サガン鳥栖 A | 駅スタ | DAZN |
29 | 9月18日(土)or 9月19日(日)or 9月20日(月・祝) | ベガルタ仙台 H | アイスタ | DAZN |
30 | 9月24日(金) | ヴィッセル神戸 H | アイスタ | DAZN |
31 | 10月2日(土)or 10月3日(日) | アビスパ福岡 A | ベススタ | DAZN |
32 | 10月16日(土)or 10月17日(日) | 柏レイソル H | 未定 | DAZN |
33 | 10月23日(土)or 10月24日(日) | 川崎フロンターレ A | 等々力 | DAZN |
34 | 未定 | 北海道コンサドーレ札幌 H | 未定 | DAZN |
35 | 未定 | FC東京 A | 未定 | DAZN |
36 | 11月20日(土) | サンフレッチェ広島 H | アイスタ | DAZN |
37 | 11月27日(土) | 浦和レッズ A | 埼玉 | DAZN |
38 | 12月4日(土) | セレッソ大阪 H | アイスタ | DAZN |
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