【2021のヒーローになれ】震災から10年の節目の年。佐々木匠は自らが希望の光となれるか ｜ ベガルタ仙台

順風満帆ではなかったこれまでの歩み

勿論、これまでにもヒーローになる機会は何度となくあった。

この2021年は、彼にとって正念場かもしれないし、ヒーローとなる上でこれまで以上に大きな機会かもしれない。ジュニア（小学生）年代からの仙台アカデミー育ち、そして2016年に仙台でプロ生活をスタートさせて6年目。佐々木匠は2021年に巻き返しを図り、それ以上の高みを目指す。

地元・仙台市出身の生え抜き選手は、年代別の日本代表でもプレーしてきた“東京五輪”世代の選手だ。高校時代の2014年に2種登録選手としてベンチ入りし、2016年にJ1デビューを飾ったが、プロでの歩みは必ずしも順風満帆とはいかなかった。

2017年にはカップ戦で活躍したが、リーグ戦で出場機会をつかんだときになかなか結果を残せず、その年の途中から約2年半に渡り、J2の計3クラブで貴重な実戦経験を積むことになる。

アカデミー時代には、卓越した技術を用いてパス、ドリブル、シュートといった攻撃の“しかけ”を担うことが多かった。プロで壁にぶつかり、J2での戦いを経て、そこに逞しさを加えて2020年に仙台復帰。開幕戦から先発出場するなどJ1での出場機会を増やした。

チームが17位と苦しんだ昨季、佐々木はリーグ戦18試合ぶりの勝利を手にしたJ1第27節・ガンバ大阪戦でアシストという結果を残すに至った。だが、プレー内容や数字に残る結果という点では、継続性が足りなかった。

「試合に出続けること。けがをしないこともそうですし、連戦の試合間隔の中でもしっかり体が動くように」

継続して、安定して結果を出せてこそチームを助けられることを痛感した佐々木は、筋持久力を中心とした体作りに変化を加えるなどして今季に臨む。トップ下タイプの選手ではあるが、「4-4-2」や「4-2-3-1」のサイドハーフ、さらには1.5列目を起点とするFWなど、攻撃の多くのポジションをこなす。

様々な場所で技術と創造性を発揮する男は、それを激しいプレッシャーの中でも、そして疲れる時間帯や日程においてもできるように自らを磨いている。

特別な思いを抱く2021シーズン

そして、地元出身の選手として、2021年には特別な思いがある。2月23日に開催された2021明治安田生命Jリーグ開幕直前 オンライン記者会見の場で、佐々木はチームを代表してその思いを口にした。

「今年は（東日本大）震災から10年目の節目の年でもあるので、もう一度復興のために、希望の光になれるようなチームになりたい」

自身、12歳の時に被災。当時、傷ついたホームタウンを勇気づける活躍をしていた仙台を、佐々木はユアテックスタジアム仙台のスタンドから応援していた。2011年に4位、翌2012年には2位となったチームを、希望の光としていた一人だった。

当時、仙台の指揮を執っていた手倉森誠監督には、中学3年生のときに練習試合で声をかけてもらったことがあるという。そして2021年、佐々木は8季ぶりに仙台へ戻ってきた手倉森監督のもとで、自らが希望の光を目指す立場になった。

2021年の佐々木は、プレーを見た者を勇気づけるヒーローとなれるか。

文・板垣晴朗

1974年1月8日山形県山形市生まれ、宮城県仙台市育ち。2004年より執筆業を始め、2009年より、Jリーグ登録フリーランスライター。仙台を中心としたフットボール記事を、専門誌等に寄稿。主な著書に『在る光　3.11からのベガルタ仙台』（スクワッド EL GOLAZO BOOKS）