【2021のヒーローになれ】新エースのレアンドロ・ペレイラ。6年ぶりの歓喜に導く最重要キーマン｜ ガンバ大阪

勝に欠かせない“キーファクター”

過去、9つのタイトルを手にしてきたガンバ大阪。その顔ぶれやスタイルには違いがあるものの、一つだけ共通するファクターが存在する。

初戴冠に貢献したアラウージョ以降、マグノ・アウベスやAFCチャンピオンズリーグで絶対的な勝負強さを見せたルーカスら、栄冠を手にしたチームでは、常に最前線にブラジル人エースが君臨した。

Jリーグ史に残る偉業だった2014年の三冠イヤーは、宇佐美貴史とのダブルエースとしてパトリックが輝きを見せたのだ。

過去5シーズン、栄冠から遠ざかってきたガンバ大阪ではあるが、昨季は、J1リーグで2位に食い込み、天皇杯では準優勝。タイトル争いの舞台に戻ってきたものの、二桁スコアラーはいなかった。

タイトルに飢える新エース。「ガンバはビッククラブ」

そんなガンバ大阪が「待ち人」として獲得したのが昨季、サンフレッチェ広島で15得点をマークしたレアンドロ・ペレイラである。

190センチの長身だが、両足の強烈なシュートも一級品。名門に所属したという名ばかりの「履歴書」を持つブラジル国籍の助っ人は、数多くJリーグにやってくるが、レアンドロ・ペレイラは2014年末にコリンチャンスとパルメイラスが争奪戦を展開。その後は決して強豪ではないシャペコエンセでブラジル全国選手権得点ランク5位（2位とはわずか2点差）に食い込んだ実力の持ち主だ。

「ガンバを移籍先に選んだ一番の理由はビッグクラブであること。昨季は2位でいい成績を残しているし、今回はACLにも参戦する。僕もタイトルを取りたいのでガンバでのプレーを選んだ」

タイトル奪還を目指す大阪の雄と、優勝に飢える長身ストライカーが目指すベクトルはピタリと重なり合っているが、そのために不可欠になるのが背番号9を託されたレアンドロ・ペレイラの輝きである。

“可能性は無限大”。新たな化学反応が垣間見えた瞬間

コロナ禍による自主隔離によってチームに合流したのは2月9日。コンディションも試合勘も当然、100%の状態には程遠い。それでもチームにもたらしうる新たな化学反応の一端が、富士ゼロックススーパーカップで見て取れた。

圧倒的な完成度と質を誇る昨季二冠王者・川崎フロンターレに冷や汗をかかせたのは、2対2に追いついた直後の猛攻だ。

67分にパトリックのPKで試合を振り出しに戻すと宮本恒靖監督はためらうことなく、その2分後に今季のエース候補をピッチに送り出す。

3トップでスタートした新布陣にてこ入れし、レアンドロ・ペレイラがパトリックと2トップを形成。右のサイドハーフに左足の一発を持つチアゴ・アウベスを配置し、ブラジル人アタッカー3人を同居させたのだ。

投入直後の70分にはゴールキックをレアンドロ・ペレイラが競り勝ち、パトリックを経由してチアゴ・アウベスがGKのチョン・ソンリョンと一対一のビッグチャンス。その直後にもレアンドロ・ペレイラのポストプレーから相手を崩し、藤春廣輝が際どいシュートを繰り出した。

足元の技術も兼ね備える「空の要塞」は、3トップの中央が主戦場になりそうだが、上手いブラジル人を好む宇佐美との連携やパトリックとのツインタワーもド迫力の一言。具体的な得点数を囲み取材で問われると「実際に取れることもあれば、取れないこともある。数字の目標を掲げるのは好きじゃない」と控えめな姿勢を崩さなかったが、同時にキッパリと言い切った。

「去年の数字よりは多く取りたい」

タイトル奪還と同時に、攻撃サッカーの再構築を目指す2021シーズン、レアドロ・ペレイラの早期フィットと安定稼働がガンバ大阪の明暗を左右する。

文・下薗昌記

1971年生まれ。テレ・サンターナ率いる1982年のW杯スペイン大会でブラジルサッカーに傾倒。朝日新聞記者を経てブラジルに移住、永住権を取得する。南米各国で600試合を取材。2005年からガンバ大阪を取材する。「ラストピース」（KADOKAWA）が2016年のサッカー本大賞と読者賞に。近著は今年2月に上梓した「反骨心ーガンバ大阪の育成哲学」（三栄書房）がある。日テレジータスの「コパ・リベルタドーレス 」では南米サッカーの解説も担当する。