【2021のヒーローになれ】チームの躍進に不可欠な存在。仙頭啓矢はJ1へのリベンジを見据える ｜ サガン鳥栖

「自分の力を証明したい」

「手応えはかなりあります」。沖縄キャンプの総括として金明輝監督は、今季のチーム作りにおいてそう胸を張った。

鳥栖は昨季に見せた攻撃的なサッカーを今季も継続して進める。得点力不足が響いて昨季は13位に終わったが、今季に向け金監督はチームが正常進化を続けていることを口にした。

「ゴール前に入っていくスピードやパワー、チャンスのときに素早く攻め切る。そういうパスを入れる。そういう（点を取れる）ところに侵入していくことは、いまチームとして形にしていっている。練習試合も沖縄に来て4試合くらいやりましたけど、結果もそうですし、フィーリングもすごく良いです」

MF原川力（→セレッソ大阪）、MF原輝綺（→清水エスパルス）、DF森下龍矢（→名古屋グランパス）など、昨季主力だった選手たちは移籍したが、新加入選手によってその穴は埋められている。

なかでも仙頭啓矢には期待が懸かる。昨季は横浜F・マリノスで初めてJ1のシーズンを迎えたが、約半年間のプレーに終わり、古巣・京都サンガF.C.に戻ることとなった。鳥栖での新たなチャレンジは、J1でのリベンジの意味も持つ。

「横浜FMでは思うような活躍ができなかった。心残りな部分もあったので、もう一度、挑戦して、自分の力を証明したいという気持ちがあります。ただ、J1でも試合に出れば自分はできるという自信があるので、そこをしっかり実績として結果に変えていきたい」（仙頭）

攻撃的なサッカーのキーマンとなれるか

足元のテクニックとシュートセンスに優れた仙頭は、鳥栖に欠けていたゴールを奪う最後の局面で力を発揮してくれそうだ。また、そうしたプレースタイルから受けるイメージとは違い、常に全力でプレーできるところも魅力。これは鳥栖のチームカラーともマッチしており、チームにフィットしやすい。

仙頭に合わせたわけではないだろうが、金監督は昨季、主に使ってきた「4-4-2」のフォーメーションだけでなく、「4-2-3-1」と「4-3-3」を加え、チーム状態や対戦相手に合わせて使い分けることになる。「4-2-3-1」ならトップ下、「4-3-3」ではインサイドハーフか右ウイングが仙頭のポジションになるだろう。

そうなると、京都橘高や京都で共にプレーしたMF小屋松知哉との共演が楽しみになる。昨季、鳥栖に加入した小屋松は33試合に出場し主力としてプレーしたが、ゴールは2点に終わった。それだけに仙頭の加入は小屋松にとっても大きなプラスとなる。

2人がかつてのような連係したプレーを見せてゴールを量産すれば、鳥栖の攻撃的なサッカーはより魅力的になる。そうした意味でも、仙頭が鳥栖でJ1へのリベンジを果たしてヒーローになることが、鳥栖の躍進には不可欠。仙頭が輝けば輝くほど、鳥栖の攻撃的なサッカーも成熟していくことになる。

文・荒木英喜

1968年生まれ。熊本県出身。出版社などのアシスタントを経て、福フリーランスのライターとして活動。Jリーグや高校サッカーをはじめとするスポーツのほか、音楽関係などの取材・執筆を行う。