Jリーグが選ぶ6月度の明治安田生命J3リーグKONAMI月間MVPはいわきFCの岩渕弘人。6月は4ゴール2アシストの大活躍。J3加入1年目ながら台風の目となっているチームを、力強くけん引している。自身とチームの好調の要因、秋本真吾スプリントコーチから受ける影響などについて話を聞いた。(文・田中 直希)※エル・ゴラッソ本誌より転載
どこでもできるのが自分の強み
――J3月間MVP受賞、おめでとうございます。今回の感想は?
「素直にうれしいです。こうした賞をいただくのは大学4年のとき、東北大学リーグの得点王をいただいた以来で、プロになってからは初めてです」
――サイドハーフのポジションながら、6月は4ゴール2アシストという活躍でした。
「自分だけの力で出せる結果ではありません。チームメートやスタッフなど、支えていただいた方々に感謝していますし、チームの調子のよさが自分の結果にもつながっていると感じています」
――自身の好調の要因についてはどのように考えていますか?
「監督が求めていること、今季のチームが目指すサッカーやその戦術を自分なりに理解しているつもりです。それをベースに、自分のよさを少しでも出すように意識しています。何より、スタメンで出られていることが大きいと思います」
――6月のプレーで印象に残っているものは?
「第11節・YS横浜戦の2点目です。まず、ペナルティーエリア近くでうまく前を向くことができました。前を見たときに永井颯太がいたので、彼に一度預けて、中にもぐっていこうとしたら、ちょうどワンツーの形でパスを戻してくれました。シュートはGKのタイミングをズラして打つことができたのですが、これまでその形のシュート練習をたくさんやってきたので、それが体に染みついていたのだと思います」
――そのYS横浜戦では、自身プロ初となるハットトリックを記録しました。
「ハットトリックとはいえ、そこまで反響はないのかなと思っていたのですが、SNSをとおしてたくさんの人に祝ってもらいました。大きな仕事ができたと思っています」
――ハットトリックは狙ったのですか?
「それがまったくなくて。2点を取ったあとにアシストした場面があったのですが、3点目を狙っていたのだとしたら、パスではなくシュートを狙っていたと思います。でも、そのときは得点の確率がより高いパスを選択しました。それをやっていたからこそ、3点目の場面で、自分のもとにボールがこぼれてきたのかもしれません。チームメートからも、そう言ってもらいました」
――今季開幕前から、チームは「18番目から頂点に」ということを発していました。
「参入1年目ですし、一番下からのチャレンジでした。開幕前はどこまでいけるか、その感触がつかめませんでしたが、前半戦を戦い、多少の手ごたえはつかんでいます。J3では、相手チームに経験豊富な選手が多くいますし、チームとしての実力も自分たちより上のチームが多いです。それでも、対戦相手の監督、選手が思っている以上のパワーを出せるはずですし、相手をはね返せる自信はあります。後半戦では、個人としてもチームとしても、どれくらいやれるかが楽しみです」
――SBの嵯峨理久選手との右サイドコンビは、相手の脅威になっていますよね。
「1歳下の嵯峨理久とは、仙台大から一緒にプレーしています。チームの中でも、彼のよさを一番理解しているのが自分だと思っています。逆に、彼も自分のよさを理解してくれているはずです。右サイドでずっと一緒に出ていますが、すごくいい関係性でやれていますね。彼はサッカーに対して熱い思いをもった選手で、互いに言い合える関係が築けています」
――FW登録ですが、今季ここまで右サイドでの起用が続いています。
「右サイドハーフは、高校2年生のときにやったくらいです。高3ではトップ下でしたし、大学のときはFWのほかにボランチなど、いろいろやらせてもらってきました。どこでもできるというのが、自分の強みになっています」
――仙台大といえば、同期に浦和の松尾佑介選手がいますね。
「はい。毎試合、彼の試合は見るようにしています。彼は大学時代に横浜FCの強化指定選手になり、そのときからプロでもすごいプレーをしていました。たまに連絡を取り合いますし、いわきがJ3に上がったときも連絡しました」
秋本真吾コーチから受ける刺激
(C)J.LEAGUE
――いわきの特徴の一つにフィジカルがあります。その中でプレーすることについては?
「筋力トレーニングは大学のときもやっていましたが、ここまで筋トレに力を入れているクラブは日本でもないと思います。筋トレにかける練習時間も多いですからね。それに食事面など、自分の体とも向き合うようになりました」
――それが試合にも生きていますか?
「自分のプレースタイル的に、よく相手と体がぶつかるというわけではないですが、体が当たったときに相手のことを強いとはあまり思わなくなりました。練習で、ごつい体のチームメートとぶつかり合っていますからね」
――今季から、スプリントコーチとして秋本真吾コーチが就任しました。その効果については?
「走りに対しての熱い気持ちを、選手にもそのまま還元してもらっています。プロフェッショナルとしての意識が非常に高い方です。秋本さんの話の一つひとつが心に刺さりますし、『やってやろう』という気持ちにさせてくれます。ちょうど今日、秋本さんが出場していたフィンランドでの『世界マスターズ陸上』から帰ってきたタイミングでした。そこでたくさんの選手を見てきた話をしてもらいました。普段の練習から100%で、それをやり続けていても、走っている最中にケガをしてしまう…(100m準決勝でスタート後に肉離れ)。
アスリートですからケガはあることですし、力を発揮できないこともありますが、その失敗を恐れないでやり続けるのが大事だと話されていました。実際に体験した本人の話ですし、心に刺さります。もっとやらないといけないと思わされるし、肉離れの予防のためのストレッチの仕方、それに教えてもらっている肉離れしづらい走り方をより意識していきたいです。非常に詳しい秋本さんでも、肉離れをしてしまう。何事にも絶対というのはありませんし、いつ自分もケガをしてしまうか分かりません。ケガをしたらそのシーズンが終わるくらいの大きいケガもありますから、ストレッチや予防の仕方を教わりたいと思っています」
目標は得点アシスト合計15
(C)J.LEAGUE
――今季の目標を教えてください。
「チームとしてのJ3優勝、J2昇格という目標は変わりません。後半戦になって相手もより対策をしてくると思いますが、それを上回る強さを発揮できればいいですね。個人的には、得点とアシストをあわせて15まで伸ばしたいと思っています」
――目標にしている選手はいますか?
「以前からプレーが好きな選手は川崎Fの小林悠選手、札幌の興梠慎三選手です。ストライカーで、得点感覚が優れている選手をよく見るのですが、その中でも自分が好きな選手です。自分は複数のポジションをこなせる特徴がありますが、もっとたくさんのポジションをできるようになれば、自分にとってもチームにとってもプラスになると思っています。弱点を少しでもなくして、バランスのいい選手を目指しています」
――当受賞者には賞金20万円が授与されます。使い道は考えていますか?
「半分は貯金して、半分は自分の好きなものを買おうと思っています。周りの方に恩返ししたいですね。昨年からゴルフにハマっていますが、欲しいものは特にないので…。アシストしてくれたチームメートに何かプレゼントをしたいと思います」
――最後に、エル・ゴラッソの選手名鑑アンケートで、今季の目標が「彼女を作る」でしたが、ちなみに現在は…。
「(笑)。えっと、まだ全然です(笑)」
選手プロフィール
岩渕 弘人(いわぶち・ひろと)
1997年9月17日生まれ、24歳。岩手県出身。177cm/73kg。萩荘中→遠野高→仙台大を経て、20年にいわきに加入。J3通算16試合出場6得点。
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