アジアNo.1へのファーストチャレンジに待ち受けていた悲劇
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2018年。ヴィッセル神戸は伝統の堅守速攻という鎧を脱ぎ、ポジショナルプレーというモダンな洋服をまとった。同時にスローガンを「一致団結~To Become the No.1 CLUB in Asia~」とし、2019年には「the No.1 Club in Asia ~ 一致団結 ~」と改めたものの、2018年からアジア制覇を明確なターゲットとして打ち出してきた。そこから5年目を迎える2022年。2度目のAFCチャンピオンズリーグに挑んでいる。
初挑戦は2年前。天皇杯JFA第99回全日本サッカー選手権大会の元日決勝で難敵・鹿島アントラーズを下し、天皇杯王者として出場権を獲得した。その勢いのままに、2月のACLグループステージでは2連勝と好発進。しかし直後に新型コロナウイルス感染症の拡大でACLが中断し、再開されたのは約9ヵ月後の11月下旬。しかもカタールでの集中開催というイレギュラーな形でのリスタートとなった。
その間に、トルステン フィンク監督からシーズン途中に三浦淳寛監督へと交代し、直前のJ1リーグでは5連敗という厳しい状況の中でACLの再開を迎えた。決して前評判は高くなかったが、再開初戦で優勝候補の広州恒大(中国)を3−1で下したことで国内での苦戦がウソのように勢いづく。主将のMFアンドレス・イニエスタは「新しい大会に参加して新しい目標に向かって進んでいく中で、再開初戦としては非常にいいプレーができた」と喜んだ。
この勝利で早々とグループステージ突破を決めた神戸は、残り2試合で若手を積極的に起用しながら主力の疲労回復とチームの底上げを図り、ノックアウトステージに向けて最高の準備を整えることができた。そしてラウンド16では元ブラジル代表のオスカルらを擁す上海上港(中国)に2-0で完勝。準々決勝ではグループステージで同組だった水原三星(韓国)を延長PK戦の末に下した。
しかしイニエスタがラウンド16で負傷し、準々決勝のPK戦で怪我をさらに悪化させてしまう。そしてイニエスタ不在で臨んだ準決勝・蔚山現代戦では、延長戦終了間際にPKを決められて1-2で敗れ、VAR判定によるMF佐々木大樹のゴール取り消しなどもあった後味の悪い試合を最後に、神戸のアジアNo.1へのファーストチャレンジは幕を閉じた。”イニエスタの怪我さえなければ…”。スポーツに“たられば”はないが、ACL初出場で初優勝という偉業を達成していた可能性もあったほど、この大会でのイニエスタは神がかり的なプレーを見せていた。
”2年前の悔しさを晴らすときは来た”
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あれから2年。2021年シーズンにJ1リーグ3位でプレーオフからの出発となった2度目のACL挑戦。3月15日行われたメルボルン・ビクトリーFC(オーストラリア)とのプレーオフは延長にもつれる死闘となった。6分にイニエスタのゴールで先制した神戸だったが、12分にニコラス・ダゴスティーノの得点で同点に追いつかれると、後半71分には、再びニコラス・ダゴスティーノのゴールで逆転を許してしまう。ただ、ここから80分、87分とFW大迫勇也の2発で逆転に成功。試合終了まで残り3分。神戸がこのまま逃げ切るかと思われたが、終了間際にベン・フォラミの得点で土壇場で同点に追いつかれてしまう。それでも気持ちを切らさなかった神戸は、延長前半にリンコンのゴールで再び勝ち越しに成功。このリードを守り切って何とか勝利を飾り、2度目のACL本戦への切符を掴み取った。
4月から5月にかけて行われたACLグループステージ。当時指揮を執っていたロティーナ監督の下でディフェンス面を再構築したことで、4試合で3失点という守備の安定を見せて2勝2分で首位通過。また故障していたイニエスタがチーム帯同を見送ったにも関わらず、攻撃面でも4試合10得点と爆発。特にグループステージMD3のチェンライ戦では、FW大迫勇也、MF汰木康也(2得点)、FWリンコン、MF郷家友太、DF大﨑玲央が得点を挙げて6−0というゴールラッシュでスター軍団のポテンシャルの高さを改めて証明してみせた。
現在、J1リーグでは予想外の残留争いに巻き込まれている神戸。それでも2度目のACLでは未だ無敗をキープしている。直近の第25節・北海道コンサドーレ札幌戦では約1ヵ月ぶりの公式戦白星を飾り、復調の兆しが見えている。そしてFW武藤嘉紀が復帰し、大迫のコンディションも上向きと好材料が揃っている。J1で首位を走る横浜F・マリノスとの日本勢同士の対決となるラウンド16。この難関を突破できれば、一気にアジア制覇へと駆け上がる可能性はある。2年前の悔しさを晴らす時は来た。
文・白井 邦彦
1974年、滋賀県出身。滋賀と神戸を中心にフリーライターとして活動中。2011年からJリーグ公認ファンサイト「J’s Goal」(現Js LINK)にてヴィッセル神戸を担当。クラブ公式HPやサッカーダイジェストなどでも執筆中。
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