Jリーグが選ぶ8月度の明治安田生命J3リーグKONAMI月間MVPはいわきの有田稜。8月はホーム初得点を含む3ゴール1アシストの大活躍。J2昇格に向けて突き進むチームを、大卒ルーキーながら力強くけん引している。自身とチームの好調の要因、理想の選手像などについて話を聞いた。(文・西川 結城)※エル・ゴラッソ本誌より転載
印象深いのは福島戦のゴール
――J3の8月月間MVPに選ばれました。率直な感想を教えてください。
「少し狙っている部分もあったので、素直にうれしいです。本当にうれしいですね」
――ちなみに今回のMVP受賞の賞金は20万円です。使い道は考えていますか?
「あまり考えていませんが、家族に恩返ししたいですね。お兄ちゃんとお母さんに何か買ってあげようかと思います。僕は兄のおかげでいまの自分があると思っています。兄がいないとサッカーできていないので、感謝したいです」
――有田選手は福岡県出身で、東北での生活は今年が初めてだと思いますが、福島の生活はいかがですか?
「ちょっと冬は寒くて苦労しましたが(笑)、自然が豊かで、ファン・サポーターの方々も温かく、過ごしやすい環境だと思います。オフの日は、休みでもたまにグラウンドで走っていますが、温泉はよく行っています。一人で行くことも多いですよ」
――あらためまして、8月はリーグ戦4試合に出場し、3ゴール1アシストと大活躍でした。
「もっとチャンスがあったので、まだまだ決められたと思います。満足はできないですが、しっかり数字を残せたのは自分の中で大きいです」
――チーム戦績も8月は3勝1分と好調で、首位に立っています。
「一日一日の練習を全力でやっていますし、いまは誰が出ても万全の状態でいいパフォーマンスが出せています。本当に誰が出ても勝てるチームだと思います」
――8月の得点で印象に残っているゴールはありますか?
「第21節の福島戦(4○1)で、ニアのコースに決めたゴールが印象深いです。前半にあったチャンスの場面で足を振らず、ハーフタイムに周りの選手たちから『もっと足を振っていこう』と言われていました。あのゴールは思い切り足を振ったからこそ決まったので、みんなに感謝したいです。あの得点がホーム初得点で、さらに前半戦に続いて福島ダービーのゴールだったので、2倍うれしかったですね」
――有田選手は8月以降、先発出場の機会が増えています。ベンチスタートが主だった時期は、やはり悔しかったですか?
「試合に出られない時期や、出られても数分という時期が長かったです。ただ、FWなので1分でも試合に出ればワンチャンスはくると思っていました。その姿勢でどん欲にやっていたことが、いまにつながっています」
――有田選手は第3節・愛媛戦(2○1)の90+4分からプロ初出場を果たし、直後に決勝点を決めるという劇的な形でプロキャリアのスタートを切りました。当時の感情はいかがでしたか?
「あのときは『もっているな』と思いました(笑)。きたボールに対して思い切り詰めた結果、気づいたらゴールに入っていました。その日はうれしい感情でいっぱいでしたね」
――ベンチが続いてもどん欲さを失わずにやってきたとはいえ、始まりが劇的だっただけに、その後の気持ちの持ち方は難しかったのではないでしょうか?
「そうですね。ただ、FWなので常にやることは変わらないですし、点を取ることが僕の仕事です。もちろん、守備で強度を出していくこともチームの中で大事ですが、点を取ることへのこだわりをなくさずにずっと練習していました」
――先発定着以降はどんどんゴールを取れるようになっています。あらためて先発とサブの違いをどう感じましたか?
「もともと途中から入る経験はあまりなかったんです。プロに入って、時間が短くてもチャンスは巡ってくると信じていましたし、そこで結果を出すことでどんどんアピールできればいいと思っていました。スタメンで使ってもらえるようになって、やっぱり先発のほうが試合に入りやすいなという実感はあります」
――プロに入ってここまで数カ月の間、先発で出られなくてもマインド自体はポジティブさを持ち続けていたのですね。
「これまで壁にぶつかることもありましたが、スタッフ含めいろいろな人たちから改善のアドバイスをいただいて、それがいまにつながっています。シーズン前の練習試合で、自分が一番シュートを打ってチャンスもたくさんあった中で、結果を残せない時期が続いていました。そこでスタッフ陣が僕の動画を制作してくれたんです。それを見返しながら冷静に修正点を振り返って、シュート練習でも意識して直そうとしてきました。本当に感謝しています」
もともとはドリブラー
(C)Atsushi Tokumaru
――有田選手は右利きですが、現在の数字を見るとヘディングでのゴールが3点でリーグ1位。さらに左足でも3点取っています(右足は1点)。この結果をご自身はどう受け止めていますか?
「ヘディングで決めているのは自分でも意外です。もともとヘディングが強いタイプではなかったですから。学生時代も頭でたくさん点を決めてきたわけではないので、ヘディングはプロに入って成長している部分だと思います」
――例えば、クロスに入っていくプレーで参考にしている選手はいますか?
「よくアナリストと動画を見ているのですが、(ロベルト・)レバンドフスキ(バルセロナ)のプレーは参考にしています。いいプレーを動画にまとめてもらって手本にしています」
――もともとのプレースタイルはドリブラーだったそうですね。
「中学時代に在籍していたのがドリブルチームだったので、中学、高校とドリブルに自信があって、サイドでも本当にボールを離さないぐらいドリブルをしていました。国士舘大に入ってFWにコンバートされてからは、競り合いのところで強度を求められる機会が増えていきました。最初は苦労しましたが、徐々に慣れてきて、いまのスタイルがあると思っています」
――日本人選手の中では身長180cm台と大柄な部類に入るあたりも、FWへのコンバートの理由だったのでしょうか?
「そうですね。大学のころにストライカーに定着したのは身長が高かったことも関係していました。本当に中・高とヘディングをしてこなかったので、大学で本格的に覚えた感じです。大変でしたが、頑張った結果がこうしてゴールにつながっていますし、プレーの幅が広がった実感はあります。本来はクサビのパスを受けたり、出したり、ドリブルも含めて地上戦のサッカーが好きですが、勝つためになんでもできる万能型のFWを目指しています。なんでも対応できる選手になりたいです」
最低二ケタ。得点王も狙う
――今季ここから、自身のどんなプレーを見てもらいたいですか?
「プロサッカー選手という職業に就いた以上、見ていただける方々に勇気や感動を与えたいと思っています。攻撃でも守備でも最後まで全力でプレーし、そして点を取って、応援してくれる方々に恩返しをしていきたいです」
――残りシーズンの目標は?
「チームとしてはJ2昇格を狙っています。それは絶対です。個人でも最低二ケタゴール、そして得点王も狙っています」
――最後に、いまのところプロの世界は想定内、もしくは想定外ですか?
「どちらもありますね(笑)。最初は試合に出られずに悔しかったですし、いまは少し結果を出せるようになってきましたが、まだまだ満足できるものではありません。残り試合、さらに全力で自分の持っているものを絞り出していきたいです」
選手プロフィール
有田 稜(ありた・りょう)
1999年8月28日生まれ、23歳。福岡県出身。185cm/77kg。FC NEO.JY→小倉工高→国士舘大を経て、今季いわきに加入。J3通算21試合出場7得点。
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