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【インタビュー】ベストイレブン受賞の山根視来が1年を戦い抜いて再認識したこととは。「やれることを愚直にやり続ける」 | Jリーグ

【インタビュー】ベストイレブン受賞の山根視来が1年を戦い抜いて再認識したこととは。「やれることを愚直にやり続ける」 | JリーグDAZN
【国内サッカー・インタビュー】川崎フロンターレの超攻撃的サイドバックとして活躍した山根視来は、「2022 Jリーグアウォーズ」にてベストイレブンに選出された。チームこそ3連覇を逃したが、自身としては3年連続の受賞。そんな山根にベストイレブン受賞や個人としての成長について聞いた。
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「不甲斐ない、まだまだ足りない」、悔しい1年に

――まずは3年連続のベストイレブン受賞おめでとうございます。いまの思いを聞かせてください。

ありがとうございます。3年連続で頂くことができたので本当に光栄に思っています。

――過去2度の受賞と比べた時の心境に違いはありますか?

やっぱり最後に優勝することができなかったので、そういった面ではまた違う心境です。今季はもちろん3連覇を狙っていくというところがありましたが、厳しい戦いになるだろうということはわかっていたので、自分が成長していかなければいけないと思っていました。ただやっぱり「あのようにしておけばよかった…」という思いはありますね。

――日程的には日本代表や川崎Fでの活動も含め、相当タフなシーズンだったと思います。その中で山根選手自身はどんな準備をしながら乗り越えてきたのでしょうか?

コンディションのところはやっぱり最高の状態で試合をするというのはなかなか難しかったですけど、去年はもっと試合に出ていましたし、試合数も多かったし、隔離の期間もずっと長かったので、そこは言い訳にできないと思っています。今年は正直、不甲斐ないなと思っています。

――個人としてはこの1年でどんな部分での成長を実感できましたか?

新たなことにチャレンジもしましたし、手ごたえを試合の中で表現することはできました。ただ、やっぱり勝利につながったのかというところ。厳しいゲームの中でもそれができたのかというところで思うところはあります。

――具体的にはどんなチャレンジをしてきた一年だったのでしょうか。

よりバイタルの中だけではなくて、作りの部分でどこに入れば助けになるとかというところは、今年に関しては選手一人ひとりができることを増やしていかないと、なかなか厳しいというのは自分でわかっていました。そういうところでチームの手助けになるようなポジショニングの部分は、自分のストロングを出すだけではなく、少し考えながらやってきました。

――そういう考えになったきっかけやターニングポイントはありましたか?

序盤からうまくいっていなかったのは誰が見てもわかっていたので、その時に「じゃあなんでだろう」と考えました。プレー中に自分のところにボールが来たときにかなり厳しい状態になっているというのが、多分それぞれちょっとずつあったと思います。だから「それぞれがちょっとずつできることを増やしていくことによって、そのストレスというのが軽減されていくんじゃないかな」って考えていたので、あまりやってこなかったことにチャレンジしてきました。

――そのトライの部分で手応えを掴めた試合はありましたか?

ホームのサガン鳥栖戦 (8月31日・J1第20節)ですかね。マルシーニョにスルーパスを出して、オフサイドになってゴールが取り消しになったんですけど、ああいうプレーは自分の選択肢にないプレーでした。そこまで入っていて逆サイドのウイングの選手にスルーパスを出すというプレーがパッと出たときは、受ける位置や相手を見ながらとかというところを含め、しかもハイプレスを得意としている鳥栖さん相手にそういうプレーができたというのは、1個成長できたかなと思いました。

――そういった手応えはあった中でもやはりタイトルを取れなかった悔しさが勝るシーズンでしたか?

やっぱり勝ってこそだと思っています。苦しいゲームの中で、『自分に何ができたか』というところがやっぱり1番大切だと思います。そういった面で見てみると、今年はまだまだ足りないと思う試合はかなりありましたね。本当にチームとしても、個人としてもうまくいかないことがすごく多かったので、迷いながらやっていた時期もありましたし、もっともっと成長しなきゃいけないと、ずっと危機感を持ちながらやっていました。

――サイドバックは、現代サッカーにおいて戦術次第で変化が著しく求められるポジションです。先ほどお話しされていたトライしてきた部分とも関連するとは思いますが、ご自身ではどうアップデートしてきましたか?

何か1つのことしかできない選手よりも、何でもできる選手の方が良い選手だと思っているので、色んなことに対応できるようにやってきました。フロンターレというチーム自体も基本的には「あなたはこれをしなさい」と言われるチームではなく、「魅了できるサッカーなのであれば全然トライしていい」といつも鬼木さんは言ってくれます。自分としては「こういうプレーができたらもっとサッカーが楽しいよな」っていう思いの中で、アップデートしているというよりは、今はチームに何が必要で、自分がどういう風なプレーができたらいいかというのを一緒に考えながらやっていたかなと思います。

――そこまでサイドバックという枠にはめず、チームとして潤滑機能させるために何が優先なのかを模索してきたシーズンだったということですか?

そうですね。だからサイドバックだからというのはあまり考えないようにしていた時期ももちろんあります。その中で自分のストロングというのは忘れちゃいけないので、そこのバランスを間違えないようにというのは意識してきましたね。

苦しい時も逃げずに課題に向き合ってきた

2022_11_12_jleague_yamane2(C)J.LEAGUE

――例えば山根選手なら内側と外側のレーンをポジショニングで巧みに使い分けられる印象がありますが、自分のポジショニングを決めるときにどんなことを意識されていますか?

幅をとる人間が誰もいなくなってしまったら相手はやっぱり守備がしやすくなってしまうので、誰かがとっているときはこっちにいたほうがいいかな、というのは考えながらやっていますが、今年は考えすぎても正直良くないなという時期もありました。僕はどちらかというと本能でやるタイプで、もちろん考えることを放棄するのは1番ダメですけど、考えすぎて足が止まってしまうというのはもっとダメなので。基本はやっぱり走ってなんぼの選手だと思っているので、そこをベースにしつつ、周りの選手や展開を考えながら、今ちょっとゆっくりしようかなというときにそういうプレー選択をするようにしていました。

――シーズンの中で「いま考えすぎているな」という時期があったんですね。

やっぱり良い時は、考えていることが無意識にできていたりしますが、それに味をしめてしまうと、次に動かないでそっちばかりに頭がいってしまうことがありました。そうなると「もっと見なきゃ」と余計に足が止まってしまうんです。でも本当は動いているからこそ、そういうプレーがより効いてくるという根本的なことを忘れてしまったり、頭ではわかっているのにそれが試合中にできなかったりというのが何回もありました。同じような間違いや失敗に見えることも、実はもう1段階上の課題と向き合って悩みながらやるというのも、やっている最中は苦しいですけど、「でもこれも成長のためだな」と思って、逃げないようにやってきました。

――第26節・福岡戦(4○1)のマルシ-ニョ選手が決めた得点のアシストは、全ての動きが繋がった崩しだったと思いますが、あの時はどのようなイメージを持っていましたか?

ヤスさん(脇坂泰斗)もアキさん(家長昭博)もずっと一緒に試合に出ているので、どうなるというのはなんとなく頭の中で見なくてもわかる感覚があります。あの時は本当にそれがすべて3人の意識がしっかり共有されて、マルシーニョがクロスに入ってきたタイミングもすごく良かったので、走ることの重要性を理解した上でちゃんと届けられたなという感じでしたね。

――あの崩しのイメージは、どのタイミングで“最終的にあそこで崩す”と描いていたんでしょうか?

アキさんのプレー選択が、横を向いて人と関わっていくということをやることが多いので、あの時に一度横に広げてというタイミングでしたね。相手が横にコンパクトのときよりも、横に広がっているときの方があのエリアは取りやすいので、そこは意識していました。

――ここまでのお話しを聞いていると、自分自身とかなり向き合い続けてきたシーズンだったように思います。

今年、ワールドカップがあるというのもわかっていたし、その時に「あの舞台に行って何がどういうプレーをやっていくのか」というところを考えすぎた時期もありました。でも自分という選手は、自分の持っているものしか出せないので、現時点でできることをやっぱりやること。それを続けていくことがまた成長につながっていくと思っています。

――多種多様に対応していく部分と自分の良さを貫く部分をトータルして、今後はどのようなサイドバックになっていきたいという思いがありますか?

誰というのは正直あまりいないんですが、やっぱり僕は現状の自分よりも、もっとできることを増やした方がサッカー楽しいと思っていますし、何でもできるようになりたい。走れるし、ゲームも作れるし、しっかり守れるし、いつも勝利のポイントになるというのも備わっている選手を求めて成長していきたいと思っています。

――個人として、この今年1年で最も得られたものを教えてください。

自分にできること以上のことができないということは、この1ヵ月でもやっぱ再認識できたので、“やれることを愚直にやり続ける”ということ。当たり前だけど大切だなと改めて感じたシーズンでした。どこか背伸びしてしまったりすることはもちろんありますが、その時に「今日は調子悪かっただけだ」と逃げないように。「なんでそうだったのか?」、「試合に臨むメンタルはどうだったのか?」、「目の前のこと以外のことに気をとられているんじゃないか?」とかっていうところを探し続けられたことはすごく大切だったと思います。

――タイトルを獲れなかった悔しさや個人としての試行錯誤してきたシーズンを経て、来年はどのようなシーズンにしたいでしょうか?

やっぱりタイトルを獲りたいというのは、改めて今年最後のサポーターの姿を見て思いましたし、優勝しているチームを外から見ていると、単純にやっぱりうらやましいので。やっぱり、優勝したいなと思います。

――その前にここからはW杯への戦いが始まります。そこに向けた抱負をお願いします。

W杯が来年に繋がるというよりも、ワールドカップはワールドカップで、本当に国を背負って魂を込めて戦わなければいけない場所だと思っているので、今はW杯をどういう形で終えられるか、自分が本当に楽しかったと思える大会にできるかというところだけにフォーカスしてやりたいと思っています。

――W杯も含めた今後の活躍を期待しています。

ありがとうございます。

文・インタビュー 森亮太  

1990年、静岡県出身。静岡県を拠点にフリーライターとして活動中。2018年からは、サッカー専門誌「エルゴラッソ」にてジュビロ磐田、アスルクラロ沼津の番記者を担当している。

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