FIFAワールドカップ(W杯)カタール2022、初戦のドイツ代表戦まで残り6日。本来であれば、森保一監督としては全員のコンディションが良好な状態でカナダ代表戦に臨み、いろいろなチェックをしたかったところだろう。だが、11月開催の影響で各国リーグがギリギリまで試合を実施。そのためか直前に負傷した選手も多く、コンディション的には非常に難しい状況にある。
特に悩ましいのが、主力ボランチ二人のコンディションだ。これまでの道のりを鑑みても、チームの中心として期待されていたのはMF遠藤航とMF守田英正の二人で間違いない。そんななか、遠藤は脳震盪の復帰プロトコルの最中でカナダ代表戦の出場が不可能な状況。守田にしても左足ふくらはぎに違和感を覚えており、最後のテストマッチを欠場することが決まった。
彼ら二人がドイツ代表戦に間に合うならば何ら問題ない。ただ、それを前提に物事を進めるわけにもいかない。もしドイツ代表との試合に二人もしくは片方がピッチに立つことができなくなった場合、その穴を埋める選手がどれだけの力を出すことができるかは大きなポイント。そういう意味でも、彼らが不在のなかで迎えるカナダ代表戦は、総力戦で戦う上でもテストを行う価値ある機会となる。
そこで注目されるのがMF田中碧とMF柴崎岳になる。振り返れば、9月遠征のエクアドル代表戦でコンビを組んだ二人のパフォーマンスは、大手を振って喜べるようなものではなかった。初めてコンビを組んだ影響かお互いの距離感が曖昧で、プレスにしてもビルドアップにしても主体的に動かすことができず、絶妙なバランスを見つけることに苦労したまま試合が進んでしまった。
その反省を生かすことができるかどうかが、カナダ代表との試合の焦点となる。
「やったことのない選手といきなりプレーするのは簡単ではありません。ただ、1回やればある程度分かるところもあるし、入りの段階からどういうふうに振る舞っていくかというプランもある程度、自分の中で立てられます。そこは頭に入れながらやっていきたいですね。気を遣うわけではないけど、変に意識しても良くない。ボランチの関係性はチームにとってすごく大きなものになると思うので、そこは声をかけながらポジショニングを含めて調整していければいい」(田中碧)
攻守のバランスで言えば、より攻撃的にいきたいのは柴崎だ。「碧は運動量もありますし、非常に活動的で、ゴール前にも顔出したり、守備でも非常に貢献してくれる選手」と柴崎が評価するように、田中は広範囲に動きながら潰し役としても機能することができる。一方で、柴崎は遠目からのミドルやラストパスにも長けたところがあり、より高い位置でチャンスに絡むことができる選手だ。守備面で貢献度の高い遠藤や守田が不在のため、攻守の割合を考えながら二人でゲームプランを立てていくことが必要となるだろう。
「自分なりの戦い方があるなかで、自分の欠けていたりするところをしっかりと補ってもらったり、僕個人としても周りの選手でそういった不足や欠けている部分を補ってあげたいと思っています。11人全員の力で、勝利というものを求めていきたいです」(柴崎岳)
ドイツ代表と対戦するその日まで、誰が起用できる状態にあるかは分からない。何が起きても慌てず対処できるように、カナダ代表戦で二人のフィーリングを合わせ、むしろ自分たちが主力となっていくだけのパフォーマンスを見せることが、チーム力のアップにつながっていくはずだ。
文・林遼平
埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。