ついに出番がやってきそうだ。
初戦のドイツ戦で勝利を収めた日本は、第2戦でコスタリカと対戦する。勝てば一気にグループステージ突破を決められるチャンスが出てくるが、負ければ一転して苦しい状況に追い込まれる可能性もある。必勝が求められる試合に日本は臨む。
ここでピッチに立つチャンスが回ってきそうなのが山根視来だ。
激闘となった初戦で酒井宏樹が負傷。怪我の状況は決して思わしくなく、ここからどこまで回復してくるかわからない。そう考えても、今後を含めて出番が多くなってくる可能性が高いため、コスタリカ戦でどれほどのパフォーマンスを出せるかは一つのポイントになるだろう。
初戦のドイツ戦はベンチで歓喜の瞬間を味わった。チームの勝利はもちろん嬉しいが、その一方で「自分が1分も試合に出ていないという悔しさも同時にあった」。このままでは終われない。そう思っていた矢先の出番に「何かを残したいという思いがより強くなりました」と語気を強める。
湘南と川崎Fでの成長を示す舞台
コスタリカは決して侮ってはいけない相手だ。特に対峙することになるであろうジュイソン・ベネットは、鋭いドリブルで局面を打開してくる選手。守備面での対応は、チームとして無失点を続けていく上でも重要になる。
「左利きの選手なので、縦にクロスを上げさせると、事故が起きてしまう可能性が高くなってしまう。そこのケアのところは相手のサイドバックが空いてくるタイミングを含めて対応していきたい」
その上で、やはり山根に求めたいのは攻撃的な姿勢だ。Jリーグの舞台で超攻撃型SBと称されるプレーを、この舞台で披露する必要がある。「3人目の動きはどの相手にも大切だと思っている。相手の目線が外れた瞬間に関係ない人間が走っていくと、勝手にマークが外れることが多い。その回数やタイミングは外さないようにしたい」とは本人の言葉。隙を見た仕掛けを見せていきたい。
湘南ベルマーレで培った最後まで体を張りながら戦い続ける強靭なメンタリティーと、川崎フロンターレで学んだ技術や状況を見た判断力をピッチで表現する。「どこかで出番が来ると信じて準備してきた。問題なく行けると思います」と前を向く男は、大舞台でも他しむことが大事だと意気込んだ。
「W杯は4年に1回ですし、すごく大きなものがかかっている大会。やはり自分がここにいるということはなかなかできることではないので、まずは自分が楽しむことがチームのためになると思う。そこは忘れないようにしたいと思います」
カナダ戦では決定機を決め切れないところがあった。そういったチャンスシーンに対し、「入るか入らないかで大きな結果の違いがあることを改めて経験した。チャンスがあればぶち込みたい」と強い思いを明かした山根。ここで結果を残す。その思いを胸に秘め、大一番の舞台に立つ。
文・ 林遼平
埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。