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FIFAワールドカップ 2022

【コラム】カタールW杯で日本が示した”臨機応変な対応力”、そして議論によるボトムアップ方式は日本の伝統になり得るか | サッカー日本代表

【コラム】カタールW杯で日本が示した”臨機応変な対応力”、そして議論によるボトムアップ方式は日本の伝統になり得るか | サッカー日本代表DAZN
【サッカー日本代表・ニュース】ドイツ、スペインと同居したグループステージを首位で突破したものの、初のベスト8進出はまたしてもお預けとなった。カタール・ワールドカップを戦った森保ジャパンが残した財産とはなんだったのか。次の日本代表の中心となる選手たちに期待することとは?
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ドイツとスペインに勝ったからといって、日本サッカーが大きく飛躍したわけではないが、過去のワールドカップと比べて、大きな収穫があったのは間違いない。

まず、プランAだけでなく、プランB、プランCと戦い方にいくつかの選択肢が用意されていた。これは過去の日本代表チームにはなかったことだ。

初戦のドイツ戦、第2戦目のコスタリカ戦では[4-2-3-1]でスタートし、試合途中に[3-4-2-1]へと移行。そのシステム変更も攻撃では[3-2-5]のような形で後方からビルドアップを行い、守備ではドイツ代表にマンツーマンでプレスを仕掛け、スペイン戦、クロアチア戦では両ウイングバックを下げた[5-4-1]の強固なブロックを組んだ。

そして後半には、堂安律、浅野拓磨、三笘薫、南野拓実といったジョーカーを次々とピッチに送り出すことで“チームの表情”をガラリと変え、試合の流れを一気に手繰り寄せていく。ドイツとスペインという強豪国ですらこの変化に対応できず、W杯という究極のトーナメント戦において、この戦略が見事に当たった。

森保ジャパン発足当初からのテーマだった、ピッチ内での臨機応変な対応力は間違いなく向上した。

今大会の主戦システムとなった[3-4-2-1]も決してこれまで長い時間、取り組んできたわけではなかった。直近で3バックを試したのは、9月の欧州遠征のアメリカ戦とエクアドル戦、そしてW杯開幕直前のカナダ戦の、いずれもゲーム終盤だった。それでもW杯本番ではしっかりと機能させた。

スペイン戦では、前半に[5-4-1]の守備ブロックの隙間を突かれ、インサイドハーフのガビやペドリに何度もチャンスを作られた。すると、ピッチ内で選手たちの判断によってマークの仕方を変えてみせた。

「僕が出ることによって広大なスペースが空きますけど、僕だけじゃなく、近くにいた選手たちもそこで(パウ・トーレスにボールを)持ち運ばれるのが嫌だと感じていた。だから、ひとつ押し出す形でチャレンジしてみようと」

3バック右に入った板倉滉がそう明かせば、左の谷口彰悟もこう説明する。

「前半は佑都さんが相手の右ウイングにロックされるような形でハマれなかった。後半は薫が入ってきたので、低い位置に立たせておくのはもったいないと薫と話していました。後ろはマンツーマン、中盤も2度追いを厭わずに行こうと」

こうした臨機応変な対応力のベースにあったのが、選手たちによる活発なディスカッションだ。全体ミーティングのほかに、選手たちは顔を合わせるたびに意見やアイデアを出し合い、ときに疑問を投げかけながら、共通認識を深めていった。

そこにコーチングスタッフも加わり、議論しながら戦い方の最適解を導いていく。最後は森保一監督が決断するが、チームの意思決定に選手全員が関わることで、誰もが当事者意識を持てるようになり、問題が発生したときの解決法も自ら見出せるようになっていく。

代表チームはとにかく時間がない。アジア最終予選では選手全員が集合するのが試合3日前ということもざらにあった。さらにW杯本番では中3日という間隔で試合を消化していく。そんな短い時間の中、トレーニングでは取り組めないこともたくさんある。そんな状況でも細部まで詰めるためには、どこまで選手たちに委ねるかは別として、とかく指示待ちになりがちな日本人に主体性を持たせるディスカッションによる“ボトムアップ方式”は、W杯を戦ううえで日本代表の伝統、武器になり得るものだろう。

もちろん、クロアチア戦だってピッチ内の判断で[5-4-1]から[3-2-5]へと、どこかで勝負に出てもらいたかった。だが、指揮官も選手たちも好んで[5-4-1]を貫き通したわけではないだろう。ボールを保持して攻撃に出たかったが、そうできなかった。試合巧者で、実力でも上回るクロアチアに、日本はサッカーを選ばせてもらえなかったわけだ。

現実的に考えれば、川島永嗣、吉田麻也、長友佑都といったベテラン勢にとって今大会が最後のW杯になるだろう。だから、今回のベスト16敗退は、成功体験を得ながら悔しい思いを味わったという点で、次の代表チームへの“架け橋”としての意味を持つ。

そして次の代表チームは言うまでもなく、鎌田大地、守田英正、三笘薫、堂安律、冨安健洋、田中碧、久保建英らがベテラン・中堅となり、彼らが代表の中心となる。

なぜ、ベスト16の壁を越えられなかったのか――。

今はまだ、彼らも整理できていないかもしれない。だが、なぜ、グループステージを突破できたのか、そして次のステップを踏むために日本代表に必要なことはなんなのか、各々が頭の中に描いているものがあるはずだ。

それをパリ五輪世代に伝えながら、次の日本代表を引っ張っていってもらいたい。

文・飯尾篤史

1975年生まれ。東京都出身。明治大学を卒業後、週刊サッカーダイジェストを経て2012年からフリーランスに。10年、14年、18年W杯、16年リオ五輪などを現地で取材。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』、『残心 中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』などがある。

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