11月20日に開幕したカタールW杯。全64試合が行われる国の威信をかけた激闘の日々も、残すは、決勝戦と3位決定戦の2試合となった。『FIFAワールドカップタイム』では、決勝を前にアルゼンチンとフランスの旅路をプレイバックする。
準決勝でクロアチアを撃破し、2014年ドイツ大会以来となる決勝に駒を進めたアルゼンチン。だが、決して順調な歩みではなかった。初戦のサウジアラビア戦では、リオネル・メッシのPKで先制しながらも後半に逆転を許し、まさかの黒星スタート。この結果を受け、アルゼンチンを率いるスカローニ監督はこうインタビューで語った。
「気持ちを切り替えて次の試合に向かうしかない。分析することも必要だし、悲しいけれど前を向くしかない」。
悲しみに明け暮れたアルゼンチンはここから見事に蘇った。第2戦目のメキシコ戦(2○0)、第3戦目のポーランド戦(2○0)と連勝で、最終的にはグループCを首位突破。決勝トーナメントに入ってもオーストラリア(2○1)、オランダ(2△2(PK4○3))、クロアチア(3○0)を破って、その勢いは止まらなかった。
その中心にいたのは、背番号10を背負うこの男、自身2度目のファイナルとなるリオネル・メッシだ。ポーランド戦を除く全試合で得点を決めてきた35歳は、ここまで大会トップタイの5得点をマークし、母国をこの舞台まで引き上げてきた。
「レオ(メッシ)はずっと前から僕のアイドルで、彼のプレーを見て育った。今、同じチームでアルゼンチン国民に喜びを与えられることを誇らしく思う」。
そうメッシへの思いをよせる22歳の台頭がさらにチームに勢いをもたらす。最初の2試合はベンチスタートだったフリアン・アルバレスは、ポーランド戦で先発に抜擢されると、ここからゴールを量産。先発した4試合で4得点と結果を残し、メッシの強力なパートナーに名乗りを上げた。
「いろんなことが頭をよぎるよ。胸がいっぱいだ。大会を通じて本当に素晴らしい時間を過ごせていて、目標だった決勝まで辿り着けた。」
そう再び決勝の舞台に帰還したメッシは、ディエゴ・マラドーナ氏がトロフィーを掲げた以来、36年ぶりの栄冠をもたらせるだろうか。
一方で、対照的に順調な歩みを進めてきたのが前回王者・フランスだ。初戦でオーストラリア(4○1)、2戦目でデンマーク(2○1)とグループリーグ連勝で、一番乗りでグループ突破。決勝トーナメント以降もポーランド(3○1)、イングランド(2○1)、モロッコ(2○0)と全て90分間で決着をつけ、王者としての力を示してきた。
その原動力となってきたフランスの10番は、新時代のエースというその名に相応しい活躍を見せてきた。ここまで5得点を決めているエムバペは、決勝を前にメッシと並び、得点王を争っている。
そしてフランスにも強力な参謀がいる。オリヴィエ・ジルーだ。大会直前に負傷したカリム・ベンゼマに代わってストライカーのポジションを務める36歳は、ラウンド16のポーランド戦でティエリ・アンリ氏が持つフランス代表歴代最多得点の52点に並び、準々決勝のイングランド戦では決勝点を決め、単独トップに立つ偉業を成し遂げた。
「妻や子どもたちが見ている前で達成できて嬉しい。ティエリ・アンリの記録を抜くことが子供の頃からの夢だった。でも自分の記録よりもこのチームでいけるところまでいきたい」
そう連覇を見据える背番号9に、今大会は攻守に渡って黒子の活躍を見せるアトンワーヌ・グリーズマンもこう続く。
「優勝するためにはレオ(メッシ)とアルゼンチンを90分戦って倒さなければいけない。相手サポーターが生み出す雰囲気も含めてかなりタフな試合になる。最高の準備をしなければいけない」。
レ・ブルーは、60年ぶりのW杯連覇という偉業を成し遂げられるか。
「Road to FINAL」ーー。その物語りの最後に、3度目のトロフィーを掲げるのはアルゼンチンか、フランスか。18日、運命の決戦が幕を開ける。